夢の橋

夜明け前7

　間宮部長は元々探偵会社にいたのを今の調査部の主任として転職している。調査部では前社長の不正を暴いた形で新社長に課長として抜擢されている。だが週刊誌では前社長の出戻りの長女を抱き込んで仕掛けたと言う噂がある。今回の整理された会社にはそこから３年前に転籍してきている。開発部課長として不良債権の調査をしていたようだ、
　だが会社整理の直前に当時の大型プロジェクトのバックリベートの５億が消失しているのだ。記録では当時の開発部長が着服とあるが彼も自殺してもういない。ここ１週間すでに辞めている関係者５人に当たり実際のバックリベートの担当者がこの課長だと分かった。だが彼が提出した不良債権の調査には明確に開発部長を名指ししている。
　最近東と飲むことが増えた。大半５時から８時までと早い時間だ。東が間宮と会う前の時間つぶしだ。酷い時はラブホテルの前のラウンジで飲むこともある。今夜はそうである。池袋のホテルの前にいる。
「ギブ＆テイク分かってるよね？」
「約束する」
「君の想像通り５億は彼が奪ったわ。当時の部長は５億のバックリベートの承認印は付いているけど、土地売却会社はその取引の日に倒産している。その社長はその金をもって海外に逃げた。仕組んだのは間宮よ」
「凄い奴だな？」
「奥さんはその話を間宮から聞いているけど５億がどこにあるか分からない。報告はいつまで？」
「まだ時間はある」
「待っていて」
と言うと東は金を払ってラウンジを出た。ホテルの前に間宮が手を上げている。
「今日は遅かったね？」　
　総司がウインナーを剥いてくれる。
「この子ずいぶん病気が改善したって」
とおばさんが嬉しそうに言う。