称号は神を土下座させた男。

春志乃

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第十三話 自覚のなかった男

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 東のメインストリートもまたとても賑やかな場所だった。
 ジルコンの店を後にした一行は、魔物屋・ロークという看板を掲げる店の前に立っていた。男性客が多く出入りしていて、店の前に停められた荷馬車に、店員たちが牛を乗せていた。多分、白黒のブチ模様だからこれがボヴァンという魔物なのだろうが、地球産の牛より一回りは大きいような気がする。
 店を出た後、魔物屋の話になって、なら知らないついでにボヴァンを見に行こうと相成って一行は、東のメインストリートへとやって来たのだ。

「これが魔物屋か」

「色んな牧羊魔物がいるんだよ! うちはいつもここで魔物を買うの!」

 真尋と手を繋ぐジョンが言った。そうなんですかと一路がジョシュアを振り返る。

「ああ。俺はここでいつも買い付けをするんだ。ロークはクルィークと一、二を争う大店だ。二軒は面している通りは同じだが、ロークは緑、クルィークは黄地区にあって、ロークは牧羊魔物専門、クルィークは愛玩魔物専門だ。まあ、ライバル関係っていうのもあってあんまり仲が良くないんだがな」

 ジョシュアが、向かいの通りにある大きな店を指差した。
 若い女性や子供も多く店に出入りしていて華やかな店構えだ。一方のロークは、重厚な造りでシックな店構えをしている。
 中に入ると店内は、とても広く、天井もかなり高くなっていて、所々に設けられた柵の中に牛や羊のような魔物がたくさん居た。黄色のひよこたちがぴよぴよと鳴きながら、柵の中で忙しなく動き回っている。頭上にはいくつも籠が浮かんでいて、そこにも様々な生物が居た。
ジョンが「あれがプーレの赤ちゃんだよ」と真尋の手を引き、柵の中を覗き込んだ。小さなひよこは、鶏の雛に似ているがまだ生まれて間もないふわふわのひよこ姿だというのに既に小さな赤い鶏冠が生えている。一路は、子豚たちが眠る柵の中を覗き込んでいる。

「おや、ジョシュア様、ジョン坊ちゃん、いらっしゃいませ」

 近くで別の客の相手をしていた黄土色の髪の男が、ジョシュアに気付いて笑みを浮かべる。別の店員に客を任せるとこちらにやって来た。

「確か、ご来店は、三日後のご予定では? まだ魔物たちも落ち着いて居ないのですが……」

 男は、四十代くらいでラフなシャツに黒のズボン、生成り色のエプロンを身に着けていた。胸元にロークと店の名前が入っている。エプロンにはたくさんのポケットがついていて、色んなものが詰め込まれていて重そうだった。生物相手の仕事だからか二十名以上は居るであろう店員たちも、同じような恰好をしていて、魔物の世話をしたり、客の相手をしたりと忙しなく働いている。
 男は、右腕には肘まである革の手袋を嵌めていた。ひょろりとしていて背が高いのだが、顔がラクダにそっくりだった。少し垂れ気味の大きな黒い瞳はばさばさの睫毛に縁どられていてどこか眠そうな半目、鼻の下が長く、顔も全体的に縦長で、本当にラクダにそっくりだった。

「ああ、大丈夫だ。引き取りは三日後か、もしかすると少し遅れるかもしれない。今、友人に町案内をしているんだ」

「遅れる分には、大丈夫でございます。あ、初めまして、私はこの店の主人のカマルと申します。どうぞ、以後お見知りおきを」

 丁寧に頭を下げたカマルに、真尋と一路も頭を下げる。

「ジョシュアの友人の真尋と連れの一路だ」

「ジョシュア様と一緒ということは、今朝、ギルドでレイ様と喧嘩をされたという神父様ですかね?」

 ラクダ、違う、カマルはまるで世間話でもするかのような気軽さで告げた。
 ジョシュアが、驚いたような顔でカマルを振り返った。カマルは相変わらず眠そうなラクダ顔で真尋を見ている。

「……ああ、そうだ。ティーンクトゥス教の神父でもある。一路はまだ見習いだがな」

「おや、王都のパトリア教とは名が違う訳ですか」

「出来れば、一緒にしないで頂きたい」

 真尋がきっぱりと返すとカマルは、長い睫毛を瞬かせた後、小さく笑った。

「それは失礼いたしました。あまり学は無い者でございます故、ご容赦を。当店は、魔物に害を与えなければどなたでも客人としてお迎えする決まりになっておりますので、どうぞごゆっくり」

 掴みどころのない飄々としたラクダ男は、そう言って徐に革手袋を嵌めた右腕を上げた。ふわり、と音も無く一羽の梟に似た鳥がその腕に降り立った。

「その鳥は?」

「おや、森の賢者と呼ばれる魔獣・ソフォスをご存知ないですか?」

 カマルは、もう片方の手で羽の付け根を擽るように撫でた。ソフォスというらしい梟みたいな鳥は、気持ちよさそうに目を細めて、ホーと鳴いた。梟に似た魔獣という解釈で多分、合っているんだろう。

