滝川家の人びと

卯花月影

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7 涙の袖

7-2 無念腹

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 安土の槌音が遠のくにつれ、風は西へ匂いを変えた――摂津、大坂の気配である。
 摂津の国は都の彼方にひらけた豊饒の地であり、海に面して商いも盛んな国である。その摂津一国を治めるのが、伊丹城主・荒木村重だった。
 折しもこの月、信長のもとに知らせが届く。中国の毛利が、大坂本願寺へひそかに兵糧と弾薬を運び込んでいるというのである。
 信長は荒木村重とその与力――高山右近、中川清秀――のほか、明智光秀、佐久間信盛、原田直政らに出陣を命じた。忠三郎もその使者のひとりとして伊丹城へと赴き、主命を伝える役を仰せつかった。
「急ぎ兵を揃え、本願寺へ向かい、周辺ことごとく苅田せよ、との御命令にございます」
 苅田とは、苅田狼藉とも呼ばれ、敵地の稲を刈り取り、味方の糧とし、同時に敵の収穫を絶つ戦術だ。
 脇息にもたれていた村重は、折り目正しく口上を述べる忠三郎の顔を、じっと値踏みするように見据えた。
「本願寺には早五万の兵が集められておると聞く。この程度の兵で攻めかかられたらひとたまりもないのではないか」
 鼻先で笑ってそう言う。
「無論、いざとなれば上様直々に御出馬されるものかと…」
 忠三郎がにこやかに応じると、村重は「まぁよいわ」と片手を振り払う。
「よう参ったな。ゆるりして行くがよい。……酒はどうじゃ。そなたも、嫌いではあるまい」
「それは…はい」
 使者にきておいていいのだろうかと一瞬躊躇ったが、断るのもはばかられた。
(一杯だけなら、大事なかろう)
 重臣・荒木久左衛門が恭しく盃を捧げる。
「忠三郎、戦場での働きは耳にしておる。並ぶ者なき勇勇果敢の武者よ。この摂津守の盃、受けてくれ」
 盃に並々と酒が注がれる。
「荒木殿ほどの方に言われては、かえってお恥ずかしきことにて…」
 そう答え、有難く押し頂いて喉へと流し込む。空腹の身に重い酒は、一気に胸を焼いた。
「さすがは上様の娘婿どの。もう一杯、どうじゃ」
 断ることなど叶わず、また盃を傾ける。
 座敷に盃が巡りはじめた頃、村重が扇を軽く打ち鳴らした。
「さぁ、参れ」
 その合図に応じて、艶やかな白拍子が几帳の影から現れる。都より呼び寄せたとおぼしき彼女らは、立烏帽子に水干をまとい、腰には刀を差し、男装のまま今様を謡いながら舞いはじめた。
「これは……」
 思わず忠三郎が声を洩らす。
 凛とした男らしさと、舞の端々に漂う女の艶。混じり合う姿は灯火に揺らめき、見る者の心を惑わせる妖しき幻のようだった。
 村重は盃を傾けながら忠三郎を横目に見やり、にやりと笑う。
「いかがかな。戦のことばかりでは心が荒む。されど、こうした色香もまた、人の世を治める術よ」
 白拍子の歌声は、耳に心地よく響くばかりか、言葉の端々に機知があった。理性を削ぎ落とし、ただ舞に没入させる力を持っていた。
「……目が離せぬ……」
 忠三郎は、若さゆえの戸惑いを隠せなかった。
「武士も大名も、結局は女ひとりに心を乱す生き物よ」
 村重が面白げに笑う。
「その弱さを知り、操るは政道のひとつじゃ」
 忠三郎は返す言葉を失い、ただ舞う白拍子の姿に心を奪われ続けた。
 白拍子は笛の音に合わせ、ゆるやかに袖を翻す。裾が揺れるたび、ほのかな香が漂い、若武者の血をさらに熱くする。
 村重は盃を傾けながら忠三郎を横目で見る。
「聞き及んでおるぞ。安土での一件。――万見仙千代と一騒動あったそうではないか」
 忠三郎は思わず顔をあげた。
