夢の橋

夢人

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総司16

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 1時間前に配置完了した。いつも座るカウンターの席の横に洋装の黒揚羽。部屋の中央にやはり背広を着た蜘蛛。私は入口の側で侍従長の逃げ道を確保する役だ。総司は仕込み杖を持ってl皇居の通用口の反対側の路地の角の座り込んでいる。2時半になって20人ほどの客が入っている。暗殺団には女がいないから男を見渡している。黒揚羽の反対のカウンターに座っている官服の男が怪しい。それと私の前の丸テーブルの3人の侍。
 その時判で押したように侍従長がカウンターの定位置に掛ける。マスターが声をかけている。ドアが閉まらないうちにやはり官服を着た男が2人話しながら入ってきて私の横に座る。そのうちの一人が鹿児島の居酒屋で見た。計6名がカフェの中にいることになる。蝙蝠の目が頷いている。
 着物姿の女性がコーヒーを運んできて侍従長と小声で話している。常連なのだ。いつ仕掛けるのか。黒揚羽が大胆にも席を詰めて侍従長に話しかけている。遂に彼女が耳元に何か囁いた。侍従長が笑いながらどう思ったのか席を入れ替わった。カウンターの男が立ち上がった。確かに短刀を抜いているが、目を押えて蹲った。黒揚羽が針を噴いたのだ。蜘蛛が中央の3人に飛びかかった。
 私も慌てて短刀を抜いて隣の男の背中突き刺すがもう一人が抜き身を突き出す。また刺されたのか。だが傷のせいで軽く刺した程度で腰が引けていて目の前の抜き身がすり抜けた。
 黒揚羽が侍従長と話していたのかその間を背中に侍従長を庇い走り抜ける。
「鼠扉を開けろ」
 蜘蛛の声が聞こえる。跳ね上がると扉を押す。黒揚羽、侍従長と順に飛び出す。黒揚羽の前に通りかかった官服が2人切りかかる。そこに総司が飛び出してくる。ほとんど剣先が見えないが2人の官服が倒れている。今度は5人が通用口から抜刀して走ってくる。暗殺団は通用口に戻ると思っていたのだ。だから向こう側に人数を配置していたようだ。
 総司の剣がいつになく軽妙だ。5人を相手しても触るように腕を切ったり足を切ったりしている。今までのような真剣勝負の力みがない。私は侍従長を送り出して倒れ込んでいる。待たせていた人力車に乗せているのは源内だ。倒れた私が見たのは生垣に座り込んでいる義足の隊長だ。両手で短銃を構えている。咄嗟に私は懐の短銃を抜いてぶちかました。




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