夢の橋

夢人

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伯爵18

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 あの総司との真剣勝負で総司自体時間の隙間を作ることができるようになったようだ。それで伯爵は総司を連れて歩くようになった。今唯一斎藤一と戦える相手なのだ。伯爵は今商人のルートで船の手当てをしている。岩倉の圧力でなかなか船を見つけられない。
 最近地下室に降りるようになっている。今日は西郷は黒揚羽と話している。
「鹿児島に戻ることでさらに死相は深刻になります」
と黒揚羽が占っている。
「やはりそうか?だが運命と言うのは逆らえないようにできているのだ」
 西郷自身は鹿児島に戻ることを決めている。私を見つけたのか座るように促す。源内の娘が私の杯を運んでくる。
「鼠はトラベラーと聞いているがおいどんは歴史ではどうなっているのか?」
 私は言葉が詰まって黒揚羽を見る。
「心配はいらないわ。鼠が見た歴史もここの結果でまた変わるのよ。でも運命的な流れは私の経験では変わらないの」
「そうですか?私が学んだ歴史では西南の役で西郷殿は亡くなられます」
「やはりな。頭の中ではそう理解できているのだがな」
「頭で理解できても思い道理に出来ないのが運命です」
 私はこの世界ではどういう運命にあるのどろうか。これは伯爵が言っていたのだが、この二つの世界は移動するごとに記憶はほとんど残らないと言う。つまり今鼠の脳の中には古い記憶しかないようだ。だが本当に残せないかと言うことは科学的には証明されていないそうだ。
「おいどんにも記憶がある。薩長連合と言うのは知っているな?」
「はい」
「あの時まで薩摩は長州を許すつもりはなかったのだ。だがその流れを坂本龍馬と言う男が狂わされた」
「なぜですか?」
「龍馬は歴史を変えたのよ。あなたのようなトラベラーだったかもね?でも消される運命となった。歴史を変えたが元に戻ろうとする力が歪みを埋めようとした」
 もし総司が斎藤一を切ったら・・・。




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