称号は神を土下座させた男。

春志乃

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本編

第二十三話 片付けられない男

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「と、言う訳、だから暫く、僕はティナちゃんの送り迎えを優先させるからね」

 一通りの報告をした一路がそう言って、マグカップに口を付ける。はちみつを垂らしたホットミルクを彼は、嬉しそうに飲んでいる。

「俺は別に構わん。その方がティナも周りも安心だろうしな」

真尋は、サンドロが差し入れてくれたワインのボトルを杯に傾ける。すると伸びてきた手が真尋の手からボトルを抜き取った。

「寝る前は一杯まで。真尋くん、夕飯の時、既に一本飲み干したでしょ」

「……」

 一路は真尋の無言の抵抗など軽く無視して、ボトルの口にコルクを押し込むとアイテムボックスにしまってしまった。真尋は、杯を手に取り、中を覗き込む。ほんの二口ほどしか入っていなかった。一路は色んなことに厳しい。

「そういえば、小鳥はどうした?」

「ああ、これ?」

 一路が頷いてアイテムボックスから小鳥を取り出した。真尋はそれを受け取り、中を開いて行く。中身に変わった様子はなく、術式紋が崩れた様子も日本語のメッセージが読めなくなっていることも無かった。

「どうだった? ちゃんと届いたか?」

「受け取ったのはローサちゃんだから、明日にでも聞きなよ。っていうか、それ今日作ったの?」

「ああ。クロードの家でな。クロードがいたく感激していた。商品化できるようなら、あいつが全面的にバックアップしてくれるらしい」

 真尋は、クロードから借りて来た本のページをめくりながら改めて小鳥の術式を確認する。スマホという文明と共に生きて来た真尋にしてみると、離れた場所にいる相手とすぐに連絡が取れないと言うのは、不便で仕方が無いのだ。そこで、この小鳥を思いついた訳である。いずれは通話機能を付けたい所存だ。

「それにしても、真尋くんが戦ったのは、何だったんだろね」

 一路がころんとベッドに寝ころぶ。眠っていたロビンが顔を上げたが、一路が頭を撫でるとまた気持ちよさそうに眠りにつく。
 真尋は、さあな、と返して横に積み上げられた本に顔を向け、指先で背表紙を辿りながら目当ての本を探す。

「ゲームの中とか本の中だと、どういった存在だと考えられる?」

 真尋の問いに一路が、そうだなぁ、と間延びした返事をする。多分、彼はもう眠いのだ。真尋と違って一路は夜更かしが得意では無い。
 目当ての本を引っ張りだして、膝の上で開く。右手に持った本と中身を比べながら、内容を頭に入れていく。

「僕が小さい頃にやってたRPGなんかだと、所謂、定番の魔法と剣の世界っていう設定なんだけどね、その中の悪の手下がそんな感じだったかなぁ実体が無くて、影で出来てるの」

「影で?」

「そう。こっちの世界の魔法にも闇ってあるでしょ? あれがあのゲームだと悪い力だったの。それで、その中に闇の影から作った操り人形が居たんだよ。人型なんだけど、黒いローブに覆われて顔にピエロのお面を付けててさ、怖かったなぁ。いきなり現れて襲って来るし、そいつには物理攻撃は利かないし、普通の魔法じゃダメージは与えられなくてね。うじゃうじゃって湧いて出て来るから海斗兄ちゃんによく泣きついたよ」

「ならどうやって倒すんだ?」

「闇が悪だとすれば、光が正義なんだよ。光の聖なる力で倒せるわけ。そもそも光っていうのは、ゲームとかだとそういう設定が多いよ。ゾンビとかアンデット系の魔物は大体、光属性とか、聖なる光の力とかなんとかで倒せたから。でも、ティーンさんのくれた取説を読む限りだと、こっちの闇属性は別に悪の力とかじゃないよね。光には確かに浄化の属性はあるけど」

「確かに……闇の副属性は、空間だ。アイテムボックスなんかに応用されているんだが、何かを奪う、ましてや魔力を奪うなんていう魔法は無いな」

「だよねぇ。そもそも、最近は闇属性を持つ人が殆どいないみたいだし。隠しておいて正解だったねぇ」

 一路がふぁ、と欠伸を一つ零して掛け布団を手繰り寄せる。眠そうな彼の為にランプの光を消した。だが、淡い月光が開けっ放しの窓から差し込んで、部屋の中を淡く照らす。真尋は、手のひらの上に光の球を出して三つほど、自分の近くに浮かべる。
 穏やかな光が真尋の手元を照らしてくれる。