「では、調教師もご存知ない?」

 二人が揃って頷くとカマルは楽しそうに睫毛を揺らして笑った。何だかとても楽しそうだ。

「カマルは、優秀な調教師なんだ」

 ジョシュアが言うと、カマルは、いえいえと謙遜した。

「単に魔物好きを拗らせただけでございます。よろしければ、調教師について詳しくお話しますが」

「是非」

 ではどうぞ、と店の奥に案内されて、シンプルなテーブルセットに座るように促された。真尋はジョンを膝に乗せて座る。真尋を真ん中にしてジョシュアと一路が隣に座り、カマルは真尋の前の椅子に腰を下ろした。彼が手を振れば、男性の店員が止まり木を持ってきて、女性の店員が紅茶のセットを運んで来てくれた。カマルは、腕の上にいた鳥を止まり木へと移す。

「一般的に、中級から上級クラスの魔獣と契約を結んで従える者を調教師と呼ぶのです。調教師が従える魔獣を従魔と呼びますね。お砂糖はいかがです?」

 真尋は、結構と首を横に振る。一路は、いただきます、と砂糖のポットを受け取り、ティースプーン山盛りに砂糖を五杯入れた。その上、ミルクまでたっぷりと入れる。真尋には見慣れた光景だったが、ジョシュアがちょっと引いている。ジョンが「体に悪いよ」と小さく呟くのが聞こえた。カマルは、一瞬だけ真顔になったが、そこは商売人、すぐに朗らかな笑みが戻る。

「契約を結ぶ方法は様々ですが正々堂々戦って、魔獣が負けを認めた時に結ぶのが一般的です。契約を結ぶにふさわしい魔獣には、とても賢く誇り高いのですから」

「では、カマルさんもその鳥さんと戦ったのですか?」

 一路が紅茶のカップを手に首を傾げる。

「いえ、リーフィと私はこれまで争ったことはございません。リーフィが遠い昔、雛であった頃、リーフィは憐れにも巣から落ちて怪我をしていたのを私が保護したのでございます。その縁あって私とリーフィは契約を結びました。もう三十年の付き合いで御座います」

 カマルがリーフィという名らしい梟を振り返れば、そうだともという様に、ほーと鳴いた。

「従魔となった魔獣は、主と命を共にします。主が死ねば従魔も死ぬのです。それ故、調教師たちは相棒たる従魔を何より大事にします。ただ従魔は命の長さが主と同じになるだけで、怪我や病気をしない訳ではありませんので、そこは気を付けて欲しいところです」

「ソフォスとはどういった魔獣なんだ?」

「ソフォスは、森の賢者とも呼ばれる非常に賢い鳥の魔獣でございます。オウル系に分類されておりまして、ソフォスはその中でもBランクに分類されますね。森で会うと氷の礫を飛ばしてくるので結構厄介なんですよ、あ、もっとも私のリーフィはそんなことしませんけどね」

 ねー、とカマルがリーフィに向かって行った。リーフィは、勿論と答えるように羽を膨らませて体を揺らした。

「ソフォスは従魔としては本当に素晴らしいのです。特にリーフィは知能と攻撃力の高さは勿論、見た目もこんなに美しいですし、何よりこの木々の合間に溶け込む色合いをしたこの翼! 音も無く飛ぶ姿はまさに狩人に相応しく、こんなに愛らしい顔でファットラットを貪る姿には胸がきゅんきゅんしましてね。それでいて優雅で繊細な気質を兼ね備えておりまして……おっと失礼。リーフィのことになるとつい饒舌になってしまうのですよ」

 カマルは、はっと我に返ると口元を手で押さえて、笑いながらおっとりと頭を下げた。

「そうだ。実は、三頭ほど馬を手に入れたんだ。盗賊が乗っていた馬で、一応元気だが診て欲しい。町に居る間に頼みたいんだが」

「おやおや、それはまあ幸運なことで、ジョシュア様に襲い掛かるなど阿呆な盗賊も居たものですね」

 ジョシュアの言葉にカマルはくすくすと笑いながら言った。

「家族が一緒だったからな、俺も危うかった。マヒロとイチロが助けに入ってくれて、二頭は二人の馬なんだ」

「お兄ちゃんすごく強いんだよ!」

「それはそれは、では宿の方に後で獣術師を手配しておきましょう。明日の朝、お伺いします」

「そうか、助かる」

 獣術師とは、つまり獣医なのだろうなと話の流れから察する。

「この店では、馬具なども揃えられるのか?」

「はい。他にも様々なお手入れ製品やご褒美のおやつまで、さまざまご用意がございますのでご入用の際は是非ともうちを御贔屓に」

 ラクダ男は抜け目ない。
 カマルは、皆のカップが空になったのを見計らい、立ち上がる。

「よろしければ、店内をご案内いたします。当店の魔物たちは皆、健康と元気が取り柄なのですよ」

「僕、もっと見たい!」

 ジョンが目を輝かせて真尋を振り返る。真尋は、なら見ようと頷く。そうすれば、ジョンは真尋の膝から降りて真尋の手を取る。
 そうして一行が立ち上がり、席を離れようとした時だった。