「そなたが口惜しい思いをしておるのに、上様も左近も何も申さぬとか」
「それは…」
 何も言わなかったわけではない。一益は何と言っていたか。
『勝ちたければ、正心を得よ』――義兄上の言葉を思い出す。
 村重はくつくつと笑った。
「いかにも左近らしい物言いよ。されど左近ならば、人一人葬ることなど容易いはずではないか」
 言われてみれば、伊勢攻略の折にも、闇に消えた者は少なくなかった。
「左近は何もしてはくれぬのか? 義弟が面目を潰され、刀を抜いてまで追うたものを。義兄上は黙したままか」
 その嘲りに、忠三郎は返す言葉を失い、沈黙する。
 白拍子の鈴の音が、胸の奥に染み入る。
「左近は、そなたの怒りを『よき訓』と受け流した――武門にそれは、時に『見捨てる』と同じことよ。ならば己が手で討ち果たせばよい。仙千代ごときを」
「討ち果たす?仙千代を?」
 思わず声が震えた。
「然様。常ならばいざ知れず、戦さ場で隙を伺えば、あるいは葬り去ることもできよう――世はかように冷酷よ。忠三郎とて、例外ではあるまい」
 あまりの言葉に忠三郎は戸惑った。だが、頭の芯は次第に霞み、思考は鈍っていく。白拍子の舞が目に入った。
 
 「なにせうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂へ」
 
 ――理も義も、灯に溶けた。
 室町小唄――閑吟集の一節が、囃子に紛れて耳を打つ。白と緋の装束が入り乱れ、視界は赤白の霞と化した。
 杯を手にしながらも、もはや酔か舞かの境は曖昧で、ただ心が流されるまま。ただ夢のごとく漂っていく。
 やがて酔いに呑まれ、忠三郎はそのまま座敷に崩れ落ちた。
 ――明け方。
 障子越しに淡い光が差し込む中、目を覚ますと、隣には昨夜の白拍子が静かに寝息を立てていた。乱れた髪が枕に広がり、白い指先が衣の端を掴んでいる。
 忠三郎は胸騒ぎを覚え、慌てて起き上がった。昨夜の夢が現か幻かさえ定かでない。喉の奥に残る酒気と、肌に纏わりつく白拍子の香が、かえって己の過ちを際立たせる。
(義兄上に知られたら――)
 一瞬、その顔が脳裏をよぎり、忠三郎は胸の奥を冷たい刃でなぞられたように感じた。戦場に立つべき身が、女の色香に迷って何をしているのか。若さゆえの浅ましさが、骨の髄まで沁み渡る。
 襖の向こうでは、すでに村重が出陣の支度を整えていた。刀を帯びる掌に、なお香の匂いが残っていた。己が浅ましさほど重い鎧はない。甲冑の緒を締める音が、妙に現実を突きつけた。酔夢の余韻を断ち切るその響きに、忠三郎は小さく息を呑み、そそくさと衣を直した。

 
 一方、伊勢では信長からの密書が届けられ、それを見た一益は早々に長島城に家臣たちを集めた。
 長島からほど近い金井城の城主・種付千代次と、その縁者である大木城主・大木信盛に謀心あり、すみやかに討て――それが命であった。
 広間には三九郎、義太夫、津田秀重、佐治新介、道家彦八郎らが居並ぶ。
 一度は織田家に臣従した北勢四十八家であったが、従属をよしとしない動きは今なお絶えない。一年前も浜田城の田原元網を討ったばかりだ。
「もともと種付の父は甲賀の出。そう易々と裏切るとも思えませぬが…」
 種付千代次の父、種付秀政を調略したのは新介だ。
「裏で糸を引いておるのは…」
 一益が扇子を打ち鳴らすと、津田秀重が口を開いた。
「北畠の大御所様ではありませぬか」
 かつて伊勢の国司として君臨した三瀬大御所こと北畠具教。大河内城での一戦から七年が過ぎていた。魔虫谷での手痛い敗戦、初陣を飾った忠三郎の抜け駆けなどを経て、和睦ののち信長の次男・三介を養子として迎えさせた。
 だが昨年、信長が強引に具教を隠居させ、北畠家を三介に継がせてから、北勢四十八家は再び不穏な動きを見せ始めている。