「真尋くんももう寝なよ、明日は一日掃除なんだから」

 目だけを向ければ、横になった一路の緑の混じる琥珀の瞳がじっとこちらを見つめていた。

「寝るには、寝るが、せめてこれを読んでからにする」 

 クロードから借りた本を軽く掲げれば、一路は「程々にね」と呆れたように言って目を閉じた。そう待たずして、規則正しい穏やかな寝息が聞こえてくる。衣擦れの音がしてロビンが一路にぴったりと張り付くように寝返りを打った。その向こうに出来たスペースに、今日も寝る場所があるなと勝手に頷いて、真尋は本に視線を戻す。だが、その途中でサイドボードに置かれた花瓶が視界に入り込んだ。
 淡い月光が照らす中、色とりどりの花が味気無いに瓶に活けられている。
 真尋は、左手を伸ばして花に触れて魔力を込める。この花もいつかは枯れてしまうのだろうけれど、こうして治癒魔法を掛けると今の所はまだみずみずしさを取り戻して、鮮やかにその花弁を広げる。何となく瓶に手を当てて、浄化の魔法を掛けて中身を聖水にしてみる。変わった様子はないが、明日になれば何か変化が有るかも知れない。
 引っ込めた左手に視線を落とす。何の変哲もない男の手だ。親指の付け根に傷痕がある。幼い頃、祖父に連れられて行った山で怪我をした時のものだ。真尋は、ハンカチで応急処置をして何食わぬ顔で山の散策を続け、死ぬわけでもないと平然としていたが、留守番をしていた祖母と一路が大慌てだったのを覚えている。祖父が祖母にしこたま怒られていたのも良い思い出だ。ちなみに真尋は、家に帰った時に雪乃に怒られた。
 ミアの小さな手にも細かな傷痕がたくさんあった。細い指は、力を込めれば簡単にへし折れてしまいそうなのに、あの手は、あんなにも小さな細い手は、ノアという弟を慈しみ、護り、育てているのだ。痩せ細っている様子から、満足に飯を食べる事も碌に出来ないのだろう。十にも満たない幼い少女が更に幼い弟と二人で生きていくことはどれだけ過酷なものだろう。心細いものだろうか。
 それでもミアは、笑っているのだ。自分の現状を悲観することもなく、ああして笑顔をその顔に浮かべて、自分では無い誰かの痛みを労わることが出来る。

「……ミアは、凄いな」

 ぽつりと呟いて、真尋は本を閉じる。
ベッドから降りてサイドボードの前に膝をつき、ボードの上に肘をついてロザリオを握りしめる。淡い月光が真尋とミアの呉れた花を穏やかに照らしている。
 祈りを捧げる。ミアとノアの平穏を、世界の平穏を、そして、遠い所にいる愛する人たちの平穏を祈り、願う。
 ふわり、と窓から入り込んだ夜風が真尋の髪を優しく撫でて行く。冷たい月光がぬくもりを持ったような気がして、真尋は小さな笑みをその口元に浮かべて顔を上げる。青白く光る月が二つ、今日も夜を照らしていた。
 何だか本を読む気も失せて、真尋は立ち上がってぐっと伸びをする。自分のベッドは相変わらず本が溢れ返っていて寝る場所がないので、当たり前のように一路のベッドにお邪魔する。ロビンが少しだけ顔を上げて、眠たそうに尻尾を振って歓迎してくれた。

「おやすみ、ロビン」

 ロビンの艶やかな白銀の毛並みを撫でて、真尋は目を閉じた。






「さて、これをどうしたものか」

 真尋は、埃だらけの教会の中を見渡して、ぼやく。
 そもそも掃除の類は、得意では無い。今朝も一路より早く起きて本を読んでいたのに、一緒に寝たのがバレて叱られた。アイテムボックスにしまっておけと言われたが、アイテムボックスにしまうと折角、分類した本がバラバラになってまた一からやり直しになるから嫌だと言ったら、朝から懇々と説教をされた。
 その一路はまだここには居ない。ティナを冒険者ギルドに送って行って、商業ギルドへの用事を頼んだからだ。ジョシュアに、良い庭師は居ないかと尋ねたら商業ギルドで人材派遣をしていると教えて貰ったのだ。庭師は職人なので職人ギルドの所属だが、派遣は商業ギルドが行っているらしい。ややこしい話だ。

「お兄ちゃん! お手伝いに来たよ!」

 教会内に響き渡った声に振り返ればジョンが嬉しそうに飛びついて来る。真尋はそれをひょいと抱き上げた。

「ジョン、少し待ってって言ったでしょう?」

 もう、と後からリースを抱っこしたプリシラがやって来る。

「どうしたんだ? 何かあったか?」

 真尋の問いにプリシラが、いいえ、と首を横に振る。

「お手伝いに来たのよ。宿に居ても暇だし、ジョシュは今日、村からくる子たちに荷物を引き渡しに行っちゃったし。それにジョンが、お兄ちゃんの所に行くって聞かなくて」

 プリシラが呆れたように息子を見るが、ジョンはにこにこと顔中を綻ばせて嬉しそうにしている。それがあまりに可愛くて、真尋は片腕でジョンを抱えなおして、金茶色の髪をくしゃくしゃと撫でた。

