悪役令嬢だけど愛されたい

nionea

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第一章:まずは、スタートラインに立つために。

EX_義母の思い

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※9. 辺りのお話をフローティア(国王妃)視点から
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

「ごめんねリーン。本当にごめんなさい」
「謝らないで、貴方のせいじゃないわよ」
 昔から変わらない強く心を支えてくれる笑みを見つめながら、それでも国王妃、フローティア・リンク・ローグネッツは心の中で詫び続けた。
 その耳を疑うような話を初めて聞いたのは、今から二ヶ月以上前。本当なら直ぐにでもミネルヴァの元に駆けて行って謝りたかった。だが、別荘に移動していたミネルヴァの元へ向かうには、調節しなければならないことがあまりに多すぎた。
 あまり息子がその婚約関係に乗り気でないことは理解していた。幼い頃は愛らしいミネルヴァが自分の婚約者だと聞いて嬉しそうにしていたが、次第に優秀なミネルヴァに煙たさを感じるようになっているらしいと報告も受けていた。
 だが、別に息子とミネルヴァが恋仲でなくても構わなかった。王族の婚姻は言わば政だ。身分の釣り合いが取れ将来の国王妃として申し分ない人材であるミネルヴァと、王太子である息子との結婚は、政なのだ。恋心が無いのなら無いで、信頼関係による夫婦の形を築けば良いと考えていた。
 いや、正直な事を言ってしまえば、憧れ信頼している幼馴染達の良い所を引き継いだような愛らしいミネルヴァが、自分の娘になる事が楽しみで仕方がなかったのだ。
 その事が重要過ぎて、結果、息子の考えや行動を把握できていなかった。
 まさかミネルヴァをこの上なく傷付けるような事態を、我が子が引き起こすとは、流石に思っていなかったせいでもある。
(ああ…どうすればいいのかしら………)
 別荘に着いた時、出迎えのために表に出ていたミネルヴァと目が合った。一瞬浮かんだ傷ついた様な悲しそうな顔が、フローティアの脳裏に焼き付いて離れない。話をするために別荘まで来て、謝るために二人きりにしてもらったというのに、うまく言葉が出てこない。
(傷付けてしまったら、もし、私の言葉でミーナが傷付いたら…)
 そう考えると口から声が出てこないのだ。
「………ミーナ」
 何度もお茶を飲む振りをして、ようやく名前だけ呼びかけられた。
「はい」
 静かな返事に、視線を逸らしつつも様子を確認する。
「今日はね、その…貴方に訊きたい事があって、リーンに無理を言って連れてきてもらったの」
「はい」
 ふらふらと情けなく視線が泳いでしまう。
 アイリーンと同じだ、と感じた。ミネルヴァの方がよほど落ち着いている。事前に手紙を送った事で、某かの覚悟を決めていたのだろう。
「あのね…クーとのね、その………」
 意を決して目を合わせたつもりだった、だが、その顔を見つめていると、また言葉が出てこなくなってしまった。
「婚約の件でしたら、王太子殿下の御意志に添うようにして頂ければ、と私は考えております」
 真っ直ぐに見つめる瞳に、申し訳なさとは別にはっきりとした諦めが湧く。
(ああ、本当に、アイリーンによく似ているわ)
 思わず溜息を吐いてしまう。
(クーをミネルヴァをつなぎ止められるような男に育ててあげられなかった…私が駄目だったのよね、きっと)
 ミネルヴァを自分の娘にするなんて夢のようだと思った。夢に酔って、ちゃんとするべき事を疎かにした。そんなつもりがあった訳ではないが、きっとそうだったからこの事態になった。諦めなくてはいけない。せめて、ミネルヴァの幸せを思うのならば。
「貴方の考えは解ったわ」
 未練を捨てるように笑って、二人きりの話を終える。侍女に目配せをすれば、別室に居たアイリーンとフランセスカがやってくる。
 国王妃への挨拶さえそこそこにミネルヴァの元へ向かうフランセスカにライネッツらしさを感じて笑ってしまう。その笑いに気付いたアイリーンは肩をすくめておどけてみせた。きっと別室に居た間中フランセスカにミネルヴァの所に行きたいと責められていたのだろう。
 しばらく話をして、けれど時間が押しているので、昼食前には帰る事になる。
「ごめんなさいね、のんびりしているところに押しかけてしまって」
「いいえ、どうぞお気遣いなく。お話しできて、とても嬉しかったので」
「私もよ。またね」
 柔らかく微笑んでくれるミネルヴァに、少しだけ寂しさがこみ上げるが、なんとか笑って別れを告げた。
 馬車に揺られて戻りながら、アイリーンに慰められる。
 反対していた、愛しい心の愛娘と息子の婚約破棄の手続きを、進める決意を固めた。

□fin
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