「隠居とはいえ、伊勢衆に対する力はなお侮れませぬ。今、事を構えるのは得策とも思えませぬが」
 道家彦八郎が慎重に述べると、新介も深く頷いた。
「いや、下手を打てば、伊勢は再び騒乱となり、戦場と化しましょう」
「秀重の存念は?」
 一益が促すと、津田秀重は眉を寄せて答えた。
「兵を差し向けるのは愚策かと…」
 居並ぶ家臣たちは皆、具教と事を構えることに気乗りしていない。
「戦を避けるのであれば――謀をもって静めるほか、道はございますまい」
 三九郎が控えめに口を添えた。
 義太夫は皆の顔をみながら、一人、頷き、せわしなく体を揺さぶっている。
「義太夫、おったか。あまりに静かゆえ、おらぬかと思うたわ」
 佐治新介にそう言われ、義太夫は一益の顔色を窺う。
「殿…そろそろ口を開いてもよろしゅうござりますか」
 義太夫が喋りだすと場が混乱するので、皆の意見が出揃うまでは口を開くなと命じていたのだ。
 一益は苦笑して、
「よかろう。但し、そなたの余計な語りはいらぬ。見聞きしたことを手短に、話せ」
「ハハッ、さすれば…」
 義太夫が嬉しそうに身を乗り出す。
「皆々、お聞きくだされ。これが語るも涙、聞くも涙の、酷い話で」
 一益の言葉など耳に入っていないらしい。家臣たちは「やれやれ」と互いに視線を交わし、膝を寄せ合って苦笑した。広間に漂う空気は、戦の軍議とは思えぬほど和らぎ、いつもの義太夫節の幕開けであることを皆が悟っていた。

 昨年、信長が唐突に、北畠具教を隠居させると書状を送ってきた。
(なにやら妙な話よ…)
 強引に隠居を迫れば、いずれ反発が起こるのは目に見えている。しかも時機を選ばぬ早計さ、裏があるに違いなかった。
 義太夫に探らせたところ、事の発端は具教その人ではなく、織田方、すなわち三介にあった。
「すべては鳥のせいでござる」
「鳥?」
 義太夫が渋面をつくってそう言うと、居並ぶ者たちは狐につままれたような顔をした。
「三介殿の小姓が、飼い鷹の餌にと鳥を籠より放したところ、その鳥がひらりひらりと舞い上がり、隣家の屋敷へと飛び込んだのでござります」
「…それで?」
「小姓が後を追い、遠慮もなく屋敷に踏み入り、座敷を荒らして鳥を捕らえた。そこへ驚いた家人が現れ、小姓をしたたかに打擲したとか」
 突然、他人の屋敷を踏み荒らされたとあっては、家人が憤るのも当然である。
「面目を潰された三介どのが、これをそのまま上様に訴えた。かくて家人の主である北畠の大御所様が無理やり隠居させられることとなり、織田に家を乗っ取られたと憤懣やるかたない大御所様は、ついに武田と結び、旧領を取り戻さんと北勢四十八家に号令をかけたのじゃ」
 義太夫の声が次第に重くなる。
「旧主の危急と聞いた北勢四十八家は、こぞって呼応し、反旗を翻した次第にて」
「では、我らは――ひいては伊勢の者どもはみな、もとをたどれば鳥一羽のために、命をかけて戦さをせねばならぬというのか。かような阿呆な話のどこが、聞くも涙じゃ」
 道家彦八郎が呆れ顔で吐き捨てる。義太夫は慌てて首を振った。
「さにあらず。北勢四十八家は長島願証寺との戦さの折も、我らのために先陣をつとめた。それが急に寝返ったのは、もとより織田家に従っていたのではなく、ただ旧主に付き従っておったからこそ。具教様が上様に従っていたゆえ、皆も渋々膝を屈していたまでのこと」
 義太夫の言葉は、確かに理にかなっている。
 無論、織田家の勢いを怖れた者も少なくはない。だがその根にあるものは、常に「旧主への忠義」であった。
 広間に重苦しい沈黙が落ちる。家臣たちは互いに顔を見合わせ、一益の言葉を待った。
 一益は扇を閉じ、軽く打ち鳴らすようにして制した。
「義太夫、もうよい」
「ハハッ」
 一益はゆるりと目を開き、扇子で脇息を軽く叩く。その音が静寂を切り裂いた。