「それにしても広いのね」

 プリシラが中を見回しながら言った。リースも短い首を精一杯伸ばして周囲を見回している。

「そうだ。三人に俺達の愛する神様を紹介しよう。こっちだ」

 真尋は、そう告げて歩き出す。くすんだステンドグラスの光が照らす中、ティーンクトゥスの石像は今日も慈愛に満ちた眼差しでその両の手を差し伸べている。
 ジョンが興味深そうにティーンクトゥスの像を覗き込む。プリシラが隣に立って、石像を見上げた。

「慈愛と守護の神、ティーンクトゥス神だ」

「……とっても優しそうな神様ね」

 プリシラが、囁くように言った。ジョンとリースと同じ空色の瞳が柔らかに細められる。

「泣き虫で臆病で愚かだが、俺の知る限り誰より愛情深い神様だ」

 お兄ちゃん、おろしてと唐突に言われてジョンを降ろす。するとジョンは、ティーンクトゥスの足元に行って、ぺこりと頭を下げた。

「神様、こんにちは! 僕はジョンっていいます! こっちは弟のリースだよ! お母さんはね、プリシラって言うの!」

「こんにちはー」

 ジョンが無邪気に挨拶をする。するとリースが、兄を真似る。プリシラが、そんな我が子たちを愛しそうに見つめながら笑って、真尋も自然と笑みが浮かぶ。

「きちんと挨拶が出来て偉いな。きっと、ティーンクトゥス神も感心しているだろう」

 それどころか久々に人の子に声を掛けられて号泣しているかもしれないが。
 ジョンは、お父さんと約束したからね、と誇らしげに胸を張った。

「なら、お母さんもジョンを見習わなきゃね。初めまして、ティーンクトゥス様、私はジョンとリースの母のプリシラです。町にいる間は、ちょくちょくお手伝いに来るので、よろしくお願いしますね」

 プリシラが挨拶をすると、ジョンが、よくできました、と小生意気にも背伸びをして母の頭を撫でた。プリシラは、可笑しそうに笑いながらジョンにお礼を言う。リースが、ぼくも、と強請ればジョンの小さな手はリースの小さな頭も優しく撫でる。仲の良い親子に真尋は、ほのぼのする。この親子は、見ているととても癒されるのだ。

「ところでマヒロさん、どうやってお掃除をするつもりだったの?」

 くるりとプリシラが振り返った。

「それについて悩んでいたところだ」

 真尋はきっぱりと答えて天井を仰いだ。
 だから掃除は苦手なのである。

「一路に先に行っていると言ったはいいが、思っていたよりも酷い有様で途方に暮れている」

「まあ……ふふっ、マヒロさんは何でも出来ると思っていたけど、そうでもないのね」

「俺は、勉学や運動は得意だが、家事の類は一切出来ないんだ。妻に任せきりだったし、そもそも妻と一路に手を出すなと言われていたからな」

「でも、どこかしらに欠点があった方が人は魅力的になれるものよ。私も地図が読めなくて、ジョンにここまで連れて来てもらったんだもの」

 うふふ、とプリシラはのんびりと笑っている。朝、一応、ここへの地図を渡したのだが、迷うほどの道のりでは無い。教会は青の1地区と2地区を隔てる大通りに面していて、山猫亭から辻馬車で二十分ほどのところだ。馬なら十分で着く。

「僕ね、お父さんに地図の読み方教わってるから大丈夫なの。お母さん一人だと、どこへ行っちゃうか分からないからね。村の中でもよく迷子になってるし」

 ジョンが言った。どうやらプリシラは、方向音痴らしい。だからジョシュアの実家に行く時、いつも迎えが来ていたのだろう。安全面だけではなく、そういった面での意味もありそうだ。

「でも、これだけ広いし、隣のお屋敷もってなると大変よ? 人を雇った方が良いかも知れないわ」

「人か、人なぁ……」

 真尋は、プリシラの言葉にため息を零し、難色を示す。

「ここに職人は入れるつもりだ。多分、この辺はその道の玄人に頼まないと酷いことになりそうだからな」

「それはそうね。ブランレトゥには、腕のいい職人さんが多いから安心ね。なら職人ギルドに行かないといけないわね」

「商業ギルドじゃないのか?」

「庭師さんは、貴族様のお屋敷とかお金持ちのお屋敷に行くことの多い職業だから商業ギルドを通すのよ。でもそれは庭師とかコックさんとかメイドさんとかもそうね、一部の大工さんも商業ギルドだけど……こういった専門的な修復は職人ギルドに頼んだ方がいいわ。職員さんが来て、状態の確認をしてぴったりの人を紹介してくれるから」

