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じゅうに。

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「それじゃあ、また明日。」

きっと、何か聞かれるのだろうと思っていた夕食の時間は、私の思いとは裏腹に、何事もなく過ぎていった。

おやすみなさい。と言い、パドマさんと一緒に女子寮に戻ると、ここだよ、と2階にある部屋の一室に通される。

扉を開けたその部屋は、日本で住んでいた8畳ワンルームの私の家とは違い、その倍どころか3倍ほどありそうな広さに、クイーンサイズほどの天蓋付きのベッドに、備え付けの大きなクローゼット、それに、勉強机のような机と椅子、本棚が置いてある。
部屋の奥に一つだけある扉の奥は、トイレとシャワー室、洗面台があった。

「ここがこれから過ごすあなたの部屋よ。好きに使って。」

「…え?これから…?」

「あら?聞いてない?」

「王都で過ごしてもらう的なことは言われましたが…。」

それに、パドマさん達のお世話係も王都に戻るまでって言ってたし、てっきり、長くても二、三日程ゼノさん達のお世話になって、その後はどっか街の外れにでも移されるのかと思っていた。

だからこれからどうしようかと悩んでいたし、いつまでも甘えてられないな思っていたのだが…。

「そうなの?ゼノ団長から帰りの道中聞いていたのかと思って、私も説明しなかったわ。」

……すみません、イケメンの声の破壊力に気絶してました。

それに、食堂に行った時、なんかゼノさんから質問されてましたね、私。

てっきり、寮とか食堂の場所とかのことだと思ったけど、今思えばこの事を聞いていたのか。

ごめんね。と謝るパドマさんに、凄い罪悪感を覚え、正直に話せば、あははっ、と笑われる。

「確かにゼノ団長は綺麗な顔してると思うけど、気絶するなんて!しかも声って!」

笑い声が響く部屋で、パドマさんが落ち着くのを待っていると、しばらくして、はぁー、笑った、笑った。と目に溜まった涙を拭った。

「ごめんねぇ、もうなんかおかしくって。」

「いえ、そんな…。」

「でも、そうね…。とりあえず話をしなければと思うけど、今日は慣れない乗馬で疲れたでしょう?今日はもう休んで、明日話をしましょうか。」

そう言って、おやすみなさい。また明日ね。と出て言ったパドマさんを見送り、ベッドに近づいて思った。

…あれ、寝るときもこの格好なの?


どうしようかと悩み、流石にピタッとしたパンツだけでも脱ぐと、下着とシャツだけになる。

本当はブラもとって寝たいぐらいだが、それはなんとなくやめて置いた。

ボフンッ、と大きなベッドに倒れ込むと、ふかふかとした気持ちのいい感触に包まれる。

こんな大きなベッドで寝るのは初めてだなぁ……。

そう思っていると、さっきまで感じていなかった眠気が襲ってくる。

ここに来てからずっと寝てる気がするなぁ…。

襲う眠気に目を閉じれば、とても懐かしい夢を見た気がした。




コンコン

「ん…。」

扉を叩く音に目を覚ます。

見慣れぬ天井に、一瞬どこにいるのか分からなかったが、すぐに第1騎士団の寮だと思い出す。

「リウー!起きてるー?」

もう一度、コンコン、と扉が叩かれる音が聞こえ、すぐにパドマさんの声がした。

「はーい!起きましたー!」

急いで起き上がり、ズボンを履いていれば、ガチャリと扉が開く。

「おはよう、リウ。…って、何してるの?」

「すみません。寝る時にズボンだけ脱いでました。」

本当、その綺麗な瞳にはお目汚しですね。すみません。と言うと、そんなことないわよ。と朝から眩しい笑みを受ける。

「…そうね。私達には必要ないけど、貴女にはそう言うのが必要よね。」

今日は、ゼノ団長にお願いしてお買い物行きましょうか。

そう言って笑顔を見せるパドマさんに私は、え…。となる。

なぜなら、

「…私、この世界のお金、持ってないです……。」

そうなのだ。

日本のお金は少しばかりだがある。…が、きっと使えないだろう。

それに、チャロアフロスティク王国ココに来てから私は働いていないし、勿論お金もない。

そんな私に、パドマさんは当然のように言った。

「何言ってるのよ。お金なんて、団長が出すに決まってるでしょ。」

「…え?ゼノさんがですか…?」

「そうよ。」

ちなみに、貴方が今着ている下着と靴は団長のお金で買ってるから、今更よ。と私に言う。

その言葉を聞き、昨日は何のお礼を言っていないことに気づく。

いや、これは知らなかったし仕方ないのだけれど…。

「とりあえず、顔洗っていらっしゃい。朝食食べに行くわよ。」

「…はい。」

後で会った時はちゃんとお礼を言おうと心に決め、顔を洗いに行く。

そして、洗面台の前に立って気づく。

「…パドマさん、髪の毛くくるの貸してくれませんか?」

「あ、そうね。ちょっと待ってて、持ってくるわ。」

後タオルも…。と言えば、分かったと言うように手を振りこの部屋を出ていく。

戻ってきたパドマさんに青の髪留めとタオルを借り、もう一度洗面台の元に行く。

そして顔を洗った私は、パドマさんと一緒に食堂に向かった。
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