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第二十九章
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第100回日本選手権大会は北海道立真駒内公園屋内競技場で開催された。
『真駒内セキスイハイムアイスアリーナ』である。
この大会には結衣達女子選手24名、男子選手24名、アイスダンスペアの選手10組によって演技が競われる。競技カテゴリーは、①ペア(男女各1名でペアを組む)、②男子シングル、、③女子シングル、④アイスダンス(男女各1名でカップルを組む)である。プログラムは、公式競技会では通常、ショートプログラム(アイスダンスはショートダンス)とフリープログラム(アイスダンスはフリーダンス。ともに以下、フリーとする。)の2度の演技が行われる。
かつては、氷上に規定の図形をいかに正確に描くことができるかを競う、規定演技(コンパルソリー)と呼ばれる種目とフリープログラムが行われていたが、1990年の世界選手権大会を最後にアイスダンスを除いた3種目における規定演技は廃止された。演技時間はショートプログラムが2分50秒、フリー(シニアの場合)はペアと男子が4分30秒、アイスダンスと女子が4分であり、それぞれ±10秒の幅が認められる。
採点方法は、採点は技術的な内容の評価である「技術点」と、スケート技術や音楽の解釈など(項目はアイスダンスとその他の種目で異なる)を点数化して評価する「構成点」の合計で行われる。
技術点の主な採点対象は、ペア及びシングルは演技の中で実施される各種のジャンプ、スピン、ステップになる。ペアではこれらの技に加え、男性が女性を持ち上げるリフトや、男性の補助で女性を水平方向に投げるような形のスロージャンプなどのアクロバティックな技も実施される。アイスダンスでは、ステップワークや滑走技術そのものがダンスリフトと並んで技術評価の大部分を占める一方で、回転数の多いジャンプや男女が離れて行うスピンは禁止されている。
フィギュアスケートのコートと用具であるが、リンクは、かつてはオリンピックが屋外スケートリンクで行われたこともあるが、現在の公式競技会は国際規格である60m×30mの屋内スケートリンクで行われている。フィギュアスケートの用具であるが、ブーツ(スケート靴)選手は氷上を滑走するための金属製の刃である『ブレード』が付いた革製、あるいは一部プラスチック製のブーツ(スケート靴)を履いて競技に臨む。スピードスケートやアイスホッケーのブレードと大きく異なる特徴は、つま先にトゥピックと呼ばれるギザギザが付いており、ジャンプやスピンを行うのに欠かせない部分となっている。
『ブレード』は厚さ3mm~4mmほどで、氷に接する部分はエッジと呼ばれ、細い溝を挟み内側と外側に2本ある。横から見るとエッジはカーブしており、エッジ全体が氷に接するのではなく、部分的であることが分かる。このカーブがフィギュアスケート独特の氷上での曲線的な動きを可能にしているのだ。
競技会では演技に使用する楽曲の表現に有効な衣装を着用する。また、競技会での演技に使用する楽曲はアイスダンスを除き、ボーカル入りの楽曲の使用が禁止されている。
今回、結衣の演技のテーマは『ミロのヴィーナス』だ。衣装の色はパープルである。結衣は氷上の妖精として演技することになる。演技の時に使用する曲は協奏曲第四番『冬』である。作曲者はアントニオ・ヴィヴァルディである。彼の華やかで軽快な協奏曲に合わせて結衣はこの日の大会の演技の練習をしてきた。
結衣はアクセルやループを得意とし、今回大会に参加する女子としては希少な3回転アクセルを含む6種類全ての3回転ジャンプを跳ぶことができる選手であった。小学生のうちから3回転アクセルの練習を始め、その年の中部ブロック大会(ノービスA)で3回転アクセル-2回転トウループのコンビネーションジャンプに成功している。あれから14年、結衣はもう26歳である。今の結衣には、叶う選手がいない。最終得点も190点以上を獲得することになるだろう。