「色々と複雑なのだな」

「そうね」

「やはり人を雇うのは、ギルドを通した方がいいのか?」

「別に通さずに個人で雇ってもいいのよ。ただ商業ギルドを通すと手数料はかかるけど、しっかりした身元の人を紹介してくれるから安心なの。何かあった時に保証もしてくれるしね」

「ふむ、成程な」

「真尋くーん、お待たせー!」

 一路の声が響いて真尋たちは振り返る。
 一路が一組の老夫婦を連れて、こちらにやって来た。

「後ろの夫婦は、だっ」

 最後まで言い切る前に老夫婦にタックルされた。
 突然のことに流石の真尋も息を詰まらせた。案外痛かったのである。

「ああ、神父様! またお会いできて光栄です!!」

「神父様、その節はどうもありがとうございました!!」

 賑やかな声に目線を下に向ければ、先日、魔物屋ロークで真尋と一路が助けた老夫婦だった。
 確か、夫がルーカスで妻がクレアだ。

「神父様のお蔭で夫は命拾いをしたどころか、何の後遺症も無く、このように歩けております!」

「そうか、それは良かった。治療が早かったのが幸いしたのだろう」

 真尋は、ぽんぽんと二人の背を叩いて離れるように促すが、がっしりと抱き着いた二人は離れる気配がない。流石に困って一路に助けを求めるが、一路は苦笑交じりに肩を竦めた。

「僕からもなかなか離れてくれなかったから。クロードさんが見かねて間に入ってくれたんだよ」

 どうやら一路もこの洗礼を受けたようだった。クロードが話に出て来たと言うことは、この二人とは商業ギルドで会ったのだろう。真尋は、暫し考えた後、まあいいかと二人を放って置くことにした。ジョンとリースが不思議そうに真尋に抱き着いたまままだ延々と何やらお礼を述べている老夫婦を見ていて、プリシラは、マヒロさんは凄いわね、とのんびりと笑っている。

「それで一路、庭師はどうなった? 腕の良いのはいたか?」

「ああ、だからそれが、」

「神父様! 是非とも、神父様のお屋敷の庭は、このオレに任せてくれんかね!」

 ルーカスが漸く真尋から離れて、クレアも夫が離れると真尋から離れてくれた。

「どういうことだ?」

「ルーカスさんは、庭師なんだって」

 一路の言葉に、ルーカスが頷いた。

「最近は、めっきり弟子共に任せっきりだったが、神父様の為ならこのオレ自ら鋏を握るぞ!」

「神父様、夫は年寄りですけど庭師としての腕とセンスは確かなんです。宜しければ、夫に任せて頂けませんか?」

「はい、これ」

 一路が鞄から一通の手紙を取り出して差し出した。真尋はそれを受け取る。マヒロ神父様へと宛名があり、ひっくり返すと蝋封がしてあり、商業ギルドのマークが刻み込まれていた。蝋封を剥がして中身を取り出す。中に入っていたのは、紹介状だ。商業ギルドがルーカスの身元と腕を保証する旨が書かれていて、最後にクロード直筆のサインと捺印がしてあった。封筒の中を見れば、もう一通手紙が入っていた。こちらもクロードからで、ルーカスはブランレトゥでも一、二を争う素晴らしい腕を持った庭師だと書かれていた。他に庭師への給金の払い方だとかが書かれている。有難いことだ。

「こんな偶然があるんだな」

 真尋は、手紙と紹介状を封筒の中に戻しながら言った。

「ルーカス、出来れば、屋敷の庭とこの教会の庭を頼みたいんだが、良いだろうか?」

「勿論! 神父様の為ならいくらでも! なんたってオレの命の恩人だ!」

「神父様、どうぞよろしくお願いします」

 ルーカスは、どんと胸を叩き、クレアがぺこぺこと頭を下げた。

「では……そうだな、皆で庭でも見に行くか。一朝一夕でどうにかなるもんでもないしな」

「真尋くん、僕が来るまで何してたの? 僕、窓という窓を開けておいてって言ったよね?」

 一路のあきれ果てた視線を受け流し、真尋は一行を促して歩き出す。歩きながら、プリシラたちを紹介し、ルーカスが真尋の妻子だと勘違いするのを訂正した。









 一路は、屋敷の窓という窓を開けて、風魔法を使って埃を部屋の外へと追い出していく。教会は、どうやっても修繕が必要だから、まずは屋敷を掃除することにしたのだ。
 三階の部屋のカーテンと絨毯をプリシラが荷馬車で来ていたのでそれに積み込み、洗濯屋へとジョンとクレアが出しに行ってくれた。プリシラは、別の部屋の掃除をしてくれている。掃除の類が全くできない真尋は、邪魔だったので庭の見取り図を描かせて外に追い出した。今は、庭の見取り図を手に、ルーカスとあーでもないこーでもないと話をしている。危険なものだけは、植えるな作るな持ち込むな、と言ってあるが念のため、あとで確認しなければならない。真尋は、好奇心のみで物事を決めることがあるので危険だ。
 一路は、埃を追い出しきった部屋の床に水をぶちまけて、モップで磨いていく。洗剤が泡立って下手をすると滑るので要注意だ。部屋の隅から隅まで綺麗にしていく。
 一路が掃除しているのは、客間の一つだ。無駄に広い。というか一つ一つの部屋が無駄に広いのだ。立地と図書室と温室という三つの条件だけで決めてしまったことを後悔するぐらいには、屋敷は広かった。

