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   いつものように裏門から出ようとしたところを琢磨さんに捕まった。

   「こんにちは」

   いぶがしげに見るあたしをよそに琢磨さんはあたしに近付いて来た。

   「どうして逃げるの?」

   一歩づつ後づさりながら、学校に逃げ込もうとしているとさせまいとして腕を掴まれた。

   「君に聞きたい事があるんだ。出来れば2人だけでね」

   獲物を捕獲するような目に身震いしたが、彼の中では決定事項らしくひきづるようにして連れていかれた。

   連れていかれた先は高層マンションの最上階。

   「要件を言ってください。あたしはこの後バイトがあるんです」

   「そうだね。単刀直入に聞くけど、なんで君から蒼生ちゃんと同じ匂いがするんだい」

 怖いんですけど、マジ怖い。

   「匂い、どんな臭覚してるんです。似通った匂いはいくらでもあります」

 「同じ物を使っていても、あの子はアソコも身体も臭いけど君はなにもかも同じなんだ」

 「誰のこと言ってるかわからないけど、アソコってどこよ!」

 「アソコといえばアソコだよ。君のはどうだろうね。あいつのは美味しくなかったけど君の蜜は甘そうだよね」

 琢磨さんが壊れたんですけど、これどうするんですか!

 誰か回収して下さい!

 「ごめんね。変な事言っちゃったね。寝れてないし何食べても美味しくないんだ」

 「ストレスによる睡眠障害と味覚障害ですか?」

 「そうかもしれない。今まで美味しいご飯を作ってくれた子がいなくなちゃったんだ」

 「美味しいご飯なら、奥さんに作っていただいたらどうですか?」

 「奥さんはいないけど彼女ならいるが、あれは壊滅的で食べれない」

 自分の妹以外に壊滅的な料理を作る人がいたとは衝撃的だ。

 「なら家政婦でも雇ったらどうですか?」

 「それも試したが、理想の料理ではなかったんだ」

   「なら一層の事諦めたらどうですか?」

 「諦められるなら諦めているよ」

 そこまでくればあたしをここに連れてきた理由はただひとつしかない。

   「出て行ったその人を説得してくれと言うなら断ります」

   「そこをなんとか頼む」

   「今は学生だからいいけど、その子が結婚したらその家出て行くんですよね。早いから遅いかの違いですよね。なら、早い話諦めて彼女さんの作る壊滅的な味に慣れるしかないですね」

   結婚して出て行くということを思い浮かばなかったのかショックのあまり放心状態の琢磨さんを置いてマンションを後にした。

   もちろんバイトにはなんとか間に合いましたよ。
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