「義太夫の言うこと尤もじゃ。されど皆の君主は北畠中将でもなければ三瀬大御所(北畠具教)でもない。皆、北畠の家臣にあらず、この滝川左近の家の者である。わしが無道の君主と言うのであれば従わざること、これもまた致し方なし。正道を知らざる愚将には初めより事をなさざるべきこと可なり。これすなわち、もののふの法なり。ただこの身の不徳の致すところである」
 その言葉は、己の正当性を訴えるよりも、むしろ家臣たちの胸の内を試すかのようであった。
「聖人君主の智慧なくば間者を用いることは叶わず。さりながら、わしにそなたら家人あるは、これまさに、猶魚の水あるがごとし」
 一益は低く、しかし一人一人の胸に突き刺さるように告げる。
「我に聖智あり、まことの君主と思うのであれば、この乱世に臨みて主が国を治むるを助け、大功をあげよ」
 沈黙を破ったのは義太夫だった。いの一番に両手をつき、頭を深く垂れる。
「元より我ら、殿をまことの君主と崇め、お従いするのみ」
 一益が鋭く、
「皆は?」
 と問いかけると、視線を受けた者はひとりひとり、逃げ場を失ったように背筋を伸ばす。
「申し上げるまでもなきこと。皆、殿に従うと心に決め、これまでお仕えして参りました。恐れながらこの地の安寧のため力を尽くしてご奉公いたしまする」
 この中で最も年長の津田秀重が口を開くと、その重みが場に響き、続いて新介、彦八郎も深く頷いた。
「元は新介が種付の父に働きかけ、我が方に引き入れたのであったが、異存はないか」
 一益が佐治新介を顧みる。
 新介は一瞬言葉を飲み込み、苦い表情ののち、首を横に振った。
「上意とあらばもはや我らには如何ともしがたく…」
 一益は頷き、鋭く断を下す。
「では決まった。金井城主、種付千代次と大木城主の大木信盛をここへ呼び寄せ、二名が城を出たのを見届けたのち、彦八郎は金井城を、新介は大木城を落とせ」
「殿、その義なれば、しばしお待ちを」
 義太夫が慌てて進み出る。
「その種付なるものの縁者が蒲生家におりまする」
「それはまた厄介じゃな。誰じゃ」
 佐治新介が渋い顔で問う。伊勢と蒲生家の繋がりは、一益にとって頭の痛い問題のひとつだ。親類縁者の多い蒲生にかかると、仕置きのたびに忠三郎が口を挟み、時には信長の名を笠に着てまで問いただしてくる。
「常より戦場で、鶴に置いて行かれて必死で追いかけていく者がおろう。あれは種村なにがしと申し、種付の本家筋にあたるものじゃ」
「種村伝左衛門か」
「確か、そのような名であったかと」
 見覚えがある。あれは確か、蒲生家につけられた六角家の旧臣だ。近江の種村が本家、伊勢の種付が分家にあたる。
「後々遺恨を残すことになるやもしれませぬ。討ち果たすのは致し方なきことといえど、忠三郎どのに知らせておいては…」
 津田秀重が口を開く。
「それがよろしいかと。あやつは己の家のことに口を挟むなという割には、いちいち伊勢の仕置きに難癖つけて騒がしいことこの上なく」
 義太夫が肩をすくめて言うと、
「では義太夫、三九郎。二人で行って、鶴に話をつけておけ」
「ハハッ」
 返事はしたものの、三九郎には忠三郎が納得いくように話をつける自信がない。義太夫がうまく丸め込めるかどうか――。
「しかし、殿」
 そこで道家彦八郎が口を開く。
「恐れながら、義太夫から話を聞く限りでは、此度の騒ぎは織田家にも非があるものかと存じ上げまする。まして種付千代次に謀心あるという上様の仰せも、確たる証拠がありませぬ」
「彦八郎は種付を見逃してやれと?わしはそのようなことを申しておらぬぞ」
 義太夫がすぐさま咎めるように口を挟む。
