11 / 53
じゅういち
しおりを挟む
十分に体が温まった所で湯船を出る。
ペタペタと音を鳴らしながら浴室を出て、脱衣所に行くと、新しい服とタオルがあった。
パドマさんが持ってくると言っていたから、きっとこれを着れば良いのだろう。
この世界にはドライヤーがないのか見当たらない。
世界が違えば文明も違うのかと納得し、髪を拭き、体を拭く。
準備されていた物を手に取れば、下着も服も元の世界とさほど変わらないらしい。
白の下着を上下とも着用すると、ピッタリなサイズに少し恐怖を感じた。
それを誤魔化すように残りの服に手をかける。
薄青の無地のYシャツに、白のパンツを着る。
仕事に行くみたいだな。と思っていれば、床に置いてある薄茶色したショートブーツが目についた。
ここに来る前から履いていた靴はもうボロボロだったからな、とそのブーツを手に取り近くにある椅子に座る。
編み上げのブーツを少し時間をかけて履くと、前に流れ落ちてくるまだ湿り気のある髪が気になった。
さすがに髪をまとめる物まではないらしい。
ここに来る前に使っていた髪ゴムも森の中で落としたのかいつの間にか無くなっていた。
服が濡れるのが嫌で、もう一度タオルで髪を拭いていれば、脱衣所の扉が開く音がした。
「あら、あがってたの?ちょうど良かったわ。呼びに来たところだったの。」
そう言って私の近くに来たパドマさんに、服、ありがとうございます。とお礼を言えば、ぴったりだったでしょう?と笑う。
なんでも、実家が下着を扱っているらしく、以前私を着替えさせてくれた時にちゃっかり調べたらしい。
服はあまり身長も変わらないから私のだけど、と言うパドマさんは私の濡れた髪に手を伸ばす。
それにびくりと体を揺らせば、暖かい風が通った気がした。
「ほら、これで良いでしょう?」
「へ…?」
言われた意味が分からず、自身の髪に手を伸ばせば、サラサラと指が通った。
「あれ……髪が…。」
驚いてパドマさんを見ると、綺麗な緑の目を細め、これが魔法よ。とニヤリと笑う。
その姿に思わず、イケメン……っ、と呟いてしまったのは、仕方のないことである。
じゃぁ、食堂に行きましょうか。と連れてこられたのは、三つあった建物の真ん中の建物の中だった。
聞けば、ここは第1騎士団が生活している敷地で、門から見て一番左の建物が男子寮、真ん中が食堂や執務室などの仕事部屋が入っており、一番右、先ほど私たちがいた建物が女子寮となるとのことだ。
建物で見えないが、この敷地の奥には、屋外訓練場や馬小屋があるらしい。
さらに、この王国には13騎士団まであり、それぞれの騎士団にここと同じ物が与えられているらしい。
その話を聞いた私が、凄いですね。と言うと、まぁね。騎士団だし。と返ってくる。
その返事の意味はよく分からないが、この国の騎士団とはエリート集団だと言うことだけはなんとなく分かった。
そんな話をしている間に、一つの扉の前で立ち止まる。
「ここが食堂よ。」
そう言って扉を開けた先は、まだ私の目には眩しい色とりどりな髪と、整った顔の集団がいた。
「リウ。」
私が入った瞬間に、シン…、と静まり返った部屋で、ゼノさんの呼ぶ声が聞こえる。
声がする方を見ると、ここだよ。と、こちらに手を振るペティグリューさんがいて、ゼノさんとハロルド君が一緒に座っていた。
あちらに行けばいいのか?と考え、動かない私にパドマさんが手を引きそちらに連れて行かれる。
先にいた3人に頭を下げる私をハロルド君の隣に座らせ、私の逆隣にはパドマさんが座る。
目の前にはゼノさんで、ハロルド君の前にペティグリューさんと言う席順だ。
見知った面々にホッと安心すると、ペティグリューさんが、お前らこっち見過ぎ!飯食え!飯!と声をかけている。
それからザワザワと徐々に騒がしくなる頃、パドマさんとハロルド君が席を立つ。
一気に両隣が空き、寂しさを覚えれば、ゼノさんと目があった。
「パドマから説明は受けたか?」
その真剣な瞳にドキッとするが、返事
しなきゃと質問の意味を考える。
あ、多分、ここの寮とかのことかな?
