夢の橋

夢人

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決心1

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 間宮部長の報告書を室長に提出して3日になる。バックリベート5億の疑惑は相手不動産会社の社長が海外逃亡をしたので真偽は不明とした。離婚裁判でも証拠は提出されておらず、本件と関係なしと判断されている。間宮が持っている他人名義のカードについては触れないこととした。
 私は総司のお母さんの内容証明を検討した。すでにこの問題は1年前から始まっておりビルの持ち主は事業の失敗でこのビルの売却を希望して立ち退きを要求している。もちろん拒否し続けているが、遂に裁判に持ち込まれるようだ。状況的に相手の弁護士は手順を踏んで追い詰めてきている。勝てる見込みはない。
 パソコンのニュースに目を止める。何だ?錦糸町のラブホテルに男性の死体。これは間宮部長だ。さらに詳しいニュースを探す。男が2日前9時に入室して女が9時10分に後から入った。だが朝従業員が10時に声をかけたらこの男性は一人で死亡していたとある。女性は20歳台の外人だ。
 私は東の席を探した。今日は朝から間宮部長に書類を届けに出かけている。私はメールを打った。
「どこかで会いたい」 
 5時にメールが帰ってきて直帰届を出して有楽町のカフェで会うことにした。
 ドアを開けると東は小瓶を飲んでいた。
「間宮に会えたか?」
「知っているくせに?」
「二人で飲んだ日だな?」
「あれからホストクラブに行った。夜は11時までそこにいてホストとホテルに泊まった」
「アリバイを作ったな?」
「詳しいことは後で話すわ」
 沈黙が流れて8時に別れた。
「残業?」
 暖簾を潜ると総司が1人でカウンターに立って客に応対している。私は背広を脱ぐとワイシャツを捲くって中に入りビールの栓を抜く。9時になると再び客の波が寄せてくるのだ。
「お母さんは?」
「腰がよくなくて」





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