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戦争編〜第三章〜

第169話 こちら台風の目

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「いやぁ、皆さんお待たせしました! さて、出発しましょう!」

 ニコニコ笑顔でノッテさんが現れる。


「「「「「──遅い!」」」」」

 一同は思わず、声を揃えた。




 ==========



 ノッテ商会の会長であるノッテ(もちろん偽名)は、第二都市で金髪碧眼の少女に脅され、情報伝達も兼ねて1人クアドラードへ戻ることを決めていた。

 『Fランク冒険者リィンについて』

 金髪、であればまぁ間違いなく王家は把握しているだろう。
 一体どこの誰であるのか、本当にクアドラードの者であるのか。潜入を任されている以上、害にならないかを把握する必要があった。
 トリアングロに騙されているとも限らない。

 しかし、クアドラードに向かい通商街道付近まで戻るのに一週間は余裕を見てもかかる。
 よって馬車に細工をし、安全な場所で終われるように仕組んだのだ。

『しかも人為的なる故障ですぞね』

 天国のお母さん、お父さん。俺は今幼女のせいで胃が死にそうです。

「(なんっっっでバレるんだよーー! お前がFランク冒険者であってたまるかー!)」

 20年間で作っていた国境ルートを使い、無事にクアドラードに戻れたノッテは、知ることとなる。


「──あぁ、その娘本当にFランク冒険者だぞ」
「は……?」

 王宮の影をしている同僚に問いかければ衝撃の回答が返ってきた。

「経緯としては、同じFランク冒険者としてコンビを組んでいた幹部ルナールと、スタンピードの撃破をして、グリーン子爵邸で潜伏していた幹部シュランゲを五体満足で確保して、冒険者大会で準優勝を果たし、王都に潜伏していた幹部べナードの炙り出しに成功している」
「それは本当にFランク冒険者か……?」

 ちょっとFランク冒険者の定義を調べてこい。話はそれからだ。

「え、というか幹部ルナールとコンビを組んでいたのにそんなに国家に貢献して……? なんだ、ルナールは味方か」
「そんなルナールは王城で戦争の開幕宣言をし、コンビを盛大に裏切ってトリアングロに逃亡した。その際、その娘は助骨を三本、内臓に少々」
「どういうこと?????」

 普通に敵じゃん??
 というか怪我人じゃん?

 口ぶりから回復魔法は使っただろうが、完治する程では無いだろう。

「エルドラード邸にて保護されていたが逃亡。……まさかファルシュ通り越してトリアングロにいるとはな(ボソッ)」

 遠い目をした同僚に首をかしげつつ、ノッテは情報を噛み砕いて飲み込んだ。

「……え、てことはあのFランク冒険者ってクアドラードから逃亡してトリアングロに亡命……?」
「あー、ないない」
「ないの!?」

 一番有り得る可能性を口に出したら速攻その可能性を排除された。
 ノッテは即答した彼を見ると、気まずそうに頬をかいている姿が見えた。

「そもそも、彼女、国がトリアングロの狐疑惑で睨んでて……、んで俺が監視に着いたんだけど……、上がどんな考えなのか分からないが雰囲気的にその負い目もあって、というかルナール見抜けなかったのはぶっちゃけ俺の失態。俺の命は既にタイムリミットが迫っている。秒速で」
「秒速で」

 それは冤罪をわざとぶっかけて協力させようというヴォルペールの目論見故に、だ。監視がバレるという前提もあったため、この失態は作り上げられた失態なのだが……言うこともあるまい。
 そもそもペインが身近にいながら見抜けなかった時点で、トリアングロの隠匿能力が上を行く証明になる。

 流石に全員冤罪被害者の隣が真犯人だとは思うまい。

「(てか、それは無いって確信出来るの……)」

 深くため息を吐いた男は遠い目をしてファルシュ領の方角を見た。

「(あのローク・ファルシュの娘だからなんだよなぁ~~~~~)」

 あれは拙僧がファルシュ末娘を探りに出た時の話、普通にバレて張本人にエンドレスダークマター食レポ大会(意識は高い高い)に付き合わされたのでございます。うっ、頭が……!
 害なすものは自分の手でケリをつける。父親の血が濃い。

 そんな少女だと理解しているから、まあまずクアドラード裏切りの線は無いと確信していい。

「……ノッテ」
「な、なんだよ」

「頑張れ」

 哀れみを込めた視線に、ノッテはすくみ上がった。

「──Fランクとか詐欺だろーーーーッッ!」

 代弁ありがとうの気持ちを込めて額に思いっきり指を放った。デコピンである。



 ==========



 ノッテさんがようやく戻ってきた。彼が発ってから一週間と少し。だいたい8~9日くらいだ。
 隕石が降り注いでから一週間程でもある。

「納品間に合うですか?」
「間に合わせるさ。皆さんが荷物を見ていてくれたおかげで、無事荷馬車の修理と商品の補充が終わったぜ」

 横を見れば無事な荷馬車が2つ。
 倉庫に入れていた荷物を馬車に移している。

「大丈夫ですたか?」
「はは、心配ありがとな、お嬢さん。無事に──」
「──そちらの商業施設にシンミアぞ訪れたと聞くですけど」
「えっ」

 ノッテさんは思わず部下を目で追った。

「嘘です」
「えっ」

 その様子が確認出来たのでネタばらしだ。
 ノッテ商会の施設に行ったとは聞いてないし知らないからハッタリだったけど、本当に・・・商品補充をした人も驚いていた様子だからシンミアは火薬に興味無かったのだろう。

「……お嬢さん今」

 それよりノッテさんが商品補充と馬車修繕の現場を知らないことが判明出来たよね。

 私はニッコリ笑った。
 ノッテさんは胃を押さえた。

「…………Fランク冒険者とか絶っっっっ対嘘だろ」

 そんな心を込めて言わなくても。嘘じゃないよ。真実とも言わないけど。

「まぁシンミアが来訪すたは施設ではなくこの集落ですけど」
「えっ」
「本当です」
「えっ」

「……リィン絶対あのしょうかいちょーさんの反応気に入ってないか?」
「絶対そうだと思う。なんせ性格悪いからいい反応くれる人は好きだろ」

 ボソボソと後ろで小さな声が聞こえた。

「月組」
「「何も言ってません!」」

 私がため息を吐いたその時だ。
 ビリビリと肌を突き刺すような魔力が空から降り注いだ。


「……ッッ!」

 空を見上げた私に続いて他の人たちも空を見上げる。
 空から王宮に向け、3つの隕石が降っていた。

 カウントダウン──!

──ドォン! ドォン! ドォン!


 鼓膜を揺るがす振動。
 4つの隕石から一週間経って3つの隕石が降り注いだことから、恐らく1ヶ月でケリを付けろってメッセージ性を感じる。
 鬼畜か。

「うわ……でた」
「魔法つーか、最早天災じゃん」
「凄いですわ」

 感動する者、ドン引きする者、反応は様々。

 多分また一週間後、今度は2つの隕石が降り注ぐはずだろう。

「……あ、そうか」

 私はひとつ、いい策が浮かんだ。

「ノッテさん」
「な、なんだ?」

「──私達、先に行くです」



「「「「はぁ!?」」」」

 馬車よりも早く、王都に行くと宣言した私の発言に全員が吃驚の声を上げた。
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