元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十章

388 強い味方って?

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シュンはその後、無事ジェットイーグルと契約をした。してしまった。

従魔術が今よりずっと広がっていた頃でも、ジェットイーグルとは契約し難いと有名だった。

怪我を治療してくれたという恩義を感じていたということもあるだろうが、それだけではジェットイーグルの方から契約を願い出たりしない。それ以前にジェットイーグルの方から願い出たなんて聞いたことがない。

絶対的な強者であっても、挑むのがジェットイーグルの性質だ。対等はあっても、決して下にはつかないのが当然だった。

そんなジェットイーグルが、力も経験もない子どもと契約する。コウヤはそれがユースールの子ども達というのが、なんだか誇らしかった。

そして、他の子ども達も、何度か子どものジェットイーグルと会う内に、それぞれ、気の合うものが出来たらしい。

半月もすると、子ども達は全員契約を済ませていた。コウヤはこの頃から王都とユースールを行き来し始めていたため、久しぶりに道端で顔を合わせた子ども達に報告されて驚いた。

「もう契約もしちゃったの?」
「うんっ。けど、お母さんたちにもナイショなのっ」
「えっ、どうやって? 森にみんなだけで行ってるの?」

フィトが得意げに胸を張るのを見て、コウヤは苦笑する。この間までは、きちんと大人の護衛を見つけて森に出ていたはず。内緒になんて出来ないだろうと不思議に思ったのだ。

ヨクトがへへんと自慢げにその手を暴露する。

「いや、オレらだけだと、門番の兄ちゃんが出してくれねえもん。まあ、門出る時だけその辺のメンドくさがりな兄ちゃんを捕まえて、後は自由にってのもやってるけどなっ」
「……そう……気を付けてよ?」
「おうよ!」

シュンがジェットイーグルと知り合った時も、その手を使ったらしい。だから、大人にジェットイーグルのことは知られていなかった。

「大丈夫だよ~。最近は、強い味方をつけたから~」
「そうそうっ。マナくんってば、やぱり頭良いんだよね~」

細工師の息子であるマナルトが、フィトに褒められて、照れ臭そうに笑いながら頭を掻く。

「おにいちゃんは、ヨウリョウがいいんだよ?」
「そっか。サフィの方が頭いいねっ」
「えへへ」

マナルトの妹であるサフィラが可愛らしく笑った。それに気を取られて、曖昧になってはいけないと、コウヤは尋ねる。

「強い味方って?」
「ユスト姉さまが多いけど、神官さまたちがいいよって言ってくれたの。神官さまたちも、森でくんれんするついでにって。お母さんたちにも、ちゃんとナイショにしてくれてるんだよっ」
「神官様たちがいっしょだって言うと、母ちゃんたちも、それならいいって言うしなっ」
「あ~……なるほど」

ユストは、子ども達を従魔術師として育てるつもりだろうし、神官達はこの才能の塊みたいな子ども達に興味が湧いたのだろう。鍛えたいんだろうなと、コウヤは感じてしまった。この見解は間違ってはいないはずだ。

神官達が秘密主義なのは元々なので、彼女たちの親や他の大人達に知られないようにするのも神官達にとっては、難しいことではない。何より、秘密に出来るということは、怪我などもさせないということ。それだけの自信と実力が、神官達にはある。

「それでねっ。コウヤお兄ちゃん、ちょっと前に、キレイな羽根を飛ばして森で遊んでたでしょ?」

フィトがキラキラした目でコウヤに詰め寄ってくる。

「羽根……ああ、ナナイロのこと? 遊んで……調整してたんだけど……うん。そういえば、見てたね」
「あ、やっぱり、気付いてたんだ……」

シュンが肩を落とす。

ペン型ゴーレムである『ナナイロ』。これが出来たのはこのつい一週間前。その調整と、運用について、森で飛ばしながら確認していたのだ。

その時、ユストと子ども達の視線をしっかりと感じていた。気を遣ってくれたのだろう。調整するのに気になったその都度、手を加えている様子を見てか、邪魔をしないようにと声もかけずに距離もしっかり保って見ていたようなのだ。

「流石に森の中だからね。周辺の安全確認のためにも、索敵スキル、気配察知スキルは発動させたままにしてるもの」
「すっごいはなれてたのにぃ。コウヤお兄ちゃんって、やっぱりすごいね」
「ふふ、ありがとう」

フィトが素直に感心する。すごいの一言で納得し、色々追及してこないのは有難い。

「それで? ナナイロがどうかした?」
「あ、うん」

答えるのはシュンのようだ。

「空中で、ならばせて飛ばせたり、こうげきの仕方とか、すごく……カッコよかったから……ぼくたちも、ブラッドを中心にして、飛び方とか考えてみたんだ」

ブラッドとは、あの特殊個体のジェットイーグルのことだ。シュンは名付けセンスが良いらしい。

昔は、分かりやすい名、見た目や得意な能力に関する名前を付けるのが流行った。それに倣ったため、コウヤもパックン、ダンゴ、テンキという名前を付けたのだ。

特に今思うところはないが、昔はそれが当たり前だったとはいえ、パックン達に不満はないだろうかと少し気になってしまう。

そんな事を気にしていると、子ども達はフィトと並んで、憧れを映す目でコウヤを見上げ、詰め寄っていた。

「そうそうっ。『飛行形態B』とか『攻撃形態ゼロ』とかって言ってたよね!!」
「ならび方が、スッ、スッて変わるやつ! カッコよかった!」
「変わる時もね~。ぶつかったりしないのが、面白くて~」
「カタチがかわるの、すごいの!」
「あれを今、ぼくたちもやってみてるんだ。他の子たちも、もう少しで成体になるみたいだから、もう少ししたらコウヤ兄も見て」

いつもは冷静なシュンも、興奮気味だ。そこには、絶対にやり遂げてみせるという気概があった。

そして、それから半年。

その成果を大人達の前でも披露することとなったのだ。

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二日空きます。
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