「イチロくん、こっちは終わったわよ」

 のんびりした声に振り返れば、頭に布巾を被り、エプロンを付けたプリシラがモップと桶を片手に立って居た。リースがプリシラのスカートにしがみついている。一路は、手を振って先ほど床にぶちまけた水をかき集め、水の玉にするとそれを桶の中に入れる。綺麗だった水は、床の汚れのせいで黒ずんでいる。

「イチロくんも魔法が上手なのねぇ。お掃除に属性魔法をこんな風に使うの初めて見たわ」

 プリシラが感心したように言った。
 一路は、普通って難しいなと思いながら、笑って誤魔化す。

「それにしても、広いお屋敷ね」

「温室と図書室と立地を気に入ったんですけど、この大きさにちょっと後悔してます」

 一路が苦笑交じりに告げるとプリシラはそうね、と頷いた。

「これだけ大きいと管理が大変そうだもの。やっぱり商業ギルドで人を見つけてきた方がいいと思うのだけど……マヒロさんはあんまり乗り気じゃないみたいだったわ」

「あー、まぁ、そうでしょうねぇ」

 一路は歯切れ悪く答えて、指で頬を掻く。

「真尋くんって、凄く綺麗な顔してるでしょう?」

「私、あんなに綺麗な人って初めて見たわ。感動する位に綺麗よね」

 プリシラが言った。

「それに性格もちょっと俺様だけど、優しいし、包容力もあるしで、はっきり言えばモテるんですよね。真尋くんの家は、お金持ちで、ご両親が忙しい方だったからメイドさんが居たんです」

 正確に言うと家政婦さんだが、ここではメイドさんの方が通じるだろう。

「真尋くんが十三歳になるまでは、真尋くんのお父さんが子供のころから彼の家でメイドさんとして働いてくれていた女性がいたんですが、その方が年齢を理由に引退して、新しい人を雇ったんです。まだ若い女性だったんですが、それが最悪で……当時から真尋くんは大人びていたし、年齢の割に背も高くて……それで真尋くんに、なんというか、まあ、その、夜這いをかけたんですよ」

 プリシラが、まあ、と目を丸くした。リースはきょとんとして母親を見上げている。

「勝手に家の合鍵を作って、夜中に侵入して真尋くんに乗っかったんです。幸い、未遂だったんですけど。真尋くんは武道を嗜んでいるし、相手は女性だったんで組み伏せで縛り上げて騎士団に突き出していましたけど、思ったより心の傷は深かったんですよね。幾ら大人びているとはいえ十三歳の子供ですから、夜中に全裸の女が上に乗っていたら驚きますし、怖いですよね」

「そうねぇ、それは嫌だわ。トラウマものよ」

 でしょう?と一路はプリシラの言葉に返す。
 真尋は、当時のことを詳しく話してくれたことは無いが、多分、その女は無遠慮に触ったり、何かしたりしたに違いないとある程度成長してから一路は気付いたのだ。当時はまだ保健体育程度の知識しかなかったので、そこまでは考えが及ばなかった。

「それはそれはご両親が怒り狂って、以来、人は雇わなくなりました。雪ちゃんの家のメイドさんが真尋くんちを手伝うようになって、真尋くんが自分でどっからか人を見つけてきたのもあって、平和は取り戻せました。雪ちゃんが十五になると掃除も洗濯も彼女がするようになりましたけどね」

「マヒロさんも苦労しているのねぇ」

「……真尋くんて無表情だし、本当に滅多なことじゃ動揺しないし、慌てないけど……あの時ばかりは、ダメージは大きかったみたいです。あれ以来、真尋くんは、人の気配に敏感になって眠りが浅いんですよ」

「なら、宿屋じゃ気が休まらないんじゃない?」

 プリシラが心配そうに眉を下げた。
 一路は、はい、と頷く。

「本人はあの通りケロッとしてますけど、日に日に睡眠時間が短くなっているのは確かです。毎晩、僕より後に眠って、先に起きるんですよ。ベッドの上の本を片付けないのも、多分、僕のベッドで眠る何かしらの理由が欲しいんだと思います。それこそ宿屋には、不特定多数の人間が出入りをしていますからね」