「危ない!!」

「きゃぁああ!!」

 店の一角で怒号と悲鳴が上がって、一気に店内が騒がしくなった。
 カマルの笑顔が一瞬で引っ込んで、険しい顔で騒ぎの元に駆け出し、真尋たちもそれに続いた。
 店の中央に人だかりが出来ていて、騒ぎの元凶はそこにいるようだった。リーフィがぐるぐるとその上を旋回している。
 
「何事ですか!」

 カマルの声が響き、人垣が割れる。そのまま前に進み出れば、中央にナイフを手に持った男が居た。
 ふー、ふーと荒い呼吸を繰り返しながら、焦点の合わぬ目が獲物を探す様に動く。ボロボロの服を身に纏って居て髪もぼさぼさ、肌も薄汚れている。男の足元には、おびただしい量の血痕がある。辺りを見回せば、ヤギの魔物の柵の前にうずくまる白髪の男とその傍にパニックなって泣いている老婦人がいた。

「マイク! 今すぐに騎士団へ通報!!」

 カマルの声に一人の少年が店の外へと駆け出し、店員たちが客を後ろに下がらせて、カマルが前に出る。カマルが差し出した腕にリーフィが降り立った。

「一」

「うん」

 真尋は、ジョンを店員と共に下がらせ、一路と共に怪我人の元へと駆け出した。ジョシュアがカマルの隣に歩み出れば、流石は元Aランクの冒険者というだけあって有名らしく、客や店員が安堵の声を上げて、表情を明るくした。

「大丈夫か?」

 真尋の声に男性に縋りついていた老婦人が顔を上げた。
 
「お、夫がっ、あの男にっ!」

 ぶるぶると震えながら夫を指差した。どうやら腕を切りつけられた上に太ももを刺されたようだ。
 ズボンが真っ赤に染まっていて、血だまりが出来ている。声を掛ければ、男性が頷いて、意識はあるようだった。
 真尋は、ナイフを取り出してズボンを破り、幹部を露わにする。

「一、聖水の準備」

「オッケー」

 一路がポッケとからガラス瓶を取り出した。取扱説明書の聖水の項目に聖水は、消毒液の代わりになると書いてあったのだ。光の副属性は、治癒と浄化。二人で、なるほど、と頷いたのも記憶に新しい。聖水の使い方は、取扱説明書の「治癒魔法と聖水」という項目に書いてあったのだ。ちなみにその項目を見つけたのは、森で過ごした最後の晩だ。取扱説明書はティーンクトゥスお手製というだけあって、多分、書き忘れを思いついた時に付け加えたと思われる項目が幾つかあって、大抵、全く関係ない章にぽつんと入っていたりする。ただ「聖水=マキロンっぽいものです」という一文には、何とも言い難い気持ちになった。

 真尋はそれを自分の手に掛けてもらい、傷口を診る。深い傷で動脈を傷付けたようだ。

「今すぐにナイフを降ろしなさい。そうすれば手荒なことはしません」

 カマルの声が聞こえて振り返る。
 男は何も答えない。それどころか聞こえているかどうかも怪しかった。

「あの男、様子がおかしいな」

 真尋の言葉に一路が頷く。

「目の焦点が合ってないし、口から涎まで零してるよ。正気を失っているようにも見える」

 カマルとジョシュアも男の異常さに気付いたのか、どう対応すべきか悩んでいる様だった。
 真尋は、再び男性に視線を戻す。

「おばあちゃん、お名前は?」

 一路が柔和な笑みを浮かべて老婦人に名前を尋ねる。

「ク、クレア……夫は、ルーカスよ……プーレの雛を買いに来ただけなのに、なんでこんなことにっ」

 ううっと泣き崩れたクレアに一路が、大丈夫ですよ、と声を掛ける
 
「泣くな、クレア……だいじょうぶだ」

 ルーカスが妻に手を伸ばせば、クレアがその手を掴んで更に涙を零す。

「一路は腕を」

「了解」

 真尋は、深呼吸を一つしてから太ももを深く傷つけている傷口に両手を当てて、魔力を込める。集中力を極限まで高める。

「《ヒール・クテュール》」

 これは、傷口や傷ついた神経や血管を縫合する最上級レベルの治癒魔法だ。腕の傷は、浅かったのか一路が腕の傷に唱えたのは初歩の呪文だった。
 血が止まったのを確認し、真尋は改めて初級の治癒魔法を掛けて傷口を塞いでいく
 泣き崩れていたクレアがいつの間にか顔を上げていて、ルーカスも驚いたように真尋を見つめていた。
 真尋が手を離せば、ルーカスの太ももには傷痕一つなく、もう一度、真尋が手を翳せば血の痕も消え去った。一路が血まみれのクレアにも同じくクリーンを掛ける。