「はい。パドマさんに教えていただきました。」
「そうか。」
そう言ったきり、ゼノさんは口を閉ざす。
2人が戻ってくるまで無言の空間が続くのかと思っていれば、次はペティグリューさんが口を開いた。
「そう言えばリウちゃん。」
「はい?」
「ゼノのことも名前で呼んでるのに、俺はまだそのままなの?」
「あっ…。」
そう言われ、森から王都への帰り道での出来事を思い出す。
顔を赤くする私に、ペティグリューさんは首を傾げ、ゼノさんは水を飲んでいた。
「別に呼び方なんてどうでも良いだろう。」
「ゼノは呼ばれてるからそう言うんだろ⁉︎」
俺も呼ばれたい!と言うペティグリューさんに、あの、じゃあ、アーロンさんって呼ばせてもらいますね。と言えば、そのワイルドな顔を綻ばせる。
この人は少年みたいに笑うな…。と思っていると、目の前にコトリ、と湯気のたつ料理がのったお盆を置かれた。
「ハロルド君、ありがとう。」
それを持って来てくれたのはハロルド君で、パドマさんはゼノさんとアーロンさんの前に料理がのったお盆を置いていた。
2人はこの為に席を立ったのかと、今更なことを思い、役に立てなかった自分を悔やむ。
片付けは私がしようと心に誓い、温かい料理に手をつけた。
ペタペタと音を鳴らしながら浴室を出て、脱衣所に行くと、新しい服とタオルがあった。
パドマさんが持ってくると言っていたから、きっとこれを着れば良いのだろう。
この世界にはドライヤーがないのか見当たらない。
世界が違えば文明も違うのかと納得し、髪を拭き、体を拭く。
準備されていた物を手に取れば、下着も服も元の世界とさほど変わらないらしい。
白の下着を上下とも着用すると、ピッタリなサイズに少し恐怖を感じた。
それを誤魔化すように残りの服に手をかける。
薄青の無地のYシャツに、白のパンツを着る。
仕事に行くみたいだな。と思っていれば、床に置いてある薄茶色したショートブーツが目についた。
ここに来る前から履いていた靴はもうボロボロだったからな、とそのブーツを手に取り近くにある椅子に座る。
編み上げのブーツを少し時間をかけて履くと、前に流れ落ちてくるまだ湿り気のある髪が気になった。
さすがに髪をまとめる物まではないらしい。
ここに来る前に使っていた髪ゴムも森の中で落としたのかいつの間にか無くなっていた。
服が濡れるのが嫌で、もう一度タオルで髪を拭いていれば、脱衣所の扉が開く音がした。
「あら、あがってたの?ちょうど良かったわ。呼びに来たところだったの。」
そう言って私の近くに来たパドマさんに、服、ありがとうございます。とお礼を言えば、ぴったりだったでしょう?と笑う。
なんでも、実家が下着を扱っているらしく、以前私を着替えさせてくれた時にちゃっかり調べたらしい。
服はあまり身長も変わらないから私のだけど、と言うパドマさんは私の濡れた髪に手を伸ばす。
それにびくりと体を揺らせば、暖かい風が通った気がした。
「ほら、これで良いでしょう?」
「へ…?」
言われた意味が分からず、自身の髪に手を伸ばせば、サラサラと指が通った。
「あれ……髪が…。」
驚いてパドマさんを見ると、綺麗な緑の目を細め、これが魔法よ。とニヤリと笑う。
その姿に思わず、イケメン……っ、と呟いてしまったのは、仕方のないことである。
じゃぁ、食堂に行きましょうか。と連れてこられたのは、三つあった建物の真ん中の建物の中だった。
聞けば、ここは第1騎士団が生活している敷地で、門から見て一番左の建物が男子寮、真ん中が食堂や執務室などの仕事部屋が入っており、一番右、先ほど私たちがいた建物が女子寮となるとのことだ。
建物で見えないが、この敷地の奥には、屋外訓練場や馬小屋があるらしい。
さらに、この王国には13騎士団まであり、それぞれの騎士団にここと同じ物が与えられているらしい。
その話を聞いた私が、凄いですね。と言うと、まぁね。騎士団だし。と返ってくる。
その返事の意味はよく分からないが、この国の騎士団とはエリート集団だと言うことだけはなんとなく分かった。
そんな話をしている間に、一つの扉の前で立ち止まる。
「ここが食堂よ。」
そう言って扉を開けた先は、まだ私の目には眩しい色とりどりな髪と、整った顔の集団がいた。
「リウ。」
私が入った瞬間に、シン…、と静まり返った部屋で、ゼノさんの呼ぶ声が聞こえる。
声がする方を見ると、ここだよ。と、こちらに手を振るペティグリューさんがいて、ゼノさんとハロルド君が一緒に座っていた。
あちらに行けばいいのか?と考え、動かない私にパドマさんが手を引きそちらに連れて行かれる。
先にいた3人に頭を下げる私をハロルド君の隣に座らせ、私の逆隣にはパドマさんが座る。
目の前にはゼノさんで、ハロルド君の前にペティグリューさんと言う席順だ。
見知った面々にホッと安心すると、ペティグリューさんが、お前らこっち見過ぎ!飯食え!飯!と声をかけている。
それからザワザワと徐々に騒がしくなる頃、パドマさんとハロルド君が席を立つ。
一気に両隣が空き、寂しさを覚えれば、ゼノさんと目があった。
「パドマから説明は受けたか?」
その真剣な瞳にドキッとするが、返事
しなきゃと質問の意味を考える。
あ、多分、ここの寮とかのことかな?
「はい。パドマさんに教えていただきました。」
「そうか。」
そう言ったきり、ゼノさんは口を閉ざす。
2人が戻ってくるまで無言の空間が続くのかと思っていれば、次はペティグリューさんが口を開いた。
「そう言えばリウちゃん。」
「はい?」
「ゼノのことも名前で呼んでるのに、俺はまだそのままなの?」
「あっ…。」
そう言われ、森から王都への帰り道での出来事を思い出す。
顔を赤くする私に、ペティグリューさんは首を傾げ、ゼノさんは水を飲んでいた。
「別に呼び方なんてどうでも良いだろう。」
「ゼノは呼ばれてるからそう言うんだろ⁉︎」
俺も呼ばれたい!と言うペティグリューさんに、あの、じゃあ、アーロンさんって呼ばせてもらいますね。と言えば、そのワイルドな顔を綻ばせる。
この人は少年みたいに笑うな…。と思っていると、目の前にコトリ、と湯気のたつ料理がのったお盆を置かれた。
「ハロルド君、ありがとう。」
それを持って来てくれたのはハロルド君で、パドマさんはゼノさんとアーロンさんの前に料理がのったお盆を置いていた。
2人はこの為に席を立ったのかと、今更なことを思い、役に立てなかった自分を悔やむ。
片付けは私がしようと心に誓い、温かい料理に手をつけた。
35
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!
隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。
※三章からバトル多めです。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活
アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。
妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。
貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。
しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。
小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる