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目を覚ました私は直ぐには動けず、このままマークの部屋で療養する事になった。兄妹から怒られた私は、暫く療養に専念する事を約束させられた。私が何度、無茶しないと言っても引き下がらなかった兄妹は、マークが確りと見てると言うと安心して学校に行った。ちょっと、その態度はあんまりじゃないかしら?
「私って、そんなに信用出来ないのかしら?」
「当然だろう。まだ髪の色も戻っていないしな」
そう言ってマークは、短くなった右側の髪を撫でる。自分でも、髪に視線を向け色を確認した。
確かにまだライトブラウンくらいね。もっと濃くなれば動けるはすなんだけど、何度も薬に頼る訳にもいかないものねぇ。それにしても長さがバラバラだと邪魔だわ。短い髪に長さを揃えようかしら?
長さの違う髪をどうするか悩んでいると、彼がベッドの脇に机を寄せその上に食事を乗せた。
「ほら、食事しないと体力つかないぞ」
言いたい事は分かるわよ。でもね?どうして貴方が私の口に入れようとしているのかしら?
「……自分で食べれるわよ」
「フラフラで見てられん」
いやいやいや。そうじゃないわよね?言葉が通じないって、こんな時に言うのかしらね。
彼の言葉を無視してパンを彼から取ろうとしたけど、あっさり躱されて驚いて開いた口に押し込まれた。
「ムグ……」
「クッ……そんなに嫌そうな顔をするな。なぁ、奥さん」
睨み付けると彼が私の事を奥さんと呼ぶ。彼の余裕な態度に余計に腹がたった私は、口を閉じるとこれで顔を背けて拒否を示した。口を開ければまた無理矢理入れそうだし、人をからかって遊んでるし……もう!
「悪かった。君から反応が返ってくる事が嬉しかったんだよ」
反応が返ってくる?言葉の真意が分からず首を傾げると、苦笑いした彼は私が寝ている間も話し掛けていたと言った。
「もしかしたらと思うと毎日、話し掛ける事を止められなかった。だが返事が聞こえない事が辛かった」
そう言われるとこれ以上、怒れないじゃない。
「でも、奥さんは気が早すぎるんじゃないかしら?」
「しぶといなぁ。素直に“はい”と言えないのか?」
「どうかしらね?」
「また、疑問形かよ」
大きなため息を吐きながら乱暴に頭を掻いた彼が、悔し気にドカッと椅子に座った。少し気まずい雰囲気を変えたくて、目を覚ましてから気になっていた事を尋ねた。
「そうだわ。テリーの主従契約相手って、どうなったのかしら?」
「あれな……フェンリルだった」
ある程度、予想はしていたけど、それでも思わず天を仰ぐ様に天井を見上げてしまう。彼の話では両陛下と謁見も済んでいて候補生を飛ばして試験もなしで入団の話も出たらしい。でも、弟の性格を考えると……
「入団、断りそうだけど?」
「その通りだ。ズルになるから候補生の訓練も試験も実力で受けると断った」
笑いながら頷いていた彼は、特別扱いは目立つからその方が良いと言う。そうよねぇ、嫉妬されたり絡まれそうだわ。話をしながらスープを飲もうと手を伸ばすと、彼はカップを下から支える様に手を添えた。
「これぐらい良いだろう。本当に落としそうなほどフラフラだぞ」
「……ありがとう」
持ちやすい様に持ち手付きのカップに入ったスープをゆっくりと飲み干す。パンやサラダもあったけどこれ以上は入りそうになかった。
「ふう……かなり体力も筋力も落ちたわね」
「そうか……」
「深刻な顔をしないでよ。明日には魔力は回復して歩けるわ」
黙ってしまった彼に掛ける言葉が見つからなくて困惑していたけど、フッと時計を見て自分と彼の仕事が気になった。治療院も気になるけどマークの仕事は何時からなのかしら?
「ねぇ、今日は仕事休みなのかしら?」
「うん?あぁ、今日は昼からだ。まだ、時間に余裕があるから気にするな」
随分のんびりだと思っていたら、午前中は座学が中心で午後からは実技の日らしい。日替りで内容が変わるため、一日でもサボると補習を受けないといけない決まりだとか。病気や怪我は治療師の診断書を提出すれば、テストを受けるだけで補習なし等、細かい規則を作って徹底させているなんて……
「元団員は反発しそうね」
「反発した者は全員つぶ……実技指導で分からせた」
今、“潰した”って言いかけたわよね?一体、何をしたのかしら。深く聞かない方が良いわね。
その後、私はまた陛下と謁見しないと知らされた。伯父の事で直接、話があるとか。緊張するから、もう陛下とは会いたくないし、伯父も捕まったのなら私はどうでも良いのだけど……
「今すぐではないが……まぁ、諦めろ」
彼に眉を下げて困った表情をされると、これ以上文句も言えなくて私は両手を上げて降参のポーズをした。
「はぁ……私は普通の生活がしたいのに……」
「それは無理だろ?」
……即答で否定しないで頂戴。回復したら絶対にやり返してやるわよ。
「私って、そんなに信用出来ないのかしら?」
「当然だろう。まだ髪の色も戻っていないしな」
そう言ってマークは、短くなった右側の髪を撫でる。自分でも、髪に視線を向け色を確認した。
確かにまだライトブラウンくらいね。もっと濃くなれば動けるはすなんだけど、何度も薬に頼る訳にもいかないものねぇ。それにしても長さがバラバラだと邪魔だわ。短い髪に長さを揃えようかしら?
長さの違う髪をどうするか悩んでいると、彼がベッドの脇に机を寄せその上に食事を乗せた。
「ほら、食事しないと体力つかないぞ」
言いたい事は分かるわよ。でもね?どうして貴方が私の口に入れようとしているのかしら?
「……自分で食べれるわよ」
「フラフラで見てられん」
いやいやいや。そうじゃないわよね?言葉が通じないって、こんな時に言うのかしらね。
彼の言葉を無視してパンを彼から取ろうとしたけど、あっさり躱されて驚いて開いた口に押し込まれた。
「ムグ……」
「クッ……そんなに嫌そうな顔をするな。なぁ、奥さん」
睨み付けると彼が私の事を奥さんと呼ぶ。彼の余裕な態度に余計に腹がたった私は、口を閉じるとこれで顔を背けて拒否を示した。口を開ければまた無理矢理入れそうだし、人をからかって遊んでるし……もう!
「悪かった。君から反応が返ってくる事が嬉しかったんだよ」
反応が返ってくる?言葉の真意が分からず首を傾げると、苦笑いした彼は私が寝ている間も話し掛けていたと言った。
「もしかしたらと思うと毎日、話し掛ける事を止められなかった。だが返事が聞こえない事が辛かった」
そう言われるとこれ以上、怒れないじゃない。
「でも、奥さんは気が早すぎるんじゃないかしら?」
「しぶといなぁ。素直に“はい”と言えないのか?」
「どうかしらね?」
「また、疑問形かよ」
大きなため息を吐きながら乱暴に頭を掻いた彼が、悔し気にドカッと椅子に座った。少し気まずい雰囲気を変えたくて、目を覚ましてから気になっていた事を尋ねた。
「そうだわ。テリーの主従契約相手って、どうなったのかしら?」
「あれな……フェンリルだった」
ある程度、予想はしていたけど、それでも思わず天を仰ぐ様に天井を見上げてしまう。彼の話では両陛下と謁見も済んでいて候補生を飛ばして試験もなしで入団の話も出たらしい。でも、弟の性格を考えると……
「入団、断りそうだけど?」
「その通りだ。ズルになるから候補生の訓練も試験も実力で受けると断った」
笑いながら頷いていた彼は、特別扱いは目立つからその方が良いと言う。そうよねぇ、嫉妬されたり絡まれそうだわ。話をしながらスープを飲もうと手を伸ばすと、彼はカップを下から支える様に手を添えた。
「これぐらい良いだろう。本当に落としそうなほどフラフラだぞ」
「……ありがとう」
持ちやすい様に持ち手付きのカップに入ったスープをゆっくりと飲み干す。パンやサラダもあったけどこれ以上は入りそうになかった。
「ふう……かなり体力も筋力も落ちたわね」
「そうか……」
「深刻な顔をしないでよ。明日には魔力は回復して歩けるわ」
黙ってしまった彼に掛ける言葉が見つからなくて困惑していたけど、フッと時計を見て自分と彼の仕事が気になった。治療院も気になるけどマークの仕事は何時からなのかしら?
「ねぇ、今日は仕事休みなのかしら?」
「うん?あぁ、今日は昼からだ。まだ、時間に余裕があるから気にするな」
随分のんびりだと思っていたら、午前中は座学が中心で午後からは実技の日らしい。日替りで内容が変わるため、一日でもサボると補習を受けないといけない決まりだとか。病気や怪我は治療師の診断書を提出すれば、テストを受けるだけで補習なし等、細かい規則を作って徹底させているなんて……
「元団員は反発しそうね」
「反発した者は全員つぶ……実技指導で分からせた」
今、“潰した”って言いかけたわよね?一体、何をしたのかしら。深く聞かない方が良いわね。
その後、私はまた陛下と謁見しないと知らされた。伯父の事で直接、話があるとか。緊張するから、もう陛下とは会いたくないし、伯父も捕まったのなら私はどうでも良いのだけど……
「今すぐではないが……まぁ、諦めろ」
彼に眉を下げて困った表情をされると、これ以上文句も言えなくて私は両手を上げて降参のポーズをした。
「はぁ……私は普通の生活がしたいのに……」
「それは無理だろ?」
……即答で否定しないで頂戴。回復したら絶対にやり返してやるわよ。
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