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階段を一つ昇り、僕は持ち物を棄てる
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「それって……リョウさんが…チワワじゃなくなるって事?」
僕の発言からしばらく間を置いた後で、カスミさんは恐々とした声でそう質問してきた。
(あまり嬉しそうにしてないな……)
カスミさんの反応が少し不思議だと感じたんだけれど
(カスミさんは僕が舐め犬になるよりも白いチワワとして今のような事をする方が良いのかな?)
そもそも僕はカスミさんに「チワワだから粘膜に触れられない」という嘘の説明をしているのだから、「舐め犬に昇格すれば、実家のチワワくんに似た白い毛を持つ僕の姿が変わってしまうのではないか?」という不安な気持ちを抱いてしまうは当然なんじゃないかと思い直した。
「ご新規さんへのオイルコースは引き続き僕が担当するから、別の犬になるって意味じゃないよ」
僕はすかさずそう答えて、出来上がった蒸しタオルをカスミさんに手渡し背後に立つ。
「本当にリョウさんは白いチワワのままでいられるの?」
「新しいセラピストを雇う訳じゃないからね。オイルのほぐしはセラピストの中では僕が1番上手らしくて、今まで通りの仕事をやっていきながら常連さん向けにオプションコースを増やすって形式になりそうなんだ」
それから僕はカスミさんの髪を綺麗に梳かしてあげた。
「そうなのね……良かったぁ」
カスミさんは僕の話を聞いてホッとしたような顔つきになった。
「うん、だから7月1日になるべくたくさんのオプションコースを受け持てるように僕も頑張るつもりだよ」
カスミさんの安堵した表情に僕の頬は弛む。
「オプションコースって、そんなにたくさんあるのね」
「そうだよ。カスミさんは僕以外のセラピストに施術された事はない?」
「あるけど……でもその時はリョウさんの指名料分をオプションコースに上乗せしてくれたから、あまり意識した事なくて」
「実は色々細かくあるんだよ。まだ僕がどこまで出来る様になるか分からないから、まだ具体的に教えられないんだけど」
「そうなのね♪ オプションコース、少し楽しみになってきたかも♪」
拭き取りを終えた部分がほんのりとピンク色に温まったカスミさんが、顔も同じようにほんのりピンク色にしながら僕の目を見つめた。
「その、細かなオプションって……私のアソコを舐めてくれるっていうのも……含まれるの、かな」
「えっ?」
乾いたタオルで耳と首をぽんぽんと軽く押さえてあげていた僕が目を少し大きくさせると、カスミさんの頬の色はますます色濃くなって
「あっ! リョウさんごめんなさいっ!! あのっ、私……」
可愛らしく余計に慌て、スカートの股の部分を両手で押さえている。
「……トイレ、カスミさんは退室前にいつも行くもんね。早く行った方がいいかも?」
僕は「ある事」を予想しつつ、それを頭の中で考えているのを悟られないようにトイレの方向を指差してカスミさんをそちらへ誘導させた。
「あっ、ごめんなさいね!」
急いでトイレへ向かうカスミさんの背中を眺めドアがパタンと閉まるところまで見届けた僕は、頭の中で考えていた事に確信を持つ。
(果たしてカスミさんも好きで熱烈に望んでいるのかなぁ……アソコ舐められるのを)
お客様への口淫は、この店での舐め犬ならではと呼ばれるオプションの一つだろう。
(気持ちいいとは思うのかもしれないけど……)
けれども、コウくんの話にあった「常連さんの振る舞い」を思い出し
(いや……いくらなんでもあの話の人みたいな品の無い事はしないだろうし)
自己解決した頭を左右に振った。
(男も舐められるとそれなりに興奮するし、女性だって舐められる事に興奮するのも当然だと思う。だけどカスミさんはそれでも「今までのリョウ」を愛でてくれそうな気がするなぁ)
「……トイレ、ありがとうリョウさん」
流水音が聞こえて中から出てきたカスミさんはまだ少し動揺しているように感じられたから、僕は安心させる為にとびきりの営業スマイルを作って
「どういたしまして」
と明るく返事してあげたんだ。
僕の発言からしばらく間を置いた後で、カスミさんは恐々とした声でそう質問してきた。
(あまり嬉しそうにしてないな……)
カスミさんの反応が少し不思議だと感じたんだけれど
(カスミさんは僕が舐め犬になるよりも白いチワワとして今のような事をする方が良いのかな?)
そもそも僕はカスミさんに「チワワだから粘膜に触れられない」という嘘の説明をしているのだから、「舐め犬に昇格すれば、実家のチワワくんに似た白い毛を持つ僕の姿が変わってしまうのではないか?」という不安な気持ちを抱いてしまうは当然なんじゃないかと思い直した。
「ご新規さんへのオイルコースは引き続き僕が担当するから、別の犬になるって意味じゃないよ」
僕はすかさずそう答えて、出来上がった蒸しタオルをカスミさんに手渡し背後に立つ。
「本当にリョウさんは白いチワワのままでいられるの?」
「新しいセラピストを雇う訳じゃないからね。オイルのほぐしはセラピストの中では僕が1番上手らしくて、今まで通りの仕事をやっていきながら常連さん向けにオプションコースを増やすって形式になりそうなんだ」
それから僕はカスミさんの髪を綺麗に梳かしてあげた。
「そうなのね……良かったぁ」
カスミさんは僕の話を聞いてホッとしたような顔つきになった。
「うん、だから7月1日になるべくたくさんのオプションコースを受け持てるように僕も頑張るつもりだよ」
カスミさんの安堵した表情に僕の頬は弛む。
「オプションコースって、そんなにたくさんあるのね」
「そうだよ。カスミさんは僕以外のセラピストに施術された事はない?」
「あるけど……でもその時はリョウさんの指名料分をオプションコースに上乗せしてくれたから、あまり意識した事なくて」
「実は色々細かくあるんだよ。まだ僕がどこまで出来る様になるか分からないから、まだ具体的に教えられないんだけど」
「そうなのね♪ オプションコース、少し楽しみになってきたかも♪」
拭き取りを終えた部分がほんのりとピンク色に温まったカスミさんが、顔も同じようにほんのりピンク色にしながら僕の目を見つめた。
「その、細かなオプションって……私のアソコを舐めてくれるっていうのも……含まれるの、かな」
「えっ?」
乾いたタオルで耳と首をぽんぽんと軽く押さえてあげていた僕が目を少し大きくさせると、カスミさんの頬の色はますます色濃くなって
「あっ! リョウさんごめんなさいっ!! あのっ、私……」
可愛らしく余計に慌て、スカートの股の部分を両手で押さえている。
「……トイレ、カスミさんは退室前にいつも行くもんね。早く行った方がいいかも?」
僕は「ある事」を予想しつつ、それを頭の中で考えているのを悟られないようにトイレの方向を指差してカスミさんをそちらへ誘導させた。
「あっ、ごめんなさいね!」
急いでトイレへ向かうカスミさんの背中を眺めドアがパタンと閉まるところまで見届けた僕は、頭の中で考えていた事に確信を持つ。
(果たしてカスミさんも好きで熱烈に望んでいるのかなぁ……アソコ舐められるのを)
お客様への口淫は、この店での舐め犬ならではと呼ばれるオプションの一つだろう。
(気持ちいいとは思うのかもしれないけど……)
けれども、コウくんの話にあった「常連さんの振る舞い」を思い出し
(いや……いくらなんでもあの話の人みたいな品の無い事はしないだろうし)
自己解決した頭を左右に振った。
(男も舐められるとそれなりに興奮するし、女性だって舐められる事に興奮するのも当然だと思う。だけどカスミさんはそれでも「今までのリョウ」を愛でてくれそうな気がするなぁ)
「……トイレ、ありがとうリョウさん」
流水音が聞こえて中から出てきたカスミさんはまだ少し動揺しているように感じられたから、僕は安心させる為にとびきりの営業スマイルを作って
「どういたしまして」
と明るく返事してあげたんだ。
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