「き、奇跡だわ……」

 クレアが呟く。
真尋は、腕の傷も確認する。一路が治癒魔法を掛けた腕の傷も跡形も無く消え去っている。破れた服が無ければ、刺されたなどとは分からないだろう。

「ただの治癒魔法だ。それより流した血はどうにもならん、まだ動くなよ? 無理はするな」

 真尋はそう声を掛けて、後ろを振り返る。
 何があったのか、カマルがリーフィを抱えていて、ジョシュアが男を床に引き倒して拘束していた。男はジョシュアの下で酷く暴れている。
 二人が駆け寄れば、カマルが呆然と血まみれのリーフィを抱えていた。

「カマルを庇ったリーフィの翼の付け根にこいつの投げたナイフが刺さったんだ」

「僕が診るよ」

 一路がカマルの傍に膝をつくのを横目に真尋は、男の顔を覗き込んだ。男は何らかの攻撃を受けたのか、傷だらけだった。
 傷だらけの男は唾をまき散らし、唸るように声を上げている。そこに明確な言葉は無く、まるで獣のようだ。血走った両の目がギョロギョロと動く。ふと、男の肩に黒い靄のようなものが見えた気がして手を伸ばしたが、何もない。気のせいだったようだ。

「あっ、がっ……」

 だが、男は最後の呻きを上げると突然、意識を失った。慌てて脈を取ったが気絶しているだけで死んだわけでは無いようだ。

「禁薬にでも溺れていたのか?」

 ジョシュアが男の上から降りて言った。

「禁薬?」

「とある植物から作られる薬で、強い幻覚作用や感覚麻痺を引き起こすんだ。中毒性が強くて、末期になるとこいつみたいになることもあるし、最悪、死に至る。薬にもなるが、それは国に認可を受けた薬師や治癒術師だけが使えるもんだ」

 つまるところの麻薬か、と真尋は納得する。
 ジョシュアが店員の持って来た縄で男を縛り上げるのを眺めていれば、横からカマルの歓声が上がった。

「ああ! 何と感謝すれば!! イチロ様は私とリーフィの命の恩人ですぅぅぅっ!!」

「ほーほーほー!」

「うあっ!」

 号泣するカマルに抱き着かれた一路が床に倒れ込む。リーフィは、嬉しそうに翼をはためかせて彼らの頭上を飛んでいる。治癒魔法は従魔にも有効のようだ。

「光の属性を持っているのは知っていたが、副属性の治癒をここまで使いこなすなんて、やっぱり二人は凄いな」

 ジョシュアが感心したように言った。
 真尋は、まあな、と肩を竦めて返し、立ち上がる。

「お兄ちゃん!」

 駆け寄って来たジョンを抱き上げれば、ジョンは嬉しそうにぎゅうと抱き着いて来る。

「今日も格好良かった! お父さんも!」

「そうか。怖くなかったか?」

 真尋の問いにジョンは、うん!と元気よく頷いた。

「だって、お父さんもいるもん! マヒロお兄ちゃんも強いけど、お父さんの方が強いよ!」

「そうだな、ジョシュアがいれば百人力だ」

 真尋とジョンの会話にジョシュアが、顔を赤らめてそっぽを向いた。その手は忙しなく顎を撫でている。真尋から降りたジョンが、ジョシュアの顔を覗き込みに行った。
 失礼!という大きな声と共に複数の足音が聞こえて顔を上げれば、青の制服姿の騎士が数名、現れた。

「おや、ジョシュアさん!」

「マヒロさんにイチロさんも」

 声を掛けて来たのは、昨日、門の所で会ったボルドーの髪の騎士エドワードと茶髪の騎士リックだった。
 別の騎士がルーカスとクレアに声を掛けている。ルーカスは、大量に血を流したので顔色は悪いが騎士に支えられて体を起こして座っている。クレアがその隣で何かを騎士に言って、ルーカスもそれに何度も頷いていた。

「イチロ神父様ぁあああ!」

「僕はまだ見習いです! 真尋くぅん!」

 未だ号泣するカマルに縋りつかれる一路が助けを求めている。彼の方には、リーフィがいてすりすりと一路にお礼のつもりなのか体を摺り寄せていた。
 しょうがない、と真尋は一路の脇に手を入れて持ち上げた。飛び立ったリーフィがカマルの頭上に着地した。