「さにあらず。ただ…勢州の武士は誇り高き者ども。父祖からの義を重んじて生きておりまする。それを呼び寄せて斬るのでは、あまりに無慈悲。種付の父は願証寺攻めの折、我らのために先陣を務め、討死しておりまする。その子をこうして誅するは、情の理を欠くことかと」
 彦八郎の言葉に広間の空気が張り詰めた。重臣たちは誰も軽々しく口を開けない。
「相わかった。そなたの言うこと尤もじゃ」
 一益は短く返事をして、また目を閉じる。
(この騒ぎ、容易には収まらぬ。ひとりふたりを始末したところで終わりはせぬ。伊勢に再び火の手があがる前に、しかるべき手を打たねばならぬ――)
 軍議が終わると、一益は扇を閉じ、何気ない顔で立ち上がった。
 その目の奥に、氷のような光が宿る。
 湖上を渡る風は涼しくとも、帆の陰には燻る火がある。
 声高に命を下すこともなく、ただ一言、淡々と側近に囁いた。
「仕度をせよ」
 小さな声だった。だが、居並ぶ者は皆、その裏に潜む決断の重みを悟った。
 滝川一益が本気で動くとき、すでに相手の命運は尽きている――そのことを知る家臣たちは、背筋に冷たいものを感じざるを得なかった。
 謀をめぐらせ、敵を討つ。
 滝川一益の真骨頂が、今まさに静かに牙を剥き始めたのである。
 
 ――そして翌日。
 金井城の種付千代次のもとへ、長島からの使者が現れた。
「上意により、伊勢長島城へ伺候せよ」
 命を伝えるその口調は、あまりにも平然としていた。さながら死への道行きを告げていることを、承知しているかのように。
 種付千代次の胸に、一抹の不安がよぎる。すぐさま大木城主・大木信盛に相談すると、信盛は苦々しい顔で言った。
「従わねば、攻め滅ぼされよう」
 信長の命に背けば、必ず兵を差し向けられる。拒む道はない。
 かくして、種付千代次は致し方なく長島へと足を向けた。
 ――種付家は近江の種村家と縁戚、大木信盛とは父親同士が兄弟で従弟にあたる。かつては佐治新介や蒲生忠三郎の説得により、ともに織田家へと帰属した経緯がある。
 だが今、信長の間者が押さえた密書には、裏切りと取られても仕方のない文言が記されていた。
 金井城は長島城に近い。兵を挙げれば真っ先に討たれるのは火を見るよりも明らか。
 種付千代次には、旧主・北畠具教に従う意志など毛頭なかった。
 ただ、旧主を憚り、曖昧な返事をしたに過ぎない。
 ――だが、その些細な曖昧さこそが、今や命取りになろうとしていた。

 翌朝。
 長島城の城下は、秋の朝靄に包まれて静まり返っていた。だがその奥では、人知れず血の気配が漂いはじめていた。
 長島城に姿を現した千代次を、滝川家の家臣たちは常と変わらぬ笑顔で出迎え、道すがら労をねぎらった。そのあまりにも平穏な様子が、かえって胸の奥に薄氷を踏むような不安を走らせる。しかも、共に来るはずであった大木信盛の姿が見えない。千代次は訝しく思いながらも、そのまま一人で城門をくぐり、控えの間で小姓に刀を預けると、落ち着かぬ面持ちで広間へと向かった。
「滝川様にはご機嫌うるわしく…」
 形式通りの挨拶が終わった刹那、一益の低い声が空気を切り裂いた。
「千代次。何故に呼び出されたか、わかるか」
「は…それは…」
 千代次には見当もつかず、ただ恐る恐る一益の表情を伺うばかり。
 一益はしばし目を閉じ、冷ややかに言い放った。
「上意というは余の私事にあらず。そなた、謀反の疑いがある。よって、即刻斬り捨てよとの御沙汰じゃ」
 千代次は蒼ざめ、畳に片手を突く。
「決して織田家に弓引こうなどという大それた考えはありませぬ」
 必死の弁明。しかし信長から下知が下された以上、もはや詮議も弁明も許されない。
 千代次は一益が何か言うのを待っている。その千代次の前に、三方に乗せた脇差が置かれる。
「これは…詰腹切れと、そう仰せか!」
 理不尽だと言わんばかりにそう叫ぶ。
「尋常に切腹せよ。さもなくばこの場で討ち果たす」
