夢の橋

夢人

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伯爵11

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 久しぶりに総司を見舞いに訪ねた。源内の実験室の中に手術用のベットがありそこに寝かされている。
「どうだ?」
「今日ここから出る」
「もう糸は抜いた?」
「まだ。でもここは好きじゃない。猫や犬をここで解剖しているのよ。それにあの子」
と言いかけて口をつむぐ。
「総司もトラベラーと聞いたがどの時代から来た?」
 伯爵の話では時間の壁が開くのは同じ時期であることが多いと言っていた。案外総司は同じ時期の同じ場所にいる可能性が高いような気がしていた。総司は立ち上がると目を閉じた。まだ痛いのだ。それで私が肩を貸してゆっくりベットに座る。
「1991年よ」
 やはり同じだ。
「どこにいる?」
「蒲田」
「私も同じだ。そこに時間の割れ目があるのだ。私は会社に入って1年目だ」
「私は登校拒否の閉じこもりの高校生よ」
と言って左腕を見せた。
「3度手首を切って自殺した。その3度目で死ぬはずだった。それがその時ベットの中で初めて伯爵のところに来た」
 そうか。妙に身近な人に会ったような気がした。
「好きな人は?」
「そんな人に会ったこともない。暗い女だと怖がられている。親も見捨てているよ」
「なぜ総司に?」
「私が愛した人。でも漫画の総司だけどね」
「私も就職浪人をして100社面接して落ちた時電車に飛び込もうと踏切の前に立っていた」





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