 まだ森の中に居た頃の方が、真尋の眠りは深かったし、時間も長かった。雪乃が居れば、真尋はもっと安心して眠れるだろうが、居ないものは居ないのだ。一路ではどうしてやることも出来ない。故に一路は口で何だかんだ言いつつも、本気で真尋のベッドの上の本を片付けようとは思って居ない。

「だからまた、ジョンくんを貸してくださいね。ジョンくんが居れば夜更かししなくなって、多少は睡眠時間が伸びるので」

「うちの子で良ければ幾らでも貸し出すわよ。あの子も、お兄ちゃんお兄ちゃんってずっと言っているのよ。昨日もおばあちゃんちで終始、お兄ちゃんお兄ちゃん言っていたから、おじいちゃんが焼きもち妬いてたわ」

 プリシラが可笑しそうに笑って言った。
 ふと、開けっ放しの窓の向こうから賑やかな声が聞こえて、一路とプリシラはバルコニーへと出る。
 どうやらクレアとジョンが戻ってきたようだ。プリシラの乗って来た荷馬車が庭先にあって、ジョンが真尋にじゃれついていた。

「ジョンくーん、おかえりー!」

 一路が声を掛けるとジョンがぱっと振り返ってぶんぶんと両手を振る。

「イチロお兄ちゃん、リース、お母さん、ただいまぁ! クレアおばあちゃんとご飯買って来たよ! お外で食べよう!」

「一路! ここに毒草園を作ってもいいか? 人食い花とか呼ばれる花があってな、実に興味深いんだ!」

 くるりと振り返った真尋がこちらを見上げて言った。

「なっ、良い訳ないでしょ!? 言ったよね!? 庭に危ないものは、植えるな、作るな、持ち込むなって!!」

「何で?」

「何でってこっちが何でだよ! どうして僕が許可すると思ったの!? 馬鹿なの!?」

 鈴木一路、渾身の叫びである。
 真尋と一路のやり取りにプリシラたちの笑う声が広い庭と屋敷に賑やかに響くのだった。








 西の空が鮮やかな夕焼けに染まって、降り注ぐ光が世界を橙色に温かく染め上げている。
 真尋と一路は帰路についていた。馬でやって来て正解だった。思ったよりも掃除というものは疲れると馬上で揺られながら真尋は首を回した。先頭を一路が行き、その後にプリシラが続き、真尋はその後を追う。真尋の膝の間には、ジョンが居てうつらうつらと船を漕いでいる。はしゃぎ疲れて眠いのだろう。
 今日は、屋敷の三階の半分の掃除が済んだ。また明日もプリシラたちが手伝いに来てくれると言うし、クレアも快く頷いてくれた。ルーカスも明日からは弟子たちを連れて来て、本格的に取り掛かってくれるそうだ。毒草園は一路が断固拒否したため諦めたが、迷路は作っても良いと許可が出たので、ルーカスが張り切っていた。真尋がルーカスに頼んだのは、区画を分けて様々な趣のある庭を作って欲しいというものだ。真尋には庭の事はさっぱりなので、金は出すからルーカスの好きにしていいと言ったら、ルーカスは、腕が鳴るぜ!と少年のように顔を輝かせていて、今夜、張り切って最初に取り掛かる予定の区画のデザインを考えて来ると意気込んでいた。この間、あんな大怪我をしたばかりだというのに、元気な爺さんである。

「……おっと」

 ぐらりとジョンの体が前に揺らいで慌てて腕を回して引き寄せる。本格的に眠りに入ってしまったようだ。これでは危ない、と真尋は指を振って鞄から取り出したローブを荷車の荷台に敷いた。その上に風の魔法でそっと持ち上げたジョンを寝かせる。気付いたプリシラが振り返って、あらまあ、と苦笑を零した。ついでにお願い、と言われて御者席に座るプリシラに抱き着いて眠っていたリースも風の力で持ち上げてジョンの隣に寝かせた。一路もジョン達が眠ってしまったことに気付くと自分のローブを取り出して二人の上に掛けた。

「疲れたのね」

「たくさん手伝ってくれたからな」

 プリシラが手綱を操りながら言った言葉に真尋は頷いて返す。

「おーい! プリシラ!」

 駆ける蹄の音が増えて振り返れば、ジョシュアがこちらにやって来て、横へと並んだ。

「あら、ジョシュ、ゴーシュ達は?」

「あいつらは、宿へ行ったよ。ちょっとジルコンに頼まれごとをしてそれを片付けてたんだ。ゴーシュ達は今夜泊まって、明日の早朝に発つんだと。なんだ、ジョン達は寝ちゃったのか」

