見えない明日に揺れる僕たちは

多田莉都

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第2章

体育大会 1

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「そんな走るだけのスポーツ楽しいの?」

 陸上部で短距離を専攻している、と言うと、たまにそんなことを聞いてくる人がいる。
 その問いに僕は
「楽しいよ」
 と僕は答えている。

 陸上競技、特に短距離はすごくシンプルなスポーツだと思う。
 100m走はシンプルだ。結果が10秒ちょっとで決まってしまう残酷な世界。でも、そこにはサッカーや野球にあるような奇跡は起きない。強い者が勝つ、自分が全て――それが陸上の魅力だ。

 小学生の頃からランニングスクールに通っていた僕は、学校の運動会で負けることはなかったし、選抜リレーもいつも出場していた。
 中学に入ると陸上部に入った。2年夏には県大会、北信越大会を突破し、100mで全国大会に出場することができた。
 さすがに入賞には程遠かったが、自分の位置がわかったことは収穫だった。




「じゃ、選抜リレーは月島と中里で」

 体育委員の根岸ねぎしの声に、蒼真と僕が軽く手を挙げて同意する。
 五時間目、六時間目を使って、男子と女子に分かれて体育大会の出場競技を決める会をしていた。
 今年も僕はリレー選手に選ばれた。生徒一人ひとりが全員競技や学年種目以外にも何かしら一種目は出場しなければならないのだが、僕は基本的に選択権がなくリレー選手となる。リレーを走ることは好きだし、負けると思って出場するつもりもない。
 その他の種目も出場者が決まり、会は終わった。
 クラスに戻るとまだ女子は決まっていなかったようだが、数分遅れで女子たちも教室に戻ってきた。ホームルームがあって放課後になると、美咲が僕に話しかけてきた。

「佑はやっぱりリレーなん?」

 美咲は、僕が小学校からずっとリレーに出ていることを知っている。僕は「うん」と頷く。

「美咲も、だろ?」
「うん、今年も出るよ。女子は私とさくら」

 美咲もまた小学生の頃から足が速くて、リレー選手常連だった。美咲とテニス部の高峰さくらが出るなら申し分ないメンバーだ。

「今年の三年の青龍は強いんじゃないかなー」

 ウチの中学の体育大会では、色別に神話の獣が割り当てられている。
 僕らのクラスの色は「青」で、「青龍」となっている(ほかには黄 ⇒ 「玄武」、白 ⇒ 「白虎」、赤 ⇒ 「朱雀」がある)。

 選抜リレーは各学年から色別に男女合計4人が選ばれる。今年のクラスは女子も速いし、たしかに強そうだ。
 美咲は、ほかの女子たちが何に出場するかも教えてくれて、その中で柴崎彩夏はパン食い競争に出るのだと教えてくれた。
 体育大会が近づくにつれて準備も慌ただしくなってきた。
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