 張り詰めた沈黙を破るように、一益の声が響いた。
「…小平次、介錯してやれ」
「ハハッ」
 冷徹な命に応じて津田小平次が進み出る。背後に控えていた兵たちも息を呑み、場の空気は一層重苦しく沈みこんだ。
 一益の厳しい眼差しに観念した千代次は、肌脱ぎして潔く座した。
「津田小平次、介錯仕りまする」
 小平次はきびすを正し、名を名乗って一礼し、すらりと刀を抜いた。
 千代次は最後まで誇りを捨てず、小平次を睨み据えると、黙礼ののちに脇差を掴み、左腹に深々と突き立てる。その刃を一文字に右へと引き切った瞬間――小平次の刀が斜めに振り下ろされた。
 千代次は激痛に呻きながらも、有無を言わぬ覚悟で刃を引き切る。その瞬間、小平次の振り下ろした刀が肩に当たる。動揺して刃を止めた小平次を睨みつけるように、千代次は手を腹に押し当て、痛切な視線を一益に注いだ。
「おのれ、非道な織田の行い!必ずや因果の応報を受けようぞ!」
 怒声が広間を震わせた。その声は、ただの断末魔ではなく、まさしく「無念腹」と呼ばれるもの――欺かれ、討ち取られた悔恨と抗議を後世に刻みつける、烈しい叫びだった。
 小平次は動揺して二の太刀を振り下ろすが、刃は肩をかすめ、致命に至らない。千代次は激痛にのけ反りながらも、己の腹から臓腑を掴み取り、一益に向かって投げつけた。
 一益は眉ひとつ動かさず、それを避ける。
(まこと、見事な執念……)
 小平次は完全に冷静さを失い、三の太刀を振り下ろすも、前に倒れ込んだ千代次の頭に当たり、刃こぼれしてしまう。
「静まれ、小平次」
 介錯の失敗は、もはや目を覆いたくなる醜態だった。
「取り乱すな」
 一益が鋭く声をかけ、刀掛から長刀を掴み取る。
――その刃を振り下ろす直前。
 一益はひとつ、瞼を深く下ろした。
 それが弔いであることを、場の誰もが悟った。
「まこと天晴な勢州武士の最期。しかと見届けた」
 静かな称賛の言葉とともに、鞘から刃を抜くや否や、一気に振り下ろす。重々しい音が響き、一太刀で首を落とした。
 極度の緊張から解き放たれた小平次は、その凄惨な光景を前に呆然と立ち尽くす。
「小平次、大事ないか」
「ハハッ、面目次第もござりませぬ」
 一刀目を防がれた時点で心胆は揺らぎ、二度、三度と失したのは無理もなかった。介錯はただ斬り捨てるより、はるかに難しい。
「し、しかし、かような無念腹は…」
 なお顔を伏せて震える小平次に、一益は低く言った。
「その先を申すな。手厚く葬ってやろう」
 血のりを拭い、鞘に納める刃が小さく鳴った。津田小平次が震える手で首級を覆い、家臣らは畳に散った血を拭い清める。
 だが千代次の叫びと血飛沫は、広間に居合わせた誰の胸にも焼き付いて離れなかった。

 大木城主・大木信盛の姿は未だ現れなかった。長島城を包む不穏の気配を察して、すでに闇に紛れたか。もしそうであるなら、追手を差し向け、二人の首を揃えて信長に献じるのが道理だろう。さもなくば、信長の怒気は己に及ぶ。
 だが、一益の目は細く光を帯びる。
(信盛一人を逃したところで、織田家の威は揺るがぬ。だが……)
 冷徹な計算が脳裏を過ぎる。しかし同時に、奇妙な倦怠が胸奥にわずかに疼いた。
(追わせるに値せぬ獲物を、わざわざ狩る必要もあるまい)
 一益は唇を結び、すっと息を吐いた。
 
 種付千代次謀殺の知らせは、ほどなくして南近江・日野の中野城にも届いた。
 義太夫が案じていた通り、伊勢の金井城から知らせを受けた蒲生家の与力、種村伝左衛門はこの青天の霹靂に驚き、怒りを抑えきれぬまま忠三郎の前に進み出た。
「突然に呼び出して二心ありと捕り込め、何の申し開きの場も与えず、詰腹切らせたとの知らせがあり申した。若殿も存じておいででござろう」
「詰腹切らせたと?」
