夢の橋

総司4

　思い通りの夢を見ることは至難の業だ。それで源内の意見を思い出して総司のことばかり考えた。そのうちに無意識に総司の真剣で斎藤一で戦った瞬間を思い出した。それまでどれだけの時間が経ったのか分からない。時間の壁を通り抜ける時と同じに風景が歪む。
「何者！」
と言うなり真剣が首筋に当てられた。総司だ。
「どこから降ってきた？」
　蜘蛛も手裏剣を構えている。ここは農家の庭先だ。
「時間の隙間に入った」
「どうして私にぶつかるの？」
「ここに来るには総司を思い続けろと源内に言われたのだ」
「気持ち悪い人ね？」
　相変わらず嫌われているようだ。
「よかった。人手不足で困っていたのだ」
と蜘蛛が笑う。
「川路が暗殺団を送り込んだのだ」
「知っている。僅か早く鹿児島に付いて西郷殿に会った。伯爵からの伝言も伝えたが下がれる状況ではなくなっているようだ。すでに１週間前に学校で暗殺団に襲われた。こちらも薩摩の藩士を警備に置いて難は逃れた。今も壁の周辺には薩摩の藩士が守っている。総司の剣もなかなかのものだよ」
　だが総司は私を見ようとしない。
「私も伯爵から伝言を貰っている。会えないか？」
「よし連れて行こう。総司は力を合わせるのだ」
　蜘蛛は総司と私がトラベラーとは知っているが総司が女だとは知らない。