「カマル、騎士が来たぞ。いいのか?」

 はっと我を取り戻したカマルが立ち上がった。店員が出した濡れタオルで顔を拭くと騎士に向き直る。

「犯人はこちらです」

 縄で縛られ床に転がる男を指差してカマルが言った。
 真尋は一路を降ろす。一路が、ありがとう、と息を吐きだした。

「一体、何があったんですか?」

 エドワードが尋ねる。

「俺達はそっちの席で話をしていたから、最初に何が起こったのかは……」

 ジョシュアが答える。彼に抱っこされたジョンも「急にびっくりした!」と答えた。
 カマルが「誰か状況を説明できる方は!」と声を掛けると、五十代くらいの男性が手を上げて前に出て来る。

「俺と刺された老夫婦は、ムートンの柵の前に居たんだ」

 男が指差したのは、羊に似た魔物が居る柵だった。柵の向こうで三頭のもこもこのムートンたちが怯えて身を寄せ合っている。

「そいつは、柵の前でしゃがみ込んでいて、あのじいさんが声を掛けたらいきなり、太ももを刺したんだよ。それでじいさんは咄嗟にばあさんを庇って腕を切られて、その後、すぐにカマルさんやジョシュアさん達が駆けつけてくれたんだ」

 騎士に抱えられてルーカスは店を出て行くところだった。クレアが女性騎士に支えられながらその背に続いて行く。

「私共が駆け付けた時には、男は酷い興奮状態で……マヒロ神父様とイチロ神父様が老夫婦の手当てに行って下さって……」

 カマルはまた先ほどの悲劇を思い出したのか、目に涙をにじませた。
 傍にいた店員が背を撫でて、リーフィが頭の上で翼をばたつかせて主を励ます。あれは、爪が刺さったりしないのだろうか。

「異常だったんだ」

 ジョシュアが言った。

「異常、とは?」

「男の様子が、だ。カマルが声を掛けたんだがそれも聞こえていないし、目の焦点もあっていない。涎をだらだらと垂らしたまま、まるで気がふれたように見えた。カマルのリーフィが氷の礫を浴びせたんだが、血が出ようが刺さろうがお構いなしで、リーフィに向かってナイフを投げつけたんだ。こう、なんの予備動作も無しに、リーフィを見てすらいない。その時、そいつは俺の方を見ていたんだ」

 ジョシュアがナイフを投げる仕草を見せた。

「その後、こちらにいらっしゃるイチロ神父様が私のリーフィを治療してくださって……ううっ」

 カマルが袖で涙を拭う。一路が「だから見習いですってば!」と否定するがカマルは聞いていない。
 エドワードとリックがこちらを振り返る。

「……やっぱり、レイさんを負かしたって言うのは本当なんですか?」

 リックが尋ねて来る。噂が回るのが随分と早いな、と感心しながら真尋は首を横に振った。

「神父だからと因縁を付けられたので、平和的解決を試みたが失敗しただけだ。倒すも何も剣を交えても居ない」

「マヒロは細い綺麗な棒みたいなもので受け止めていたけどな」

「レイさんの剣を受け止められるだけで異常ですよ」

 リックが呆れたように言った。

「とにかく、さっさとこいつを運び出せ」

 真尋は、隣の一路から送られる視線が鋭くなっているのに気付いて、話の流れを変えようと試みた。
 リックは、そうですね、と素直に頷いてくれてエドワードと二人で男を立たせた。男はまだ意識を取り戻しておらず、ぐったりとしている。
 痩せこけていて、顔色も悪い。

「貧民街の住人でしょうか」

 カマルが首を傾げる。

「身形からしておそらく……見覚えはありますか?」

「いえ、私にはありません」

 カマルが首を横に振った。傍にいた店員たちも首を横に振って見覚えは無いと告げる。
 エドワードとリックは別の騎士が運んで来た担架に乗せる。リックが手を翳して呪文を唱えれば、担架から生えた蔓がぐるぐると男に巻き付いて男は担架に固定された。そのまま騎士たちが男を店の外に運び出されて行く。

「……実は、先日も貧民街で通り魔が出まして、その時もジョシュアさんの言ったような状態で、若い女性が犠牲になったんです。先週の青の3地区で起こった通り魔事件も貧民街の住人で禁薬使用の可能性も含めて捜査はしているんですが、通り魔は全員、自殺していたので……今回、初めて犯人が生きた状態で捕まったんですよ」

 リックが小声で言った。

「最近の貧民街は物騒ですねぇ、もしや連続で発見された変死体も通り魔なんですか?」

 カマルが尋ねる。

「いえ、それは違うと思われます」

 リックが首を横に振って否定すれば、カマルは、そうですか、とつまらなそうに言った。カマルはちょっとミーハーの気があるようだ。
 それにしても貧民街というからには治安も悪いのだろうが、通り魔の頻発に変死体とは随分と物騒だ。

「とりあえず、皆さま、お一人ずつ詳しい話を聞きたいのですが……」

「ゲストルームをお使いください。お客様にも聞かれますか?」

「今日中に全員は無理なので、先ほどの男性のように犯人の様子を近くで見ていた方だけに絞らせていただきます。それ以外の方は、ギルドカードを提出していただき、連絡先と身元を確認させてください。ジム、ガストン、頼む」