結衣にとっては待ちに待ったフィギュアスケーター達と演技を競う大会当日になった。この日のために、結衣は文哉、母親の史花、そして義父になる武田と一緒に過酷な練習をしてきた。無論、この大会に参加する男子選手も女子選手も1年近く練習に励んできた。今回大会に参加する女子選手たちは次の通りだ。浅岡結衣、山口さよこ、村主美子、高田マリ、浅見直子、吉村佳代子、横井洋子、坂口エリ、深安理恵、井上咲他14名、総勢24名である。それぞれの選手が練習した成果を氷上の上でクラシック音楽を会場いっぱいに流しながら、華麗な演技を軽快にジャンプしたりしながら、観客を魅了するのである。もちろんその演技によって審査員たちが採点をするわけだ。採点の構成では、技術点と構成点が主な要素になってくる。得点になればいいが減点になれば大変だ。些細なミスで減点されるからだ。結衣は、今回の演技の中で4回転のジャンプを取り入れている。この4回転が決まれば、かなりの得点を獲得することができる。トップバッターは、結衣であった。
結衣を紹介するアナウンスが流れた。
「浅岡結衣さん」「ユイ・アサオカ」
紹介されると場内から観客の声援と拍手喝采の嵐であった。それは結衣の演技に期待し、また、結衣の演技によって、心も体も癒され、幸せになりたいという思いであった。結衣はその観客達の思いに応える必要がある。結衣には演技中のミスは決して許されないのだ。
結衣はリンク内を周り始めた。左右に足を動かし、華麗に滑り始めた。ウォーミングアップである。結衣が一周しながら観客達の近くにくると声援と拍手が湧き上がる。その声援と拍手は結衣に対する励ましであり、華麗な演技により、心を癒して欲しいという表れであった。結衣のウォーミングアップも終わり結衣はリンクの中央に立った。両手を白鳥が羽根を動かすように上下にしなやかに素早く動かした。そして両手を前で止めた。頭を下げて精神を集中させている。場内の観客達は、静まりかえったて結衣をしばらくの間見つめている。場内は物音ひとつなく静かであった。しばらくすると結衣が選曲した楽曲・協奏曲第四番『冬』が場内に流れ始めた。この楽曲の作曲者はアントニオ・ヴィヴァルディである。彼の華やかで軽快な協奏曲に合わせて結衣の演技が始まった。
結衣の華麗な演技が始まった。スケートのエッジを左右交互に動かし、後方に滑り出した。最初はジャンプである。結衣はかなりの助走をして勢いよくジャンプした。4回転である。かなり高くジャンプし、体を勢いよく回転させた。結衣の華麗な演技が場内の観客を魅了した。場内から温かい拍手と声援が湧き起こった。〝パチパチパチパチパチパチパチ〝、結衣は体を4回転させて見事に氷上の上に着地した。成功である。場内から観客の拍手が湧き上がった。
次は結衣が得意とするアクセル、ループである。3回転アクセルを含む6種類全ての3回転ジャンプを跳んだ。3回転アクセル-2回転トウループのコンビネーションジャンプに成功した。結衣のジャンプの成功のつど、拍手が湧き上がる。結衣の演技が次から次えと披露され場内の観客を魅了する。それはまさに氷上の妖精であった。3回転アクセルを取り入れ2度の3回転アクセルに成功した。ショートプログラムで3回転アクセルを成功させたら。ショートプログラム、フリーと合わせて3度の3回転アクセルを成功させた。結衣は今回の演技ではルッツやサルコウを取り入れていなかった。苦手としているからだ。特にルッツではインサイドエッジから踏み切る癖があり、シーズンのルール改定でエッジ判定が厳格になってからは踏切違反を取られることが多かったからだ。コンビネーションジャンプはセカンド、サードジャンプに得意なループを用いることが多く中でも3回転フリップ(または3回転ループ)-2回転ループや3回転フリップ(または3回転ループ)-2回転ループ-2回転ループの3連続ジャンプを多く取り入れていた。
トウループを用いたコンビネーションでは2回転アクセル-3回転トウループ、3回転アクセル-2回転トウループを取り入れていた。3回転フリップ-3回転トウループも取り入れた。結衣はかつては3回転フリップ-3回転ループを積極的に取り入れていた。
