夢の橋

夢人

文字の大きさ
上 下
34 / 182

総司14

しおりを挟む
 戻ってきた源内が蜘蛛の肩に突き刺さった弾丸を抜く。隣の部屋も居抜きで借りた。久しぶりの総司も戻って来ている。私の横に座るのも気にならないらしい。
「まず源内の報告から聞こう?」
と伯爵が口を開く。博士は疲れたのか壁にもたれている。
「もう3度侍従長に会っています。すでに伯爵の手紙は渡しています。今日は返事をもらってきました。それを狙ったのか斎藤一が仕掛けた来ました。総司と剣を交えましたが妙なのです?」
「妙?」
「斎藤一はなぜか総司を切る気迫がないのです」
「同じ新選組だったから何かあるのだろうな?」
 もちろん総司は気づいた様子がない。伯爵が手紙を受け取り開く。
「士族の反乱に付いて岩倉に質すようだ」
「だが侍従長が危ないのです」
 私が口を挟んだ。
「しばらく私と博士は屋敷の地下室に籠る。手はずを整えてくれ。残りはここにしばらく潜んでいてくれ。侍従長の警護は黒揚羽と蜘蛛に任せたい。源内と総司は明日私の手紙を届けてくれ」
 私は不満そうに伯爵を見る。
「鼠はあの暗殺団を見張るのだ。侍従長をやるとなると彼らを使うはずだ。鼠はこの短銃を使えるか?」
「はい。操作なら」
「怪我の状態では小刀は無理だろう。万が一の時にはこれを使うのだ」
 その夜蜘蛛が屋敷の抜け道を抜けて伯爵と博士を地下室に連れて行く。黒揚羽が表門に同じ時間に爆弾を仕掛けることになっている。
「総司元気だったか?」
「ええ、でもまだ斎藤一に勝てる自信がない」


しおりを挟む

処理中です...