 エドワードに言われて、女性騎士と男性騎士が客に声を掛け、店員たちが店の奥に案内していく。

「ふむ、これは迷惑をかけたお客様の連絡先を我々も控えて、何らかのアフターケアをしないといけませんねぇ。半額セール、特売……ああ!」

 カマルがため息交じりに呟いたかと思えば突然、大きな声を出す。

「半額で思い出しました……! 騎士様、神父様方をお借りしてもよろしいですか?」

「いきなりどうした?」

 真尋は思わず首を傾げる。
 カマルは、きょろきょろと辺りを見回すと、声を潜める。

「出来ましたら、治療して頂きたい魔獣がいるんです」

「……俺達は、病は治せんぞ?」

「そんなことは世の常識ですとも。少し困った案件で、良ければ騎士様も来てください。ジョシュアさん、向こうの店に行くのでジョン君はこちらにいることになりますが……」

 カマルの言葉にリックとエドワードは顔を見合わせた後、少しだけなら、と頷いた。ジョシュアは、カマルがどこへ行く気か分かったようで、ならここに残るよと告げる。

「先にゲストルームで待ってるよ」

「お父さん、何で僕はだめなの?」

 首を傾げるジョンにあっちで説明してやると言いながらジョシュアも店員に案内されて去っていく。

「では、神父様、此方へ」

カマルは、真尋と一路の返事は聞かずにこちらです、と歩き出した。
 カマルは店の奥に行き、一度、中庭へと出た。中庭を横切って向かったのは、別棟の建物でドアノブには鎖が巻かれて、南京錠までかけられている。カルマは、どれだったかな、とエプロンの中に手を入れて鍵束を取り出して、じゃらじゃらと連なる鍵の中から、真鍮製の鍵を選びだす。

「こっちは魔獣を取り扱う店で、週三日しか営業していないんですがね」

「魔獣?」

「商業ギルドで下級魔獣飼育員の資格と下級魔獣販売許可を取れば、Eランクのファットラット、グリースマウス、ニードルラビット、ジャックラビットなどを飼育、販売できるんです」

 真鍮製の鍵を差し込めば南京錠が開いて、カルマは鎖を外してドアを開ける。

「基本、全部従魔の生餌ですけども。従魔は魔獣の肉を好むので、リーフィにはいつも新鮮なファットラットやニードルラビットを与えているんですが食べる姿の可愛いのなんの!」

 饒舌なカマルの背に続いて中に入る。
確か、一路は調教のスキルを持っていた筈だからいずれ、ここに用が出来るのは一路かも知れない。ただ当の一路は、生餌、いう言葉に引いている。彼は草食系の魔獣しか従えられないかも知れない。
 カマルは全員が入ったのを確認するとドアを閉めて内側から鍵を掛けた。
 こじんまりした店内には、たくさんの檻が有って中に角が生えた兎の魔獣や体長五十センチはあろうかという鼠が入っている。魔獣たちは、人間に気が付くと、キーキー騒ぎ立てたり、巣穴に引っ込んだりと忙しない。
 カマルはお構いなしに店の奥へと進んでいき、店の一番奥の暗がりに置かれた檻の前で足を止めた。

「先日、私とリーフィで久々に狩りに出かけたんですが、その時に……保護したんですよ」

 真尋と一路は膝をついて檻の中を覗き込んだ。奥が暗くて良く見えないが、何かが動いて、二つの光る目がこちらを振り返った。驚いた一路が「ひっ」と情けない声を漏らして真尋に抱き着いて来る。
 後ろから騎士たちも上体をかがめて覗き込んで来た。

「何が居るんだ?」

「暗くて良く見えないですね」

 真尋は手の上にライトボールを出して檻の中にそっと投げ入れた。ふわふわと揺蕩う光の玉は、檻の奥へと飛んでいき、檻の暗がりを照らしてそれの姿が露わになった。

「……犬か?」

 真尋は首を傾げる。
 暗がりに蹲っていたのは、黒っぽい毛並みの犬のような生き物だった。低い唸り声を上げながら、此方を睨み付けている。光に照らされて檻の中が血で薄汚れているのが分かった。大きさは、柴犬ほどで四肢ががっしりとしている。

「怪我を、しているんですか?」

 真尋から離れて一路がカマルを見上げた。
 カマルは、困り顔で頷いた。

「おそらく、ゲイルウルフの幼獣だと思うのですが……罠に掛かっていましてそれをリーフィが見つけたんです」

「罠?」

 エドワードが訝しむ様に眉を寄せた。
 カルマが、少々お待ちを、と頷いて「立ち入り禁止」と札に掛かれたドアの向こうに行った。そう待たずして、重そうな鉄製の物体を手に戻って来る。

