夢の橋

夢人

文字の大きさ
上 下
73 / 182

幕末の終わり14

しおりを挟む
 今日は伯爵は長姉に連れられて馬車で御所に出かけた。今回は執事が御者と並んで警備となった。長姉空は私達は単なる厄介者としか映っていないようだ。仕方がないのでみんなはごそごそ御所に出かけた。私もごねて人力車を頼んで総司が付き添ってくれた。
「悪いな?」
「たまには鼠を助けるのもいいことかもね?」
 私は懐に短銃を忍ばせている。
「この駐車場がいいな?」
「どうして?」
「さすがに殺し屋でも御所には入られないだろう?ここなら必ず戻ってくる」
「そうね」
 見渡したところ蜘蛛たちの姿がない。車夫は休憩に行き総司と並んで座る。だが総司はいつでも飛び降りて剣を持って走れる体勢でいる。
「伯爵は誰に会うと聞いている?」
「極秘にしている」
 府知事も一度も名を言わなかったし伯爵も聞かなかった。
「また戦争になるのか?」
「最後の戦いになるだろうな?」
 私が総司の利き手ではない手を握る。
「向こうではもう抱いたの?」
「いや、向こうの彼女は病気なのだ」
「私も人切の病気、取り扱いには気を付けてね鼠?」
 殺気を感じて慌てて手を引いた。だが顔は笑っている。総司は立ち上がると歩きはじめる。背広を着た男が5人が歩いてくる。その後ろに伯爵と長姉の姿が見える。私は短銃の引き金に手をかけた。蜘蛛の姿が生垣から見えた。その後ろに狙いを定めているたかがいる。
「撃つな!」
 斎藤一の声がして警官が10人ほど入ってきた。
「この男達は短銃を持っていない。罠だ」
 その声を聞くと男達は元来た道を戻っていった。






しおりを挟む

処理中です...