ジャンプ以外では結衣のスパイラルという武器がある。その武器とは、しなやかさと力強さを兼ね備え、現行採点では評価のウエイトが大きい柔軟性を生かしたスピンやステップ、スパイラルを行うことができ、高いGOEを獲得することができる。片手ビールマンスピンを行うこともできるがレベル認定の規定の2回転を行う前に体勢が崩れてしまい、レベルを取りこぼすことも多くプログラムに取り入れていなかったが、今回結衣はフリーの演技で用いている。ストレートラインステップシークエンスのレベル4をショートプログラムで、またサーキュラーステップシークエンスのレベル4ショートプログラムで獲得している。
結衣の演技が終盤を迎えた。結衣はスケートを上手に左足を軸にし、右足を上に高く上げる。今度は右足を軸に左足を上に高く上げる。右足を上げた時はその足首を右手で掴む。左足を上げれば左足の足首を掴む。結衣の動きにはまったく無駄がない。華麗である。
演技が終盤になると観客達は結衣の動きに合わせ、力強く拍手する。〝パチパチパチパチパチパチパチパチパチ〝結衣は最後の演技のスピンが始まった。上体を低くして、スケートを履いた左足を軸にして右足を素早いスピードで回転させる。〝クルクリクリクルクル〝。そしてその回転を止めた。結衣は満面の笑みで、両手を高く上げ、まるで白鳥が今から羽根を拡げて羽ばたくような態勢で体を停止した。観客の割れんばかり拍手。叫び声。それは結衣に対する励ましであり、感謝の表れであった。「結衣ちゃん、ありがとう。」
「結衣!」「結衣ちゃん、ありがとう。」
花束が観客席から場内の中へ投げ入れられる。至る所から投げ入れられた。結衣はその花束を拾った。結衣は感謝の気持ちを込めて、観客席に向かって頭を深く下げて挨拶をした。結衣は感激の余りに泣いていた。それは結衣が過酷な練習をしてきた。ことに対する自分の感慨深い思いと演技を全てやり終え、ミスもなく、完璧な演技をしたことに対する感激の涙であった。結衣は演技を終え、リンクから出て、文哉と史花の待つ控え場所に行った。結衣と文哉は抱き合った。二人の横には史花がいた。史花は結衣の背中に手を当てた。「結衣、よく頑張ったね。」文哉も結衣も泣いていた。史花は二人を温かい表情で見守っていた。
4日間に渡る競技も終わった。この大会で結衣は最高得点を獲得して、優勝したのであった。こうして結衣の全日本選手権大会は終わったのである。
結衣と文哉、史花の三人は宿泊施設としていた札幌グランドホテルへタクシーで向かった。
『真駒内セキスイハイムアイスアリーナ』である。
この大会には結衣達女子選手24名、男子選手24名、アイスダンスペアの選手10組によって演技が競われる。競技カテゴリーは、①ペア(男女各1名でペアを組む)、②男子シングル、、③女子シングル、④アイスダンス(男女各1名でカップルを組む)である。プログラムは、公式競技会では通常、ショートプログラム(アイスダンスはショートダンス)とフリープログラム(アイスダンスはフリーダンス。ともに以下、フリーとする。)の2度の演技が行われる。
かつては、氷上に規定の図形をいかに正確に描くことができるかを競う、規定演技(コンパルソリー)と呼ばれる種目とフリープログラムが行われていたが、1990年の世界選手権大会を最後にアイスダンスを除いた3種目における規定演技は廃止された。演技時間はショートプログラムが2分50秒、フリー(シニアの場合)はペアと男子が4分30秒、アイスダンスと女子が4分であり、それぞれ±10秒の幅が認められる。
採点方法は、採点は技術的な内容の評価である「技術点」と、スケート技術や音楽の解釈など(項目はアイスダンスとその他の種目で異なる)を点数化して評価する「構成点」の合計で行われる。
技術点の主な採点対象は、ペア及びシングルは演技の中で実施される各種のジャンプ、スピン、ステップになる。ペアではこれらの技に加え、男性が女性を持ち上げるリフトや、男性の補助で女性を水平方向に投げるような形のスロージャンプなどのアクロバティックな技も実施される。アイスダンスでは、ステップワークや滑走技術そのものがダンスリフトと並んで技術評価の大部分を占める一方で、回転数の多いジャンプや男女が離れて行うスピンは禁止されている。