 ジョシュアが、荷台の上でくっついて眠る我が子に気付いて表情を緩める。

「掃除を手伝ってくれてな、はしゃいでいたから疲れたんだろう」

「邪魔はしなかったか?」

「とんでもない。本当に良く手伝ってくれたよ」

 真尋の言葉に、ジョシュアは、そうかと嬉しそうに頷いた。ジョシュアは割と親馬鹿の気があると思う。
 車輪の音、馬の蹄の音が夕陽の沁みる石畳の上に刻まれて行く。夕食の支度をそこかしこでしているからか、町は煙の匂いが濃くなる。酒場から灯りが漏れ始めて、通りを行く人々は足早だ。

「昨夜、行って来たんだ」

 ジョシュアは夕焼けを見上げたまま言った。

「レイの家に、昨夜、行って来たんだよ」

「そうか」

「門前払いだった。ドアは開けてくれたが、中には入れてはくれなかった。サンドロが作ってくれた夕飯を無理矢理渡してきたが、食ったかどうだか」

 ジョシュアが肩を竦めて目を伏せる。
 寂しげな微笑みがその横顔に浮かんだ。プリシラが気遣わしげに後ろを振り返ったが、真尋に目で「お願いね」と告げると顔を前に戻して、一路と他愛ない話をする。

「……偽善者は嫌いだとさ」

 ほんの少し、ほんの少しだけ彼の声が震えたような気がしたけれど、夕暮の喧騒が邪魔をして断言はできなかった。ただ、セピア色の瞳は、酷く寂しそうに揺れている。

「この間、ジョンと市場通りに行った日、あの馬鹿に会った」

 ジョシュアが弾かれたように顔を上げた。

「一路とジョンが、クッキーの店に行きたいと言うから、俺は外で待っていたんだ。その時、あいつが孤児の少女から、花を買ったんだ。誰にも見向きもされない少女から一輪の萎れた花をあいつは買ったんだ」

「……レイが?」

「ああ。それで声を掛けたんだが、案の定、睨まれてな。ソニアの話をしたら、ジョシュアたちの言っていた通り、ソニアがミモザの葬儀に来なかったことを気にしている様だった。……あいつと話してみて気付いたのは、あいつは今、孤独に守られているのだということだ」

 歩道の上に親子がいる。買い物かごを下げた母の手を引いて、ジョンより少し小さな女の子が笑っている。母親は、笑いながら少女の手を握り返して何かを告げれば、少女は増々嬉しそうに笑った。どこにでもあるような、平和な光景だ。

「孤独に守られているとな、それはそれで利点があるんだ。何だと思う?」

「…………さあ? 寂しいだけじゃないのか?」

「確かに寂しくて、虚しいが……傷付かずに済むし、喪わずに済むんだ」

 目だけを向ければ、ジョシュアが目を瞠ったのが見て取れた。

「だから、あいつは今、独りでいるんだ。どれだけ強い人間でも、大切なものを喪ってばかりいると弱くなってしまうからな」

 ジョシュアが、手綱をきつく握りしめた。馬の足が少し乱れて、ジョシュアは慌てて力を弱める。

「でも、あいつは、花を買った。襤褸を纏った孤児が売っていた萎れた花を買ったんだ。そして、あの小さな頭を撫でた。……なあ、ジョシュア。知っているか? 人というものはな、知らないことは出来ないんだ」

「知らないことは、出来ない?」

「ああ。知らないことは出来ない。優しくされたことのない人間が、誰かに優しくすることは出来ないんだ。だって、知らないからな。あの馬鹿は、気付いていないんだろうな……頭を撫でられたことの無い人間は、子どもの頭を撫でることはない、と。あいつは独りでいようとして、全てを拒んでいるのに……自分でも気づかぬ内に遠い昔に自分が貰った愛や優しさを、孤児に分けたんだ」

 あの灰色の髪を撫でたのは、母の細い手だったかも知れない。父の力強い手だったかもしれない。ジョシュアやサンドロの温かい手だったかもしれない。ソニアの優しい手だったかもしれない。もしかしたら、それら全部かも知れない。

「大丈夫。あいつは愛を忘れてはいない、優しさだってちゃんと持っている。あいつが吐き出す言葉はお前に向けられた矛かも知れないが、同時にあいつの心を守る盾なんだ。だからそんな安っぽい盾は、壊してしまえ」

 真尋はふっと笑って告げた。ジョシュアは、ぱちりと目を瞬かせた後、くしゃりと笑う。

「ははっ、マヒロは相変わらずだなぁ……でも、ありがとう。分かってはいたんだが、やはりあいつにああいう風に拒絶されるのは、想っていたよりも辛かった。俺はあいつが生まれた時から知っているんだ。大事な家族みたいなもんだからな」

