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8回目。恋と欲の境界が、溶けていく。指が覚えてる、それ以上のこと。
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「今日も、いっしょに行きますよね?」
涼真が、帰り際にさりげなく聞いてきた。
「……おう」
もう、断る理由がなかった。
俺はすでに、毎日、涼真の手のことばかり考えていた。
プレイルームに入る。
今日は、向こうの手がすでに穴から伸びていた。
(この手……もう、間違いない)
と俺は、確信する。
(昼間、書類を渡してくれたときと、同じだった)
迷いはない。
俺の手は、まっすぐその手を包み込んだ。
向こうも、自然に指を絡め返してくる。
その柔らかい指の腹が、俺の掌をそっとなぞる。
同時に、乳首とお腹も露出してくる。
唇を寄せ、そっと舐めると、
向こうの腹筋がぴくんと跳ねた。
(可愛い……)
その反応が、妙に心をくすぐった。
「は……ぁ、ん……」
壁の奥で漏れた声は、もう“涼真の声”としてしか聞こえない。
乳首を吸いながら、もう一方の手で腹を優しく撫でる。
くびれにそって、指先がすべる。
腹の奥がくすぐったいのか、腰がびくんと浮く。
俺は、絡めた手をそっと引いた。
(……もう、いいだろ)
自分の膨らんだ下半身に、その手をのばす。
先っぽが滲んでいる。まだパンツ越しだけど、もう我慢できそうにない。
そのとき。
壁の向こうから、人差し指がツイッと動いて、
俺の手の甲をやさしく撫でてくる。
(……見てる。わかってる)
それが、背中を押した。
パンツを少しずらして、直接、手で自分を包む。
ぬる、と熱が走る。
壁の向こうでは、涼真の肌が火照って揺れている。
乳首を舐めながら、
手でお腹を撫でながら、
そして自分自身をゆっくり擦り上げる。
壁越しなのに、一体感があった。
まるで、向こうからも愛撫されているみたいに。
涼真の息づかいが、間の壁を通して伝わってくる。
「んっ……あ、っ、せん……ぱい……」
その声を聞いた瞬間――
俺の腰が、びくんと跳ねた。
熱が、こみ上げる。
俺は達してしまった。
プレイが終わったあと。
壁の向こうの手が、そっと俺の手をなでる。
そして、指を絡めて、離さない。
(……なあ、涼真)
俺は、心の中で呼びかける。
(もう、わかってるんだ。この指が、お前だってことくらい。いくら鈍感な、俺だって……)
◆
プレイルームを出て、俺は脱衣室でそっと深呼吸した。
(また今日も……抜いちまった。涼真と来てるのに)
この店で。
男の乳首で。
いや、涼真の――
(やばい……顔、合わせられねえ)
服を着る手が、震えていた。
もう、これはただの風俗プレイじゃない。
「快楽の記憶」が、
「お前との記憶」に、変わってしまった。
抜いたのは、自分の手じゃない。
お前の手が、俺を抜いたんだ。
◆
ロッカーから私物を取り出し、
スタッフの案内で待合室へ向かう。
涼真はすでに、ソファに座って待っていた。
「お疲れさまでした~!」
相変わらずの明るい笑顔。
でも、俺の目は合わない。
合わそうとすると、心臓が跳ねる。
「どうでした?」
「……ああ、まあな」
「ふふっ、今日は、すっごく反応良かったなぁ。
途中、なんか壁の向こうから……すっごい“熱”が伝わってきて」
「……そうか」
「えー? なんか、先輩、いつもより落ち着いてますね」
(いや、落ち着いてない……。むしろ逆だ)
涼真が、隣に座ってきた。
ソファのクッションが沈み、
太もも同士が少しだけ触れる。
そのぬくもりが、さっきのプレイを思い出させる。
「先輩、なんか顔赤くないですか? どうしたんですか~?」
「……別に」
「えっ? もしかして……何かしたんですか?♡」
肩にぽん、と軽く手を置かれ、
耳元でふざけた声がささやく。
「……」
答えられなかった。
恥ずかしすぎて。
「ふふっ、答えられないってことは、イっちゃいましたね?」
耳元で囁かれ、へなへなと力が抜ける。
そして、涼真がにこっと微笑みかけてきたとき、
どうしようもなく、愛しく思った。
