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「エンシェントリリーがまたやったぞ!」
「これでまた新しい古代魔術が使えるようになったのか……このまま全てを解き明かすんじゃないか」
「エンシェントリリーならやりかねんな」
王宮魔法使い達は興奮気味に新聞を見つめる。記事にはとあるオメガによって古代魔術が解明されたと記されていた。オメガの名はリリー。一部の間では、エンシェントリリーの名前で知られている。
「エンシェントリリー? 誰のことだ?」
「アンドレード公爵!」
仕事で城に来ていたガイン=アンドレードは魔法使い達に尋ねる。初めて聞く名前が気になったのは『古式魔術』というワードも一緒に聞こえたから。古式魔術はかつて彼が愛したベータが学んでいたものだった。いや、今もなお彼を愛し続けている。だからこそ足を止めたのだ。
「エンシェントリリーなんて初めて聞いたが有名なのか?」
ガインに話しかけられ、魔法使いは驚いている様子だった。けれどもう一度そう繰り返せば、焦ったように教えてくれた。
「エンシェントリリーはこの三年で古代魔術を五つも解き明かした天才で、魔法使いなら知らない者はいないと思います」
「ただし顔も第一性も年齢も本名も全て不明。分かっているのはオメガの保護施設に入っていることと、一年前に突然現れたことだけです」
魔法使いの話によると、オメガの保護施設に入っているため、個人情報のほとんどが伏せられているという。リリーという名前も本人が決めたものではなく、施設に入る際に与えられた名前だと言う。彼らは施設内と施設外で仕事をする際、その名前を使用することが義務付けられている。
この名前も所属する施設ごとに規則性があり、リリーがいる施設では花の名前を使っているそう。偽名を使うのはオメガ達のプライバシーを守るため。施設に辿り着いたオメガは皆、何らかの理由を持っているのだ。
ガインは王国内にオメガの保護施設がいくつかあるのは知っていたが、細かいことは知らなかった。魔法使いもリリーという名のオメガが論文を上げるようになってから調べたそうだ。
この『リリー』と言う名前も今現在使用しているオメガが施設を出れば、また次のオメガに同じ名前が与えられる。歴代何人ものリリーが施設を出てきた。そのためリリーの中でも特に古代魔法を解き明かす天才である今代のリリーを『エンシェントリリー』と特別な名前で呼ぶようになったのだそうだ。
「エンシェントリリーが提出した論文を読むまで、ここまで頭のキレるオメガがいるなんて思いもしませんでした」
「『才能の魔法、努力の魔術』か」
「なんですか、それ?」
「とあるベータの言葉だ。魔法は才能がなければ使えないが、魔術なら努力をすれば使えると。あの時の彼はまだ勉強中だったが、今なら使いこなせているんだろうか……。論文はどこで読める?」
そのベータ、ヘンリー=オディールはガインの恋人であった。いや、学園にいた頃に出会った彼と別れたつもりなどない。ベータであるヘンリーと生涯を共にする条件として父から出された試験をクリアしたら、すぐにでも結婚するつもりだった。そのためにガインは二年もヘンリーから離れ、遠い国へと向かった。
勉強が好きで、そのために特待生の座をもぎ取ったはずのヘンリーだが、なぜか卒業を待たずして退学してしまった。その後の行く先はもちろん、学園に理由を聞いても個人情報の一点張り。連休中に退学手続きを済ませたため、同級生ですら知らないと言う。
ヘンリーが消えて早数年。ガインは未だに彼の行方を探しているが手がかりすら掴めていない。何でもいい。彼を思わせる何かが欲しかった。
例えそれがどこの誰かも知らぬオメガの解いた魔術だとしても。
「王立図書館にあります」
「エンシェントリリーの論文は人気ですから、転写本もあるはずですよ」
「礼を言う」
ガインは魔法使い達に礼を告げ、魔王使い達の前から去る。その足で王立図書館へと向かった。目的はもちろん、エンシェントリリーの論文である。
