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猫になる
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夕紀さんに勧められたとはいえ、このルームウェアを買おうと決めたのは、りょーくんと一緒に観ていたテレビ番組で可愛い黒猫が登場した際に出た彼の呟きを記憶していたからだ。
ーーー
『俺……昔、黒猫が飼いたかったんだよね。
店長の知り合いの家で子猫が生まれたっていう話を聞いた時、本当は我が儘通してでも一匹引き取りたいなって思ってて。現実的に無理だから我慢するしかなかったんだけど。
……でもやっぱり可愛いなぁ、黒い猫。いつか飼いたいなぁ』
ーーー
その話をするりょーくんの切ない横顔にまたキュンときたから……だから夕紀さんのスマホで猫耳猫尻尾がついた黒いルームウェアのサンプル画像を目にした時に「これだ!」って思った。
「今日だって……あんな気持ちの良いキスするんだもん……りょーくんイケメンだしあんなに素敵でエッチなキスをしたらみんな好きになって恋しちゃうよぉ」
ルームウェアの段ボール箱がお店に届いた日に偶然経験した、りょーくんとのセカンドキス。
それは経験も想像もした事がない……とても甘くて熱いキスだった。
空気が読めず、どうしたらいいか分からないくらい頭の中がポーッとした。
私の耳を舐めるりょーくんの舌も…かける吐息も……全部が気持ち良くて、私はどう反応すればりょーくんの望む女の子になれるのか真剣に考えて行動しなくちゃいけないのに何も出来なかった。
ただただ彼の甘くて熱い行為に酔いしれ、何も出来ない自分が情けなくて涙が出てきたんだ。
「だってあの時、あーちゃん泣いてただろ?」
私の言葉が信用出来ないといった様子で、りょーくんは驚き声を震わせている。
「怖くて泣いたんじゃないの。声しか出せない自分が情けなくて失望してただけ……」
「じゃあ俺……あの時、あーちゃんに本当に酷い言葉を」
「りょーくんは気に病まなくて良いよ。そりゃ、私の今までの様子を見てたらそう思って叱りたくなるの分かるから。
『女性を取っ替え引っ替えの野獣くん』の噂の真意は分からないけど、女の人がみんなりょーくんを好きになっちゃう理由はすっごく分かる」
夕紀さんの優しい言葉や美味しいカフェ・オ・レに励まされて、このルームウェアを身に付けた時私は心の奥底でこんな事を思っていた。
(りょーくんが大好きな黒猫の姿になって、またあの甘くて熱いキスをしてみたい。
りょーくんがまだ私を好きで居てくれるなら、私はもっともっとりょーくんに歩み寄らないといけないんだ……)
「りょーくんに振られてしまうなら仕方がない諦めようって思った。
だけどりょーくんの口から『昼間の言葉は嘘』って聞けてすごく嬉しいし、まだ男の人に体を触られるのは怖い気持ちもあるんだけど『大好きなりょーくんになら触られてもいい』って思ってるよ」
「それ、本当?」
りょーくんの声に震えは無くなったけど、まだ驚きの表情のままでいたから
「本当だよ。嘘つかれるの苦手だし、嘘つくのも下手だから」
私は両手で彼の大きな手を持ち上げて、私の猫耳フードにポンと乗っけてみせた。
「えっ?!」
「猫耳や頭を触って。フード越しで直接じゃないんだけど、まずはそこから……。
あとね、猫尻尾も触っていいよ。ふにふにで柔らかくて気持ち良くってオススメなんだ」
「いいの?」
りょーくんはまだ信じられない気持ちでいるのかもしれないけど、ソファの手摺りから完全に降りて立ち上がり、一歩私に近付いて触りたい気満々でいるのが可愛いと感じる。
「うん」
「お尻には触らないように気をつけるよ、勿論」
「じゃあ、尻尾を触りやすいように背後を向いておくね」
「うん」
お互い「うん」で相槌を打ち、私がくるりと180度回転すると
「本当だ……ふにふにしてて柔らかくて気持ち良い♪」
背中側からりょーくんの嬉しそうな声が聞こえて私はとっても嬉しくなる。
「本物の猫尻尾とは違うんだろうけどね♪」
「本物の猫だとそもそも尻尾を触れないからね。ルームウェアなら触り放題だ♪」
「りょーくんに触ってもらいたくて着てるようなものだから、私がこれ着てる時はいつでも触って良いからねっ♡」
この会話で完全に仲直り出来た気に私は既になっちゃっているし
「ふふ♡」
「えへ♡」
