夢の橋

夢人

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出会う17

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 たかは逃げる様相もない。もちろん総司に切りつけることもない。その朝伯爵は私とたかを机の前に呼んで大久保利通が岩倉具視と極秘で料亭で会うと伝えた。その料亭は伯爵と近い持ち主が経営していた。それで隣の部屋で話の成り行きを聞いてきてほしいと言われた。どうも前回伯爵が大久保と会ったことに関係があるようだ。
「私が代わりに行く」
と総司が言ったが伯爵が認めなかった。
 私とたかはアベックの両家の見合いとしてその料亭に入った。話は通じているらしく食事が運ばれて来たら誰も来ない。隣の部屋の廊下には5人の警官が立っている。欄間の隙間から私とたかが覗く。もしたかが岩倉に通じたら私は殺されるだろう。互いに懐に短銃を持っているが撃ちあったら必ず負ける自信がある。
 テーブルに大久保と岩倉が座っている。
「伯爵が天皇を通じて西郷との衝突を避けてくれと言ってきている」
 大久保が伯爵と会ったと明かしている。
「・・・」
 まだ岩倉は口を開かない。大久保の意図が見えないので慎重なのだろう。
「村山たかを伯爵邸に入れてたそうだな。捕まって私に引き渡してもいいと言っている。たかに要人を暗殺させたのも私も知っている。これで岩倉を弾劾してくれと?」
 ちらりと隣のたかを見る。しばらく岩倉は口をつぐんで天井を見ている。
「私が仕掛けた西郷を譲ろう。もうすぐ征伐軍を出す。それを任せよう。今西郷たちを消さないと私達は追い落とされる」
「分かった。たかを引き渡そう。この際殺した方がいいな?」
 その後たかと伯爵邸に戻る。伯爵はたかを使ったのは危険すぎた。書斎に入ると私は懐の短銃を握った。
「岩倉の本性を見せたかったのね?私大久保のところに行きます」
「もちろん渡す気などないさ」
 伯爵は笑っている。






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