「これは、狩猟用の罠ですが、これに引っかかっていたんです」

 カマルが差し出したものを真尋は見たことがあった。祖父の家の蔵にあるのを見たことがある。
 鉄製のそれは、真ん中に板があり、そこに動物が足を乗せるとバネの仕掛けが作用して、板の左右に広げられていた半円系でギザギザの牙が付いた金属板が持ち上がって動物の足を挟んで動けなくするという古くからある原始的な仕組みの罠だ。確か日本では虎挟み、英語ではレッグホールドトラップ、ベアトラップと言ったりもする。

「私の息子も調教のスキル持ちでいずれはウルフ系を従魔にしたいと言っておりましたので、保護したのです。あ! 冒険者と商業ギルドには従魔契約を望むことによる保護とちゃんと届け出を出してありますよ! 従魔以外の中級以上の魔獣の持ち込みや飼育は禁止ですからね……でも、どうにも相性が悪いのか、この子の気性が荒いのか、あの子の力不足なのか、契約が結べず、治療をしようにも暴れてしまって……ただ、少し妙でしてね」

「妙?」

 真尋と騎士たちの視線がカマルに向けられた。一路は、じっと小さな狼の子を見つめている。
 カマルは、はい、と頷いて、虎挟みをその辺の空の檻の上に置いた。

「私がリーフィと共に狩りをしていたのは、ブランレトゥの西に広がる魔の森なんですけれど」

 それはつまり真尋たちが昨日の朝まで居た森ということだろうか。

「もっとも奥に何て行きやしませんよ? 私だって命が惜しいですから。ですが一度は、息をするのを忘れる程美しいと噂の幻の湖を見てみたいですよねぇ。そこにだけ生息する黄色と紫の鱗を持つ貴重な肉食魔魚、ペグディアボを見てみたいものです。遠い昔に一度きり、蒐集家の家で剥製を見たきりです。恐ろしい程、鋭い歯と相反する美しい鱗でした」

 カマルがうっとりと告げる。
 そうか、真尋が餌付けしていたあの魚は、そんなに貴重な魚だったのかと一人納得する。二、三匹、捕まえてくれば良かった。

「あの湖には、そうそう行けませんよ。ゲイルウルフだけじゃなく、Aランクの魔物が魔の森の湖周辺には多いですからね。とても危険です。村一つを簡単に滅ぼすキラーベアもうろうろしているような森なんですから」

 リックが言った。言外に、危ないからむやみに行かない様に、と言われたカマルは、分かっていますよ、と頷いた。
 真尋は、とりあえずそのキラーベアとタイマン勝負を張って素手で殴り合いをした上に勝ったことだけは黙っておこうと胸の内にそっとしまっておく。

「話が逸れましたが、その子がいたのは、森の中でも比較的街道に近い場所で、あの罠に掛かっていたんです。魔の森でこんな罠を仕掛けるなんていうのがそもそもおかしいでしょう? 狩りをしたければ、周辺の森や林でもっと安全でレベルの低い魔物や下級の魔獣を狙うはずです」

「冒険者が生餌でも捕まえようとしたんじゃないのか?」

 エドワードが言った。

「こんな重たい罠を持ち歩く必要性はありませんよ。それに生餌にするような下級魔獣や魔物は、魔の森よりその周辺に山のように生息しているんですから」

 カマルが首を横に振った。

「この子は、左の後ろ足を罠に挟まれていたんですが、問題は、その周辺に夥しい量の血がまき散らされていたことです」

「こいつの血では無いということか?」

 カマルは、はいと頷いて、長い睫毛を揺らした。

「この子のすぐ傍ではありましたが、かなりの量の血が流れたようですし、こんな小さな体であの量の血を流せば死んでいた筈です。それに、例え幼獣であってもゲイルウルフはゲイルウルフ、罠に掛かっていたなら殺すのも簡単でしたし、冒険者ギルドに持ち込めばそれ相応のお金になる筈なのに、この子は罠に掛かったまま放置されていたんです。ね、妙でしょう?」

 カマルは、彼の腕に降り立ったリーフィを撫でながら首を傾げて見せた。リーフィもぐるんと首をひねってカマルを真似る。

「……何か、別の思惑があったのか? こいつは何かをおびき寄せるための罠だったんじゃないか?」

 真尋は顎を撫でながら答える。

「成程……ゲイルウルフは群を作って暮らしていますし、仲間意識も強いから、この子を囮にして成獣をおびき出して、そっちを討伐するのが目的だったとかですかね。成獣ならかなりのお金になりますから」

 リックが言った。

「だとすれば周囲の血は、仲間のゲイルウルフであった可能性が高いだろう。しかし、カマルはどうやって捕まえたんだ?」

「私が見つけた時には、大分衰弱していて抵抗する気力も無かったのですよ。先に回復薬を飲ませたのがいけなかったんです、獣術師に先に治療をさせなかったので、このような事態に……保護した以上、私にはこの子の命に責任があります。だから、手を貸していただけませんか?」