尻尾から手を離したりょーくんの方へ再び振り返り、微笑み合うのはやっぱり癒されるし幸せな瞬間だと感じた。
ーーー
『俺……昔、黒猫が飼いたかったんだよね。
店長の知り合いの家で子猫が生まれたっていう話を聞いた時、本当は我が儘通してでも一匹引き取りたいなって思ってて。現実的に無理だから我慢するしかなかったんだけど。
……でもやっぱり可愛いなぁ、黒い猫。いつか飼いたいなぁ』
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その話をするりょーくんの切ない横顔にまたキュンときたから……だから夕紀さんのスマホで猫耳猫尻尾がついた黒いルームウェアのサンプル画像を目にした時に「これだ!」って思った。
「今日だって……あんな気持ちの良いキスするんだもん……りょーくんイケメンだしあんなに素敵でエッチなキスをしたらみんな好きになって恋しちゃうよぉ」
ルームウェアの段ボール箱がお店に届いた日に偶然経験した、りょーくんとのセカンドキス。
それは経験も想像もした事がない……とても甘くて熱いキスだった。
空気が読めず、どうしたらいいか分からないくらい頭の中がポーッとした。
私の耳を舐めるりょーくんの舌も…かける吐息も……全部が気持ち良くて、私はどう反応すればりょーくんの望む女の子になれるのか真剣に考えて行動しなくちゃいけないのに何も出来なかった。
ただただ彼の甘くて熱い行為に酔いしれ、何も出来ない自分が情けなくて涙が出てきたんだ。
「だってあの時、あーちゃん泣いてただろ?」
私の言葉が信用出来ないといった様子で、りょーくんは驚き声を震わせている。
「怖くて泣いたんじゃないの。声しか出せない自分が情けなくて失望してただけ……」
「じゃあ俺……あの時、あーちゃんに本当に酷い言葉を」
「りょーくんは気に病まなくて良いよ。そりゃ、私の今までの様子を見てたらそう思って叱りたくなるの分かるから。
『女性を取っ替え引っ替えの野獣くん』の噂の真意は分からないけど、女の人がみんなりょーくんを好きになっちゃう理由はすっごく分かる」
夕紀さんの優しい言葉や美味しいカフェ・オ・レに励まされて、このルームウェアを身に付けた時私は心の奥底でこんな事を思っていた。
(りょーくんが大好きな黒猫の姿になって、またあの甘くて熱いキスをしてみたい。
りょーくんがまだ私を好きで居てくれるなら、私はもっともっとりょーくんに歩み寄らないといけないんだ……)
「りょーくんに振られてしまうなら仕方がない諦めようって思った。
だけどりょーくんの口から『昼間の言葉は嘘』って聞けてすごく嬉しいし、まだ男の人に体を触られるのは怖い気持ちもあるんだけど『大好きなりょーくんになら触られてもいい』って思ってるよ」
「それ、本当?」
りょーくんの声に震えは無くなったけど、まだ驚きの表情のままでいたから
「本当だよ。嘘つかれるの苦手だし、嘘つくのも下手だから」
私は両手で彼の大きな手を持ち上げて、私の猫耳フードにポンと乗っけてみせた。
「えっ?!」
「猫耳や頭を触って。フード越しで直接じゃないんだけど、まずはそこから……。
あとね、猫尻尾も触っていいよ。ふにふにで柔らかくて気持ち良くってオススメなんだ」
「いいの?」
りょーくんはまだ信じられない気持ちでいるのかもしれないけど、ソファの手摺りから完全に降りて立ち上がり、一歩私に近付いて触りたい気満々でいるのが可愛いと感じる。
「うん」
「お尻には触らないように気をつけるよ、勿論」
「じゃあ、尻尾を触りやすいように背後を向いておくね」
「うん」
お互い「うん」で相槌を打ち、私がくるりと180度回転すると
「本当だ……ふにふにしてて柔らかくて気持ち良い♪」
背中側からりょーくんの嬉しそうな声が聞こえて私はとっても嬉しくなる。
「本物の猫尻尾とは違うんだろうけどね♪」
「本物の猫だとそもそも尻尾を触れないからね。ルームウェアなら触り放題だ♪」
「りょーくんに触ってもらいたくて着てるようなものだから、私がこれ着てる時はいつでも触って良いからねっ♡」
この会話で完全に仲直り出来た気に私は既になっちゃっているし
「ふふ♡」
「えへ♡」
尻尾から手を離したりょーくんの方へ再び振り返り、微笑み合うのはやっぱり癒されるし幸せな瞬間だと感じた。
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