夢の橋

夢人

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日清戦争10

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 隣から男と女の抱き合う声がする。朝鮮人も呻き声はよく似たものだ。部屋中据えた臭いがする。李が新聞を運んでくる。伯爵は朝鮮語も読めるようだ。
「金玉均は日本に亡命した。公使は長崎に逃げたようだ」
 伯爵は新聞を置いてため息をついてそう言った。私と総司は李を口説いて朝鮮の着物を着て外に出た。このままいつまでもここにいるのは危険だ。まず外人記者クラブのあったホテルは中国の兵で囲まれていた。日本大使館は火災現場となっていてここは朝鮮の警察が囲んでいる。
「あのクラブは?」
「この事件の最中も盛況です」
と李が案内する。日本行の船も止まっているようだ。クラブに行くと提灯が明々と灯っている。通用口から花籠を持って李の後を入る。テーブル席には中国の軍人ばかりだ。女がステージで歌っている。李が手を引っ張る。
「ここから2階も見える」
 袁世凱が女を抱いて酒を飲んでいる。
「言葉を訳して?」
「日本大使館に火をつけたのは褒めるが、金玉均を逃がしたのはますいぞ」
「すいません」
 こちらを見たのはたかだ。
「これは朝鮮の警察からの報告だが、日本の伯爵が来ていたようだ。探し出して殺すのだ」
 不味い。慌ててクラブを出て娼婦屋にかけ戻る。
 戸に手をかけて慌てて止める。何と伯爵が裸で女に跨っている。
「どうしたの?」
「総司しばらく別の部屋に行こう」









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