 ジョシュアは、そう言って気合を入れるように両手で自分の頬を叩いた。

「よし、今夜もサンドロに夕飯を作ってもらって行って来る」

「その意気だ。多分、あいつは最後の最後には、お前を無碍には出来まい。押して押して押しまくれ」

 ジョシュアは、ああ、と頷いて顔を上げた。その横顔は、先ほどと違ってすっきりしていた。
 それからは今日有ったことの話ながら山猫亭へと馬を進める。ほどなくして山猫亭に着くと一路が真尋を振り返る。

「真尋くん、ちょっと早いけど、僕、このままティナちゃん迎えに行って来るから」

「ああ。気を付けてな」

 一路は、うん、と頷くと手綱を操り、冒険者ギルドへとティナを迎えに行った。
 プリシラが店の裏手へと入って行き、真尋とジョシュアも厩に愛馬を預けるためにその後に続く。

「何で一路がティナを迎えに行くんだ?」

 馬から降りながらジョシュアが首を傾げた。
 そういえば、昨夜、ジョシュアが不在だったから一路はまだ彼には話をしていないと言ったのを思い出した。真尋も帰って来るのが遅かったので、昨夜はジョシュアには会わなかったのだ。

「まだ夕飯まで時間はあるか……ジョンも寝ているし、丁度いい。そのことで話がしたいから俺達の部屋に来てくれるか?」

「何かあったのか?」

「色々な」

 色々?と首を傾げながらジョシュアは馬を預けると荷台からジョンを抱き上げた。真尋はリースを抱き上げる。実は、今日一日で結構懐いて貰えたのだ。リースもジョンも余程深く眠っているのか、起きそうにない。プリシラが、真尋と一路のローブを手に御者席を下りれば、馬番たちが後は片付けてくれる。
 真尋とジョシュアは、そのまま裏口から中へと入り、彼ら親子の部屋へと向かう。
 プリシラが先に中へ入って、言われるまま二人をベッドに下ろした。

「本当に良く寝ているな」

「今日、お昼寝をしなかったから。……このまま朝まで寝ていてくれないかしら」

 プリシラが割と真剣に言っている。母親とは大変だな、と真尋は思いながらジョシュアを借りると告げて、部屋を後にする。階段を上がって、自分達の部屋へと向かう。

「ジョンたちが寝ている間に話しておこう。レイの所に行くなら、あいつからも話も聞いておいて欲しいんだ。あれでも一応、Aランクの冒険者なんだろう?」

「……マヒロ、これどこに寝ているんだ?」

 本で溢れかえる真尋のベッドを指差してジョシュアが言った。

「一路が小柄であることに、毎夜、感謝して眠っている」

 その返事にジョシュアが、イチロは大変だな、と苦笑を零した。
 だが、真尋が大事な話なんだが、と前置きすれば、ジョシュアは表情を引き締めた。生憎と椅子はないので、立ったまま真尋は昨日の出来事を掻い摘んで話す。掃除で汚れた服でベッドに座ろうものなら、一路に拳骨を落とされることくらい、真尋だって知っているのだ。
 話が終わるとジョシュアは、珍しく眉間に皺を寄せて、考え込む。話をしている間に大分部屋が暗くなって、真尋はランプに灯りを入れる。

「……何者なんだろうな。ザラームとかいう男は」

「さあな。それをリック達が洗っている」

「そんな物騒な魔法は聞いたことが無い。俺はあんまり魔法には詳しくないんだが……魔導院の魔導院長であるナルキーサス殿なら何か知っているかもな」

「魔導院長?」

「ああ。この町というか、アルゲンテウス領の魔導師及び魔術師の最高位に居る方だよ。子爵夫人で少々変わった趣味の方だが、その実力と知識だけは確かだ。ただ……とてもお忙しい方だからおいそれとは会えないんだけどな」

「その辺は、騎士たちが既に話を聞いているだろう。とりあえず、そういうわけだからすまないが、ジョシュアに手を借りることもあるかもしれない」

「マヒロには世話になっているし、この町は俺の生まれ育った町だ。協力は惜しまないさ。昔馴染みに話を聞いてみるよ」

「深入りはするなよ。さっきも言ったが、騎士が一人、既に犠牲になっているし、罪なき老人も消されている。お前には、絶対に泣かせてはいけない家族がいるんだ。……まあ、巻き込んでしまった俺が言えることでもないがな」

 真尋は、自嘲気味に言って肩を竦めた。

「馬鹿を言うなよ。巻き込まれているのは、マヒロ達もだろ」

 そう言ってジョシュアは、朗らかに笑う。本当に人が良いのだから、と真尋は苦笑を零した。





――――――――― 

ここまで読んで下さって、ありがうございました!!
お気に入り登録、感想に日々、活力と意欲を貰っています><

真尋は自分の弱点をきちんと理解しているし、それとうまく付き合っているつもりですが、幼馴染兼親友歴十五年の一路は騙せないのです。

また次回のお話も楽しんで頂ければ、幸いです。
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