 そもそも北勢平定の際、佐治新介と忠三郎の二人で種付千代次の父、秀政を説得して織田家に引き入れた経緯がある。
(――無念腹か)
 ふと、他家で耳にした話が脳裏をよぎる。主君の怒りを買い、理非をただすことも許されずに腹を切らされた武士たち。彼らは大抵、座に着くなり「これは無念腹にござる」と叫び、血に染まりながら恨みを残して果てたという。訴えを聞く者もなく、真偽を糺す暇もなく、ただ名誉を汚され、無念を抱いて死ぬ――それが武士にとって最も残酷な最期であった。
(二心ありなどという証は、何処にあるというのだ。義兄上から何も知らせがないのも不可解…)
 一益であれば、事の仔細を前もって伝えてくれるはずである。
「何も聞いておらぬ。何故、かような仕儀になったのか」
 忠三郎が思わず問うと、伝左衛門は声を荒らげた。
「それがしも承知致さぬ。謀反の証し立つるものは、一つとして抑えてはおらぬはず。されど、事実は詰腹を切らされたと――口惜しきことこの上なく…。知らせを受けた一族郎党は城に火をつけて他国へ落ち延び、従弟の大木信盛は城も国も捨てて逃げだした由にて」
 伝左衛門の声は憤怒と無力感に震えていた。「詰腹」という言葉が耳に重くのしかかる。真の咎はなくとも、主君の猜疑や情勢のあやふさゆえ、家臣に腹を切らせる。名を保つための体裁にすぎないが、切腹した本人にとっては、誠に無念千万な仕儀だ。
(何故に義兄上はかように拙速に事を起こされたのか)
 一歩間違えば国が乱れるような乱暴な仕置きだ。一益はこれまで家臣を手討ちにしたことがない。人の弱さを知るがゆえに、理不尽な処分を避けてきた人だ。
 それを知っているだけに、今回の話は腑に落ちぬことが多すぎた。
「まずは義兄上に事と次第を問うてみよう」
 忠三郎は決意を固め、早速一益の元へ使者を送ろうと支度をはじめた。そこへ、峠を越えて義太夫と三九郎が駆けつけてきた。
「義兄上はなにゆえに罪なき者に腹を切らせた?」
 もう知らせが届いていたのか――三九郎は驚いて義太夫の顔を見る。義太夫は例のごとく口元に笑みを浮かべ、
「罪なき、とは?何をもってそう申す?」
「何の確証も得ぬままに捕り込めたと聞き及んだ」
 真面目な顔をしてそう言う忠三郎に、義太夫は恍けた顔を作ってみせる。
「わしはよう知らぬが、密書を抑えたという話であった」
「如何なる密書か。まことに二心があったとは思えぬ。申し開きの場さえも与えられなかったと聞く」
 忠三郎の声が震えていた。
「咎め立てするところがない故の無念腹ではないのか。理もなく、証もなく、咎め立てするところもない者に切腹を命じる――そのような仕打ちは、あまりに酷きもの」
 三九郎は言葉を失い、じっと手元を見つめる。
 一方で義太夫は、はて、とさらに恍けてみせた。伊勢を出る折、信長から「上意であることを伏せよ」と命じられている。そのため、真実を語るわけにもいかない。
 しかし忠三郎がそこまで知っているのであれば、簡単に引き下がるとは思えない。そもそも切腹の場に居合わせていない義太夫自身、話は全てまた聞きだ。
「何故の無念腹であったかなど、地獄へ行ってあやつに聞かねば分かるまい」
 その言葉を聞いた忠三郎の眼が、ぎらりと光った。
「大概にせい。地獄へ行かずとも分かっておる。己が潔白を訴えるため、命を賭して選んだ無念腹よ。義太夫も、それくらいのことは察しておるのであろう」
 吐き出すように言った声音には、怒りと悲しみが入り交じっていた。潔白を証すための切腹は、名誉ではなく慟哭であり、血の涙をもって世に訴える最後の叫び。その意味を知らぬ武士など、この世にいないはずだ。
「種付秀政を説いて織田家に臣従させたのは新介とわしじゃ。そのわしに何の断りもなく詰腹を切らせるなど、常の義兄上であれば断じてなさらぬこと。合点のいかぬ話よ。包み隠さず、すべてを申せ」
