身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ

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1章 いらない子、アシェ

3 本が好き

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頼まれたお掃除を全部終わらせて、楽しみにしていたことがある。
レオン義兄さんが居る時は怒られるから読めないけど、義兄さんの部屋にある物語の本。
続きが楽しみなんだ。

「魔物を倒したあと騎士様はどうなったのかな」

こっそり挟んでおいた栞から続きを読む。
これは本当にあった話が元になってるからびっくりなんだ。

誰も倒せなかった魔物を倒した、英雄と呼ばれる騎士様がいるんだって。

騎士様は魔力に頼らず、ただ剣ひとつで魔物を倒したんだ。
魔力がなくても、こんなすごいことができるんだって思うとぼくも、夢を見てしまう。

ぼくもこんなふうに――カッコいい騎士様みたいになりたいな。

玄関の物音で我に帰る。
こんな時間。お義母さんが帰ってきたんだ。
本をしまって急いで階段下に向かう。

帰ってきたお義母さんはご機嫌そうだ。
良かった。お掃除も全部終わらせた。
細かい埃もいっぱい取った。

ふと、お義母さんは足を止める。

「アシェ。これはなんだい」

なんだろう。心臓がドキッとする。
お義母さんが指を差した先には、野菜の入った籠があった。
今朝使った野菜の残りだ。
まだ使ったばかりで、新しい。

突然、頬に平手が飛んでくる。
な、なあに?なんで?

「レオンちゃんが食べたくないって言ってたでしょ!なんで捨てとかないんだ!」

「……は、はい」

泣くな。泣いたらもっと怒られる。
痛みで涙がこぼれ落ちそうだったけど、必死に堪えた。頬がじんじんと痛む。

明日の朝食は何を作れば、怒られないかな。

まだ食べられる野菜を全部、ゴミ箱に捨てながらぼくは明日のことを考えていた。


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