(……次も、来るよ)
声に出しては言えないけれど、心で思う。
(俺、もう、お前に落ちてる……)
涼真が、帰り際にさりげなく聞いてきた。
「……おう」
もう、断る理由がなかった。
俺はすでに、毎日、涼真の手のことばかり考えていた。
プレイルームに入る。
今日は、向こうの手がすでに穴から伸びていた。
(この手……もう、間違いない)
と俺は、確信する。
(昼間、書類を渡してくれたときと、同じだった)
迷いはない。
俺の手は、まっすぐその手を包み込んだ。
向こうも、自然に指を絡め返してくる。
その柔らかい指の腹が、俺の掌をそっとなぞる。
同時に、乳首とお腹も露出してくる。
唇を寄せ、そっと舐めると、
向こうの腹筋がぴくんと跳ねた。
(可愛い……)
その反応が、妙に心をくすぐった。
「は……ぁ、ん……」
壁の奥で漏れた声は、もう“涼真の声”としてしか聞こえない。
乳首を吸いながら、もう一方の手で腹を優しく撫でる。
くびれにそって、指先がすべる。
腹の奥がくすぐったいのか、腰がびくんと浮く。
俺は、絡めた手をそっと引いた。
(……もう、いいだろ)
自分の膨らんだ下半身に、その手をのばす。
先っぽが滲んでいる。まだパンツ越しだけど、もう我慢できそうにない。
そのとき。
壁の向こうから、人差し指がツイッと動いて、
俺の手の甲をやさしく撫でてくる。
(……見てる。わかってる)
それが、背中を押した。
パンツを少しずらして、直接、手で自分を包む。
ぬる、と熱が走る。
壁の向こうでは、涼真の肌が火照って揺れている。
乳首を舐めながら、
手でお腹を撫でながら、
そして自分自身をゆっくり擦り上げる。
壁越しなのに、一体感があった。
まるで、向こうからも愛撫されているみたいに。
涼真の息づかいが、間の壁を通して伝わってくる。
「んっ……あ、っ、せん……ぱい……」
その声を聞いた瞬間――
俺の腰が、びくんと跳ねた。
熱が、こみ上げる。
俺は達してしまった。
プレイが終わったあと。
壁の向こうの手が、そっと俺の手をなでる。
そして、指を絡めて、離さない。
(……なあ、涼真)
俺は、心の中で呼びかける。
(もう、わかってるんだ。この指が、お前だってことくらい。いくら鈍感な、俺だって……)
◆
プレイルームを出て、俺は脱衣室でそっと深呼吸した。
(また今日も……抜いちまった。涼真と来てるのに)
この店で。
男の乳首で。
いや、涼真の――
(やばい……顔、合わせられねえ)
服を着る手が、震えていた。
もう、これはただの風俗プレイじゃない。
「快楽の記憶」が、
「お前との記憶」に、変わってしまった。
抜いたのは、自分の手じゃない。
お前の手が、俺を抜いたんだ。
◆
ロッカーから私物を取り出し、
スタッフの案内で待合室へ向かう。
涼真はすでに、ソファに座って待っていた。
「お疲れさまでした~!」
相変わらずの明るい笑顔。
でも、俺の目は合わない。
合わそうとすると、心臓が跳ねる。
「どうでした?」
「……ああ、まあな」
「ふふっ、今日は、すっごく反応良かったなぁ。
途中、なんか壁の向こうから……すっごい“熱”が伝わってきて」
「……そうか」
「えー? なんか、先輩、いつもより落ち着いてますね」
(いや、落ち着いてない……。むしろ逆だ)
涼真が、隣に座ってきた。
ソファのクッションが沈み、
太もも同士が少しだけ触れる。
そのぬくもりが、さっきのプレイを思い出させる。
「先輩、なんか顔赤くないですか? どうしたんですか~?」
「……別に」
「えっ? もしかして……何かしたんですか?♡」
肩にぽん、と軽く手を置かれ、
耳元でふざけた声がささやく。
「……」
答えられなかった。
恥ずかしすぎて。
「ふふっ、答えられないってことは、イっちゃいましたね?」
耳元で囁かれ、へなへなと力が抜ける。
そして、涼真がにこっと微笑みかけてきたとき、
どうしようもなく、愛しく思った。
(……次も、来るよ)
声に出しては言えないけれど、心で思う。
(俺、もう、お前に落ちてる……)
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