「回復させることが出来たとして、その後はどうする気だ?」

 カマルの顔を見上げて問う。

「調教師を募集して、どなたかの従魔にしようかと……ウルフ種の従魔は貴重ですし、この子はもう群れには戻れないでしょうから」

 そうか、と頷く。騎士たちが何も言わないということは、それは合法的なことで正しい判断なのだろうと窺えた。
 真尋は、改めて小さな幼獣に視線を向けて、目を瞬かせる。カマルや騎士たちも、驚きに息を飲んで固まる。
 一路の差し出した手にウルフの幼獣が鼻先をすりつけていたのだ。一路は檻の隙間から手を差し込むとその頭を撫でて、首筋を指で掻く。

「……君の傷の手当てをさせて。怖いことは絶対にしないって約束するから」

 一路が声を掛ければ、幼獣は頭を一路の手に押し付ける。
 幼獣はよほど汚れているのが、撫でた一路の手が汚れきっている。

「カマルさん、治療が出来ると思うので、檻の鍵を開けて頂けますか?」

 くるりと振り返って笑った一路にカマルは、ラクダ顔にありありと驚きを浮かべて頷いたのだった。
 ガチャリと音を立てて檻が開けられる。幼獣は怯えたように再び奥に行ってしまった。真尋は、二つ三つとライトボールを出して一路の周囲に浮かべる。

「真尋くんは、ここにいて」

 そう言って一路は、軽い足取りで檻の中に入って行き、幼獣の前に膝をついた。幼獣は、一路の匂いを嗅ぐと緊張を解いたのか、一路に甘えるようにすり寄る。

「……イチロさんは調教のスキルをお持ちなのですか?」

「……さあ」

 真尋は、一路の無自覚さに頭を悩ませながら、そっけない返事をリックに返す。
 目立つという自覚のある真尋に対して、相変わらずその辺の自覚がない一路を真尋はどうするべきだろうか。

「実家で犬を飼っていたから、扱いに慣れているんじゃないか」

「はぁ」

 真尋の苦し紛れの答えにリックは何とも言えない顔をした。
 一路が家で犬を飼っていたのは嘘ではない。ゴールデンレトリバーを飼っていて、真尋の弟たちがその犬の下に良く遊びに行っていた。一路は躾が妙に上手く、その犬も非常に賢い良い犬だった。ただ、それとこれが関係あるかどうかは、真尋にも分からない。
 一路の手元が淡く光り、治癒魔法を使ったのが分かった。幼獣は、じっと大人しくしていて、真尋たちに対してあんなに警戒心露わに威嚇していたのが嘘の様だった。

「はい、でーきた。よし、おいで」

 幼獣をひょいと抱き上げた一路がこちらにやって来る。黒く汚れた幼獣は、一路を完全に信頼しきっているようでその腕の中に大人しく抱かれている。

「カマルさん、お湯貰えます? 綺麗にしてあげたいんですけど」

「……は、はぁ……え?」

 カマルが唖然としながら一路と腕の中の幼獣を交互に見る。

「そんなに大人しくなるなんて契約でも結ばれました?」

「いえ、結び方知らないので」

 きょとんとして一路が首を傾げた。カマルが口をパクパクさせながら真尋を振り返る。真尋がなんとなく視線を騎士の方に逃がせば、騎士まで真尋に答えを求めているではないか。

「魔獣が懐くなんて、ありえないぞ?」

 エドワードが信じられなと言わんばかりに言った。
 真尋が手を伸ばせば、幼獣は耳を伏せて一瞬だけ怯えたが優しく触れる手にすぐに頭を押し付けて来る。ただの少し大きな子犬に見えて来た。ただ毛並みは泥や血で汚れてゴワゴワしている。

「これは確かに洗った方が良さそうだな」

 黒く泥で汚れた手をぷらぷらさせながら真尋は言った。臭いも割と酷い。

「では、母屋の方でご用意いたしましょう。イチロ神父様、万が一にもその子を逃がさないでくださいね」

 全部を一旦、放り投げることにしたらしいカマルがにっこりと笑って歩き出す。リーフィはカマルの肩の上で子犬を警戒している。

「逃げないと思いますよ。さっきまでは、ただただ人間が怖かったみたいですけど、言って聞かせたので理解してくれたみたいです。魔獣って頭が良いんですねぇ」

 ねえ、と一路は無邪気に笑って子犬を撫でる。子犬は、汚れてバサバサの尻尾を振って答える。

「……実家で犬を飼っていたことが影響しているんじゃないか」

 リックとエドワードに目で説明を求められた真尋は、そう返すことしか出来なかった。



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ここまで読んで下さってありがとございました!

お知らせにも告知させていただいた通り、少し、お話の流れを見直して新たなエピソードを加えることにしました!
以前の掲載分に追いつくには少々時間がかかると思いますが、また気長にお付き合いください!

次のお話も楽しんで頂けると幸いです!
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