フィギュアスケートのコートと用具であるが、リンクは、かつてはオリンピックが屋外スケートリンクで行われたこともあるが、現在の公式競技会は国際規格である60m×30mの屋内スケートリンクで行われている。フィギュアスケートの用具であるが、ブーツ(スケート靴)選手は氷上を滑走するための金属製の刃である『ブレード』が付いた革製、あるいは一部プラスチック製のブーツ(スケート靴)を履いて競技に臨む。スピードスケートやアイスホッケーのブレードと大きく異なる特徴は、つま先にトゥピックと呼ばれるギザギザが付いており、ジャンプやスピンを行うのに欠かせない部分となっている。
『ブレード』は厚さ3mm~4mmほどで、氷に接する部分はエッジと呼ばれ、細い溝を挟み内側と外側に2本ある。横から見るとエッジはカーブしており、エッジ全体が氷に接するのではなく、部分的であることが分かる。このカーブがフィギュアスケート独特の氷上での曲線的な動きを可能にしているのだ。
競技会では演技に使用する楽曲の表現に有効な衣装を着用する。また、競技会での演技に使用する楽曲はアイスダンスを除き、ボーカル入りの楽曲の使用が禁止されている。
今回、結衣の演技のテーマは『ミロのヴィーナス』だ。衣装の色はパープルである。結衣は氷上の妖精として演技することになる。演技の時に使用する曲は協奏曲第四番『冬』である。作曲者はアントニオ・ヴィヴァルディである。彼の華やかで軽快な協奏曲に合わせて結衣はこの日の大会の演技の練習をしてきた。
結衣はアクセルやループを得意とし、今回大会に参加する女子としては希少な3回転アクセルを含む6種類全ての3回転ジャンプを跳ぶことができる選手であった。小学生のうちから3回転アクセルの練習を始め、その年の中部ブロック大会(ノービスA)で3回転アクセル-2回転トウループのコンビネーションジャンプに成功している。あれから14年、結衣はもう26歳である。今の結衣には、叶う選手がいない。最終得点も190点以上を獲得することになるだろう。
結衣にとっては待ちに待ったフィギュアスケーター達と演技を競う大会当日になった。この日のために、結衣は文哉、母親の史花、そして義父になる武田と一緒に過酷な練習をしてきた。無論、この大会に参加する男子選手も女子選手も1年近く練習に励んできた。今回大会に参加する女子選手たちは次の通りだ。浅岡結衣、山口さよこ、村主美子、高田マリ、浅見直子、吉村佳代子、横井洋子、坂口エリ、深安理恵、井上咲他14名、総勢24名である。それぞれの選手が練習した成果を氷上の上でクラシック音楽を会場いっぱいに流しながら、華麗な演技を軽快にジャンプしたりしながら、観客を魅了するのである。もちろんその演技によって審査員たちが採点をするわけだ。採点の構成では、技術点と構成点が主な要素になってくる。得点になればいいが減点になれば大変だ。些細なミスで減点されるからだ。結衣は、今回の演技の中で4回転のジャンプを取り入れている。この4回転が決まれば、かなりの得点を獲得することができる。トップバッターは、結衣であった。
結衣を紹介するアナウンスが流れた。
「浅岡結衣さん」「ユイ・アサオカ」
紹介されると場内から観客の声援と拍手喝采の嵐であった。それは結衣の演技に期待し、また、結衣の演技によって、心も体も癒され、幸せになりたいという思いであった。結衣はその観客達の思いに応える必要がある。結衣には演技中のミスは決して許されないのだ。
結衣はリンク内を周り始めた。左右に足を動かし、華麗に滑り始めた。ウォーミングアップである。結衣が一周しながら観客達の近くにくると声援と拍手が湧き上がる。その声援と拍手は結衣に対する励ましであり、華麗な演技により、心を癒して欲しいという表れであった。結衣のウォーミングアップも終わり結衣はリンクの中央に立った。両手を白鳥が羽根を動かすように上下にしなやかに素早く動かした。そして両手を前で止めた。頭を下げて精神を集中させている。場内の観客達は、静まりかえったて結衣をしばらくの間見つめている。場内は物音ひとつなく静かであった。しばらくすると結衣が選曲した楽曲・協奏曲第四番『冬』が場内に流れ始めた。この楽曲の作曲者はアントニオ・ヴィヴァルディである。彼の華やかで軽快な協奏曲に合わせて結衣の演技が始まった。
結衣の華麗な演技が始まった。スケートのエッジを左右交互に動かし、後方に滑り出した。最初はジャンプである。結衣はかなりの助走をして勢いよくジャンプした。4回転である。かなり高くジャンプし、体を勢いよく回転させた。結衣の華麗な演技が場内の観客を魅了した。場内から温かい拍手と声援が湧き起こった。〝パチパチパチパチパチパチパチ〝、結衣は体を4回転させて見事に氷上の上に着地した。成功である。場内から観客の拍手が湧き上がった。
