解剖令嬢
貴族中心の社会を長く続けてきた王国には、奉公と呼ばれる決まりがあった。下位貴族の後継者が、繋がりが強い上位貴族家に二年間住み込み、行儀見習いやつながりの強化を目的として護衛や側仕えとして働くのだ。
ある日、騎士訓練校に通っていた男爵家嫡男のアルミオ・ヴェッダのところにも、とうとう父親から奉公先を指定する手紙が届いた。
奉公先はどこだろうと手紙を確認した彼は、想像していた子爵家や伯爵家などではなく、付き合いなど無いはずのソアーヴェ侯爵家を指定されていることに驚愕する。
驚きと同時に不安もあった。その侯爵家の令嬢クレーリアには、まことしやかに囁かれる噂があったのだ。
「侯爵家令嬢は人の死体を切り刻むことを趣味としている」
一体何をやらされるのか不安を抱えて侯爵家を訪問したアルミオを待ち受けていたのは、王国の常識とはかけ離れた人体解剖と死体の観察を基礎とした犯罪捜査の日々だった。
解剖令嬢と呼ばれるクレーリア・ソアーヴェの技術と信念を目の当たりにして、アルミオは自分の人生が奇妙ながら得難いものに変わっていくことを実感しつつ、グロテスクな光景に耐える日々が始まった。
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