夢の橋

夢人

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総司3

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 私がどれほどの間隔で夢の橋を行き来してえいるのか分からない。どうも向こうとここは時間の早さが違うようだ。まるで夢の中のようで瞬間のスナップ写真が連なっているのだ。
「伯爵、最近は総司や蜘蛛を見ないようですが?」
「何を言っているのだ?ずいぶん鼠を探したのだぞ」
 伯爵は書斎の本棚から手紙を出してきて見せる。
「これが来たのは3か月前だ。それから1月後に二人は船に乗った。本当は私も行きたかったのだが、私は岩倉に見張られていて身動きが取れない。岩倉が知らないのは君たちだけだからな。思ったように郷里に着いた西郷は平安ではおられないようだ。恐らく向こうの世界が忙しかったのだろう」
 確かにしばらく総司に会っていないような気がした。ドアが開いて源内が入ってきた。
「調べて見ましたが川路大警視の側にいる特捜チームが20人ほど消えています」
「暗殺集団の生き残り達を川路は飼っているのだ。昔私の仲間だった男たちもいる。新選組と戦っていた時は同じ目的だった」
 伯爵が徳川と戦ってきた過激な公家であったと聞いている。
「私も行かせて下さい」
「それは無理だろう。君が着くまでには二人の役目は終わっているかもしれないよ」
「役目?」
「まず暗殺団の存在を知らせること。それと暗殺団から西郷を守ることだ」
 二人では無理だ。総司が殺されてしまう。
「斎藤一も行ったのですか?」
「いや、彼は東京に残っている。彼は私達らの要注意人物の監視だ」
「試して見る価値はありますね?」
 源内が机の横の椅子に掛ける。
「これはあくまでも私の推論です。鼠は未来からここを目指してやってきています。もし目的地が鹿児島であれば船に乗らなくても行けるはずだと思うのですが?」
「私はどうすれば?」
「総司を思い続けるのだよ」
「もし着いたら?」
「戦いが始まる前に戻ってくるのだ」







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