夢の橋

夢人

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決心12

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 目が覚めるとやはり蜘蛛の姿がない。総司は飲み過ぎたのかまだ眠っている。私は書生姿になって新聞社に向かう。朝編集長に挨拶して机に向かい原稿の整理を始める。新しい編集長玄道が来て売り上げが増えている。
 玄道の意見でまだ高価な電話機が1台取り付けられた。その電話機が鳴って玄道が取る。私を覗いた全社員がこの時間にはそれぞれ官邸や警視庁に出かけている。
「よし分かった。鼠人力車を呼べ」
 私は契約している人力車を呼んできた。写真機は玄道が抱えて乗り込む。
「紀尾井坂に走れ!大久保が暗殺された」
 現在の千代田区紀尾井町清水谷になる。着いたときは警官が死体を運んでいる。知らせてきた記者もすでに現場にいる。私は警官に怒られながら写真を撮る。浪士の死体と警備の人間の死体が至る所にある。大久保はすでに運び出されている。私は丹念に浪士の顔を見て行く。玄道は記者を連れて大久保の遺体を追っている。
 たかの死体は見当たらない。聞き込みをすると見張りをしていた女や逃げた浪士もいると言う。たかが見張りをしていたとは考えにくい。
「鼠」
 どこからか声がする。振り返ると警官だ。
「孫六?」
「来てくれ?」
 私は写真機を担ぎ孫六の後を走る。半刻ほど走ったところの古い社に入る。血の臭いがする。莚に2人が寝かされている。蜘蛛は背中を切られているが死んではいない。隣はたかだ。右腕が付け根かから切り落とされている。
「蜘蛛が担いで背中を切られたがここに来た。私は逃げる蜘蛛を守ってここまで来た。一応の手当てはしている。ここにいてくれ。源内を呼んでくる」
 孫六は姿を消す。
「蜘蛛大丈夫か?」
「ああ、たかが腕を切られてそれを運ぶ出すときに切られた」
 背中の傷は深い。たかは意識を失っている。やはり伯爵に伝えるべきだったか。
 夕刻に孫六が源内を連れてきた。伯爵は枢密院に行ったままのようである。
「たかは出血多量で今晩が峠だ」




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