夢の橋

夜明け前22

　私は再開した新聞社で見習いとして働くことになった。総司は斎藤一と伯爵の庭で2刻稽古をするようになった。
　城山落ちる。西郷隆盛切腹。その文字が新聞に踊っている。長い幕末が終わった。伯爵は執事を連れて枢密院に向かった。私は新聞を販売所に届ける馬車に乗って配りまわる。最近は総司は一に盗られたと諦めている。だが一を嫌っているわけではない。向こうの総司が私のものならこちらの総司は一に譲るべきだと思っている。
「怪我は治ったのですか？」
　珍しく村山たかが洋装で新聞社に入ってくる。最近は蜘蛛にも手を出したという噂もある。
「あのスパイの女の事務所を教えて？」
「どうするのですか？」
「連れて行ってよ」
　強引だ。私は社員に声をかけて外に出る。
「最近総司は斎藤一とべったりよね？」
「そうですか？私は新聞社で手一杯で」
「私が相手してあげようか？」
　私はたかと言う女がよく分からない。女の武器を平然と使う。でも決めた男には異常に尽くす。そう言う育て方をされたからだろうか。
「ここだよ」
「あの女は昔から岩倉の女を鼻にかけてチームを作って仕事をしていたわ。私の背中から短銃を撃ったこともある。伯爵を襲ったのも私に対する嫌がらせでもあるの」
　まるで自分の部屋に入るように扉を押した。私は慌てて後ろから追いかける。扉の向こうにはあの女と男が1人驚いた顔で見た。瞬間2発の弾を撃った。男は立ち上がりも出来ず後ろに倒れた。女は短銃を取りだしたところで心臓を撃ち抜かれた。