次は結衣が得意とするアクセル、ループである。3回転アクセルを含む6種類全ての3回転ジャンプを跳んだ。3回転アクセル-2回転トウループのコンビネーションジャンプに成功した。結衣のジャンプの成功のつど、拍手が湧き上がる。結衣の演技が次から次えと披露され場内の観客を魅了する。それはまさに氷上の妖精であった。3回転アクセルを取り入れ2度の3回転アクセルに成功した。ショートプログラムで3回転アクセルを成功させたら。ショートプログラム、フリーと合わせて3度の3回転アクセルを成功させた。結衣は今回の演技ではルッツやサルコウを取り入れていなかった。苦手としているからだ。特にルッツではインサイドエッジから踏み切る癖があり、シーズンのルール改定でエッジ判定が厳格になってからは踏切違反を取られることが多かったからだ。コンビネーションジャンプはセカンド、サードジャンプに得意なループを用いることが多く中でも3回転フリップ(または3回転ループ)-2回転ループや3回転フリップ(または3回転ループ)-2回転ループ-2回転ループの3連続ジャンプを多く取り入れていた。
トウループを用いたコンビネーションでは2回転アクセル-3回転トウループ、3回転アクセル-2回転トウループを取り入れていた。3回転フリップ-3回転トウループも取り入れた。結衣はかつては3回転フリップ-3回転ループを積極的に取り入れていた。
ジャンプ以外では結衣のスパイラルという武器がある。その武器とは、しなやかさと力強さを兼ね備え、現行採点では評価のウエイトが大きい柔軟性を生かしたスピンやステップ、スパイラルを行うことができ、高いGOEを獲得することができる。片手ビールマンスピンを行うこともできるがレベル認定の規定の2回転を行う前に体勢が崩れてしまい、レベルを取りこぼすことも多くプログラムに取り入れていなかったが、今回結衣はフリーの演技で用いている。ストレートラインステップシークエンスのレベル4をショートプログラムで、またサーキュラーステップシークエンスのレベル4ショートプログラムで獲得している。
結衣の演技が終盤を迎えた。結衣はスケートを上手に左足を軸にし、右足を上に高く上げる。今度は右足を軸に左足を上に高く上げる。右足を上げた時はその足首を右手で掴む。左足を上げれば左足の足首を掴む。結衣の動きにはまったく無駄がない。華麗である。
演技が終盤になると観客達は結衣の動きに合わせ、力強く拍手する。〝パチパチパチパチパチパチパチパチパチ〝結衣は最後の演技のスピンが始まった。上体を低くして、スケートを履いた左足を軸にして右足を素早いスピードで回転させる。〝クルクリクリクルクル〝。そしてその回転を止めた。結衣は満面の笑みで、両手を高く上げ、まるで白鳥が今から羽根を拡げて羽ばたくような態勢で体を停止した。観客の割れんばかり拍手。叫び声。それは結衣に対する励ましであり、感謝の表れであった。「結衣ちゃん、ありがとう。」
「結衣!」「結衣ちゃん、ありがとう。」
花束が観客席から場内の中へ投げ入れられる。至る所から投げ入れられた。結衣はその花束を拾った。結衣は感謝の気持ちを込めて、観客席に向かって頭を深く下げて挨拶をした。結衣は感激の余りに泣いていた。それは結衣が過酷な練習をしてきた。ことに対する自分の感慨深い思いと演技を全てやり終え、ミスもなく、完璧な演技をしたことに対する感激の涙であった。結衣は演技を終え、リンクから出て、文哉と史花の待つ控え場所に行った。結衣と文哉は抱き合った。二人の横には史花がいた。史花は結衣の背中に手を当てた。「結衣、よく頑張ったね。」文哉も結衣も泣いていた。史花は二人を温かい表情で見守っていた。
4日間に渡る競技も終わった。この大会で結衣は最高得点を獲得して、優勝したのであった。こうして結衣の全日本選手権大会は終わったのである。
結衣と文哉、史花の三人は宿泊施設としていた札幌グランドホテルへタクシーで向かった。
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