「これでまた新しい古代魔術が使えるようになったのか……このまま全てを解き明かすんじゃないか」
「エンシェントリリーならやりかねんな」
王宮魔法使い達は興奮気味に新聞を見つめる。記事にはとあるオメガによって古代魔術が解明されたと記されていた。オメガの名はリリー。一部の間では、エンシェントリリーの名前で知られている。
「エンシェントリリー? 誰のことだ?」
「アンドレード公爵!」
仕事で城に来ていたガイン=アンドレードは魔法使い達に尋ねる。初めて聞く名前が気になったのは『古式魔術』というワードも一緒に聞こえたから。古式魔術はかつて彼が愛したベータが学んでいたものだった。いや、今もなお彼を愛し続けている。だからこそ足を止めたのだ。
「エンシェントリリーなんて初めて聞いたが有名なのか?」
ガインに話しかけられ、魔法使いは驚いている様子だった。けれどもう一度そう繰り返せば、焦ったように教えてくれた。
「エンシェントリリーはこの三年で古代魔術を五つも解き明かした天才で、魔法使いなら知らない者はいないと思います」
「ただし顔も第一性も年齢も本名も全て不明。分かっているのはオメガの保護施設に入っていることと、一年前に突然現れたことだけです」
魔法使いの話によると、オメガの保護施設に入っているため、個人情報のほとんどが伏せられているという。リリーという名前も本人が決めたものではなく、施設に入る際に与えられた名前だと言う。彼らは施設内と施設外で仕事をする際、その名前を使用することが義務付けられている。
この名前も所属する施設ごとに規則性があり、リリーがいる施設では花の名前を使っているそう。偽名を使うのはオメガ達のプライバシーを守るため。施設に辿り着いたオメガは皆、何らかの理由を持っているのだ。
ガインは王国内にオメガの保護施設がいくつかあるのは知っていたが、細かいことは知らなかった。魔法使いもリリーという名のオメガが論文を上げるようになってから調べたそうだ。
この『リリー』と言う名前も今現在使用しているオメガが施設を出れば、また次のオメガに同じ名前が与えられる。歴代何人ものリリーが施設を出てきた。そのためリリーの中でも特に古代魔法を解き明かす天才である今代のリリーを『エンシェントリリー』と特別な名前で呼ぶようになったのだそうだ。
「エンシェントリリーが提出した論文を読むまで、ここまで頭のキレるオメガがいるなんて思いもしませんでした」
「『才能の魔法、努力の魔術』か」
「なんですか、それ?」
「とあるベータの言葉だ。魔法は才能がなければ使えないが、魔術なら努力をすれば使えると。あの時の彼はまだ勉強中だったが、今なら使いこなせているんだろうか……。論文はどこで読める?」
そのベータ、ヘンリー=オディールはガインの恋人であった。いや、学園にいた頃に出会った彼と別れたつもりなどない。ベータであるヘンリーと生涯を共にする条件として父から出された試験をクリアしたら、すぐにでも結婚するつもりだった。そのためにガインは二年もヘンリーから離れ、遠い国へと向かった。
勉強が好きで、そのために特待生の座をもぎ取ったはずのヘンリーだが、なぜか卒業を待たずして退学してしまった。その後の行く先はもちろん、学園に理由を聞いても個人情報の一点張り。連休中に退学手続きを済ませたため、同級生ですら知らないと言う。
ヘンリーが消えて早数年。ガインは未だに彼の行方を探しているが手がかりすら掴めていない。何でもいい。彼を思わせる何かが欲しかった。
例えそれがどこの誰かも知らぬオメガの解いた魔術だとしても。
「王立図書館にあります」
「エンシェントリリーの論文は人気ですから、転写本もあるはずですよ」
「礼を言う」
ガインは魔法使い達に礼を告げ、魔王使い達の前から去る。その足で王立図書館へと向かった。目的はもちろん、エンシェントリリーの論文である。
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