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可愛い彼女と俺の恋
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しおりを挟む「……それで、何で湊人くんだけ豚角煮弁当にされたの?」
「私も気になったから茉莉ちゃんにメッセで訊いたの……えっとねー、『予算の関係上』だって! どうしても茉莉ちゃんが買いたいお菓子があったみたい」
「何それすっごく面白い! 湊人くんめちゃくちゃ馬鹿にされてるじゃない!」
「若者言葉で言うとあれかな? 『クソワロタ』とか『草生えた』とか言うのかな?」
「かっちゃん、それインターネットの言葉だから会話では言わないんじゃない?」
「えっ??! よっちゃん、『クソワロタ』ってインターネットでしか使わないのか? そういうもん?」
「いいじゃないかぁ豚角煮も美味しかったんだろういいなぁお酒に合いそうだなぁ。明日も北海道フェアやってるのかな? やってるなら行こうかな?」
「それいい! 明日みんな予定無いし晴ちゃんも楽になったし♪ なっちゃんの家へ遊びに行ってさぁ、みんなでランチしたら楽しそう!」
「お父さんお母さんだけじゃなくておじちゃんとおばちゃんも遊びに来てくれるの? 来てきて~♪♪」
「じゃあビール飲んでもいい? 肉もいいけど海鮮もいいよなぁ。そしたらビールじゃなくて日本酒かなぁ?」
「お父さんはお酒飲んでもいいけど、絶対に酔い潰れて寝ないでよ? 私と湊人の新居なんだからっ!」
(えーっと……なんなんだ? この空気感。
夕方まで高校生カップルの相手して疲れたと思ったら、今度は夏実とアラ環4人でわいわい騒いでる中に放り込まれたぞ、知らない内に)
滉と茉莉の勉強会が終わって親父とお袋を迎えに行こうとしたら、予定より帰宅が早まってもう帰ってきてるという事だった。
だから俺も北海道フェアとやらに寄って適当に土産物を買って両家に渡そうとしたらこうなってしまった。
俺は薗田家で急遽夕食のお呼ばれと土産物のお披露目会という、親戚の集まりさながらの賑わいに連れ込まれ……既にそれが数時間経過している。
(しかも息子の家って意識が無いのかお袋は! なんだ「なっちゃんの家」って!! せめて夏実みたいな「2人の新居」って言い方しろよ!!
夏実も夏実だ!!滉と茉莉を呼んだ翌日にまた訪問客かよ?自分達の親だけど安請け合いしないでほしいんだけど!!)
そんなわけで、俺と夏実が帰宅したのは22時過ぎ。
色んな意味で濃い14時間を過ごした俺は心身ともにクタクタだった。
「私、先にお風呂入ってくるね」
「あー、俺も早く汗流したいから長風呂控えてくれる?」
「湊人もお疲れだもんね。サッと済ませてくるねー♪」
いつものように夏実から先に入浴を済ませてもらうことにして、俺は可能性としてあり得るかもしれない両家からの寝室チェック対策と、翌日のタイムテーブルの整理を同時に行う。
(えーっと、明日の11時に車で迎えに行くから明日は早めに起きてベッドシーツの交換と消臭スプレーかけるのと……いや、スプレーよりはアロマとか焚いてみた方がいいんだろうか?買わなきゃ無いんだけど。
あと、ゴムは一個だけ残しといて箱はどっかに隠して……ゴミ箱の中身も空にしとくのを朝忘れないようにしないとだな)
……とまぁ、そんな事を脳内で展開させつつ、冷蔵庫から今日のジュースの残りをグラスに注ぐ。
「それにしても今日はすげー疲れた……」
夏実のグラスはカウンターに置いて、自分のはその場で一気飲みして一息を吐いた。
「夏実には長風呂控えてって言ったけど、なんだかんだでしばらく時間かかるよなぁ……」
この時間帯、決まったテレビ番組を観てはいないのだが何気なくリビングの部屋中央にボーっと立ってテレビのリモコンを操作しようとしたら
「湊人お待たせ~!!」
タックルに近い夏実のハグが突然やってきてデカい俺の身体はいとも容易く倒される。
「いっ!! たあ!!!!」
立ってた周囲には何もない筈なのにガンッとかゴツッとかいう音の直後に頭と腰に激痛が走った。
「わあ! ごめん湊人!! 痛かった? 痛かった?」
夏実もまさか俺が派手に転ぶなんて想像つかなかったんだろう。
俺の片腕で抱え込んだ夏実は、顔だけ視界全体にひょこっと現し、心配そうに俺を見つめる。
「ごめんね湊人……いつものようにハグしたつもりだったんだけど今日は疲れてたんだもんね。ごめんね、しなきゃ良かったね」
俺の視界いっぱいに現れた夏実は大きな瞳から涙をじんわりと滲ませ、汗でベタつく俺の頭を優しく撫でている。
「夏実……」
「しかも私、上に乗っかっちゃってるから苦しいよね? 辛いよね? すぐに退くから、本当にごめん」
俺は7年前にも、今と同じ夏実の表情をこの目で見た事があった。
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