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放課後

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    普通の学校と違い、学ぶ事は多岐に渡る。それはこの学校がギルドも絡んでいる為だろうか?だとしたら、ギルドって物凄い組織なんだろうな。
    生き残る術のような物も教えてくれる。
    
    手持ちのポーションがなくても済む、応急処置の仕方を教えてくれたり、薬草の見分け方、保存食の作り方も習った。
「先生、フリーズドライはやらないんですか?」
「…は?」
「だから、小さい結界を作って、中の空気を抜いて、凍結、乾燥させればお湯だけで元のように食べられる、携帯に便利な食料が」
    ああ…でも属性を持ってないと魔法は使えないと思われているから、一人で作るのが難しいのか。

「ん…意味は分からんが、干し肉や干し果物等の用意があれば、思いもかけず食料が手に入らない時でも生き伸びられる」
    あ…先生、考える事を放棄したな。どの道、収納庫が使えるから私には必要ないけど。

    というか、この世界にはない技術なのかも。魔法があるから簡単に出来ると思ったんだけどな…

    春になってからは、学校帰りに薬草採取をしたり、ちょっとしたお手伝い依頼をこなす事も多くなった。
    さすがに午後でもあるし、めぼしい依頼は残っていない。
    同室になったアルマやエレンの他に、教会の子のリリーも交えてやるのがいつものパターンだ。

「やっぱりランクフリーの薬草か、食肉って所だな」
    みんなでやるなら庭の草むしりもありだけど、依頼料が安い。

    こんな風に一応は依頼を覗くけど、大概どちらかだ。
    それにランクフリーの仕事は受付が要らない。物を持って行けばその薬草に応じてお金を払ってくれる。
    肉も同じだ。強い魔物の肉や希少で美味しい物は高く買い取ってくれる。

「今日は薬草でいい?お姉ちゃんと約束したの」
「いいけど…シュガー、寝ちゃだめだよ?」
「努力はするにゃ」
    ぽかぽか春の日射しは、シュガーでなくても眠くなる。

「そういえば今日、授業中に言ってた携帯食は、どういう物なの?」
「リリー、興味あるの?」
「もし簡単に出来るなら、メイの事だから、きっと凄い物なのかなと思って」

    メイは、収納庫から味噌汁のお椀を取り出した。
「美味しそう…」
「というか、何でスープから湯気が立っているの?」
「取り敢えず今は、フリーズドライの説明ね?…まず小さな結界に中身を閉じ込めて」
「結界とは何だ?物理障壁の事か?」
    えええ…そこから?

「魔法にも効果あるよ?そういうイメージだから…で、この中身を真空にする」
「真空?」
「空気を全部出すの…で、凍らせる。それから水分を抜くドライをかける」

「ちょ…ちょっと待って?どうして一緒に違う魔法を幾つもかけられるの?」
「…そういうイメージ?だから」
「にゃーも出来るにゃ」
    シュガーは、蔓を編み込んだ罠を作って見せる。
「で、でもメイは違う属性の魔法じゃない?」
「メイは天才にゃ」

「そ…その一言で片付けるのか?確かに凄すぎて、真似は出来そうにないが」
「魔法は想像力だよ。ほら、小さくて軽くなったでしょ?」
「これを、そのまま食べるの?」
「ううん、お湯で戻すんだよ」

    元のお椀に戻して、湯を注ぐ。
「貰っていい?」
「いいよ」
    お箸も出してやると、みんなで少しずつ飲んだ。
「美味しい…これ、塩味じゃないよね?」
「これは、大豆とコージの花の花粉で作った味噌だよ」

「暖まるな」
「メイの料理は美味しいにゃー」
「シュガーはお姉さんなのに料理しないの?」
「にゃーは…メイのお手伝い位かにゃ…」
    お母さんはいない事になっているし、アロカシアはヤブランでもあるから、お母さんて感じじゃないんだよね。

    それに、やっぱり今更お母さんがいたとは言えないし。

「聞いておいて何だけど、メイは料理上手って事しか分からなかったな…」
「そうだな」
「家庭料理位しか出来ないけどね」
    薬草採取、兼ピクニックのようになっている。

    アルマは、持っていた薬草を束にして、木の水筒に入れる。
    薬草はなるべく手で持たない方がいい。薬草採取にはとてもいい方法だ。

    
    メールで、デザート系ピザをアルミネアに絶賛された。
    それと、ユリースが好きなのは肉系。ハンバーグが美味しかったって。
    これって神託?になるのかな…いやいや。食べ物を無心する神託なんて普通ないから。

    でもたまに、負担にならない程度でいいとも書いてあった。
    まあ、元々食べる必要ないし、嗜好品なのだから。
    けど、料理の出荷はいい資金源になるし、図鑑を埋めていく楽しみもある。
    勿論今では一冊では収まりきらなくて、広辞苑位の厚さのが分類ごとに別れてある。
  
    ボロ小屋を、普通の小屋にグレードアップしてもいいかな?研究の為の古机も傾いているし、本来ならとっくに建て替えの時期だ。
    幸い、設備はもう増殖させる物もないし、モーモーとコッコもこれ以上は増やせない。
    まだ畑は増やせるけど、ダンジョンを進めないと買えないし。
   
    主食の種も安くなったし、後はダンジョン攻略が残るのみだ。
    ルビーを採掘して、そういえばシュールが欲しがっていたなと思い出す。
    もう少し待てばあげられたかもしれない。本当に今更だけど。
    ルビーはアクセサリーとしても使えるけど、錬金術でも使える。

    私にはまだまだ作れないけど、死亡を一度だけ回避してくれるアイテムが作れたりする。
    でもゲーム内の話だからな…本当にそんなアイテムとして使えるかは分からない。

    そういえば、アロカシアにも成長途中で抜け落ちた鱗を何枚か貰った。
    まだ私には加工技術はないけど、ただ持っているだけでも身体能力を強化してくれたりするようだ。

    残念ながら収納庫に入れたら効果はないみたいだけど、先に作ったアクセサリーに埋め込んでみた。特にフレイムの物は小さくなってしまったけど、効果はあるみたいだ。
    鱗自体には付与の効果がない…というか、備わっている効果に上書きできない。

    そういえば、魔力操作が精密魔力操作になった。
    以前と比べて、より正確な魔法が使えると感じていた。
    もう、ミスリルの錬成もB級品じゃなくなった。
    まあ、まだ多くの魔力を使うから、頑張らないと。

    だから今は、ちょっとずつミスリルを錬成している。
    貯まったらみんなの武器や防具を作ってあげたい。

    この着心地が良くて、付与もたくさん付いてる服はまだ作れない。当たり前かもしれないけど、ネリーにはまだまだ及ばないんだな…付与術も、私の付けられない付与が付いてる。

    取り敢えずはミスリルの錬成が一度に出来るように頑張ろう。
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