 だんだん面倒な話になってきたなと、義太夫は苦笑した。相手が忠三郎では、いつもの軽口や虚言では切り抜けられない。
「義太夫…」
 沈黙していた三九郎が、もの言いたげに義太夫を見た。だが義太夫はいやいや、と首を振るばかり。
「何じゃ、何を隠して居るのか」
 忠三郎が三九郎を問い質すと、義太夫が割って入る。
「いらぬ詮索はするな。謀心なき者ならば、そもそも怪しき密書など出さぬはずじゃ。だからこそ、かような仕儀になった」
「それはおぬしの存念か。それとも義兄上の言葉か」
 忠三郎の問いは鋭い。到底、そうとは思えない――三九郎は堪えきれず口を開いた。
「それは違う。忠三郎、おぬし、父上をそのような暴君と思うておるのか」
「思うはずもない。それゆえにおかしいと申しておる。何故隠す。初めから――上様の命であろう? 何ゆえそれを言わぬ」
 と問いただすと、義太夫がやれやれ、とため息をつく。
「おぬしが上様に詰め寄り騒ぎ立てることのなきように、上意であることは伏せておけと、殿がそう仰せられたのじゃ」
 義太夫が観念したように吐き出すと、忠三郎は唇を噛み、低くうなった。
「義兄上は常日ごろから、わしに全てを打ち明けてはくださらぬ。いつまでも童のような扱いじゃ」
「童である証を見せたからよ」
 義太夫が苦笑して肩を竦める。
「仙千代に斬りかかろうとしたあの有様。あれでは何も託せぬわ」
「国と民を守ろうとしたのじゃ!」
 忠三郎の怒声に、三九郎が慌てて割って入った。
「もうよせ。父上は、おぬしを案じておられるのじゃ。胸にあるものを、忘れるでない」
 忠三郎はしばし俯き、やがて絞り出すように呟いた。
「……わしにとって最も大切なのは、日野と民。義兄上が何を隠そうとも、それだけは違わぬ」
 義太夫は肩を竦め、
「此度もおぬしが飯を食っているかどうか案じて、魚を仰山持たされてきたわ。好きじゃろ?」
 と軽口を叩く。
「それは…」
 忠三郎は返す言葉を失う。義太夫の物言いは癪に障るが、その裏に一益の思いやりが透けて見えるのだ。
 常に心を配られ、気遣われる。そのことが、幼子のように扱われていると思わせる所以でもある。
 三九郎はそんな忠三郎の葛藤を察して、苦笑を洩らした。
 忠三郎はふと真顔になり、
「上様からの命が下ったということは、上様は三瀬御所(北畠具教)と事を構えるということではないか」
 義太夫がうむと頷く。
「そのことよ。したが些か時期尚早と殿はお考えじゃ。本願寺の背後で毛利が動いておる」
 忠三郎はそうか、と頷く。
 思えば、主家であった六角家と蒲生家により、伊勢は幾度も戦火に巻き込まれてきた。百年のあいだ、絶えず外からの干渉を受け続けてきた土地である。
(戦国を終わらせるためにも伊勢を沈静化させねばならぬ)
 だが同時に、胸にひとつの影が差す。
 種付千代次の「無念腹」。己が思いを遂げられず、誤解や不遇のまま腹を切って果てる――その惨たる結末を、決して伊勢の人びとに、家臣に、そして自分自身に背負わせてはならない。
(武門の世とは、つまるところ誰が詰腹を強いるかという争いなのかもしれぬ。だが、我らは――その連鎖を断ち切りたい)
――日野と民。その二文字のために。
 遠くで風が唸り、秋の気配が濃くなる。
 信長や一益が次にどんな手を打とうとしているかは分からない。だが、いずれにしても平穏無事に済むことはあるまい。
 忠三郎は、己が心に生じた静かな決意を押し隠しつつ、二人の顔を見やった。
 空を渡る雲の影は速く、戦国の世の行く末もまた、誰にも止められぬ流れのただ中にあった。
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