【完結】王命婚により月に一度閨事を受け入れる妻になっていました

ユユ

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壊れた妻を観察

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【 ローランドの視点 】


恋人と旅行へ発つ日、妻アンジェリーナに話があって部屋を訪れたが まだ寝ていた。

…いいご身分だな。

旅の予定は5日間だが、予定通り戻ったら丁度閨の日になる。もし遅延したら孕みやすいといわれる日を逃すかもしれない。日がずれても義務としてするのか、今月は中止にするか聞きたかった。

だが、そんな必要はないかと旅に出た。

旅は前から決まっていて宿もおさえていた。
だが2日前、叔母上から手紙が届き、ぜひ叔父上の見舞いに来て欲しいと書いてあった。
旅の予定地のさらに先にある場所で、寄ることにした。

恋人を連れてきたことに叔母上は少し不快感があったようだ。叔母上達の子爵邸の滞在は一泊だけにして、観光地の宿に泊まった。

今の恋人は交際歴1年だ。その記念に旅行を選んだ。ネックレスもプレゼントした。

彼女は伯爵家の次女でヴァイオレット・バリヤス。
婚歴がある。子爵家の夫と3年で離縁してしまった。彼女が言うには子に恵まれなかったらしい。

それ故にと言われたが、ナカには吐精しない。念のため避妊薬も飲んでもらっている。

俺はアンジェリーナという妻がいて、大嫌いでも王命婚。妻と子を成していないのに、他の女と子を成すわけにはいかないから。

ヴァイオレットとは夜会で知り合い、話が合うので話し込んだら 酒を飲み過ぎて気が付いたら彼女とベッドにいた。途中から覚えていないが裸だったので関係を結んだのだろう。それ以来の付き合いだ。

外見で言えばアンジェリーナに劣る。傲慢で嫌な女だがアンジェリーナはかなりの美人だ。
スタイルもいい。ドレス姿のアンジェリーナは 白く柔らかそうな揺れる胸と細い腰で男達の視線を釘付けにする。
裸は 薄暗い部屋で背後しか見たことがないが、尻も丸くて形がいい。もし激しく打ち付ければ尻肉が波打ち男を興奮させるだろうことは想像がつく。

ヴァイオレットはメリハリのない身体だ。
愛人や恋人という言葉より 話し相手という方がしっくりくる。最初に体の関係を持てしまったから、その後も彼女の誘いに乗り会い続けた。会話を楽しみ、性欲を発散させている。

今回の旅は元々ヴァイオレットが望んだものだ。行き先も日程も。


宿を出発する日、雲行きが怪しかった。
案の定、土砂降りに遭い、途中の町の宿に泊まった。泥濘が酷くて、5日間の旅行が10日間になってしまった。

ヴァイオレットを送り届けて屋敷に到着し、馬車を降りた。誰も出迎えに来ない。ドアを開けようとすると内側から誰かがドアを開けた。

『うわっ…おはようございます』

『……おはよう』

アンジェリーナだった。

本当にアンジェリーナか?
普通に挨拶してきた妻は乗馬服を着ていた。

『ウィル~、お客様よ~』

奥から慌てて執事のウィリアムが向かってきた。
“ウィル”!? 執事を愛称で呼んでいるのか!?

『ごゆっくりどうぞ』

そう言いながら開けたドアを押さえていた。
“早く入って”と言わんばかりの顔をしたので屋敷に入ると妻はドアを閉めた。

《ねえ、マリー。今の人 誰?すっごいカッコいいんだけど》

《アンジェリーナ様の夫のローランド様です》

《は? あんなにカッコいい人と結婚できたのに嫌いなの? ヤバい性癖の持ち主なの?性格が捻じ曲がっているとか?》

何が起きているんだ!?
俺のことだよな…

《まあ、嫌われているのだから関係ないわね。
あ、ラウル先生、おはようございます》

ラウル先生? 私兵のラウルのことか!?

もじもじしている執事ウィリアムと居間に行き、不在中の報告を聞いた。

「は?記憶喪失!?」

「はい。若奥様は全く覚えておりません。王国のこともローランド様のことも、ご自身の名前さえも。
ですので、少しずつ屋敷内のことをお伝えして、午後は歴史や貴族教育の教師を呼んで授業を受けております」

どうやら、俺が出発前に部屋に尋ねたときは、記憶喪失は発症していたらしい。

いくら嫌いでも妻の大事なときに心無い言葉を投げつけてヴァイオレットと不倫旅行に出てしまったことに罪悪感を覚えた。

「それで、記憶は少しも戻っていないのか」

「微塵も戻りません。性格や価値観がガラリと変わり、ドレスなどを買い取る業者を呼び、大量に売ってしまわれました。その代わり、裕福な平民が着るようなワンピースや少し変わった服を購入したり注文なさったようです。

平民街での買い物なので、その場で支払いたいと仰って、現金が欲しいと希望なさいました。私の権限で対応させていただきました」

「平民街に買い物に行ったのか」

「はい。靴もかなりヒールの低い楽な靴を注文なさったそうです」

「で、今の服は乗馬服だろう」

「乗馬を教わりたいと、ラウルを先生と呼び教わっているだけでなく、早朝、馬小屋の掃除を手伝って餌を与えてから若奥様は朝食を召し上がります。今は朝食を終えて食休みをしたので乗馬の時間です」

「トラブルにはなっていないか」

「寧ろ屋敷内で若奥様は大人気でございます。
気さくで優しくて美しい若奥様を皆で見守らせていただいております」

「そうか」

廊下に出て、窓を開けると2人の会話が聞こえた。


〈昨日のシャツ、着てくれたのね。よく似合っているわ。サイズは大丈夫?〉

〈はい、とても着心地がいいです〉

〈良かったわ。手のかかる生徒の面倒を見てくれるのだもの。感謝しないとね〉

〈手のかかるだなんて。リーナ様を教えることが出来て光栄です〉

は? ラウルにシャツを贈った!?
俺は妻から贈り物など貰ったことがないのに?
“リーナ”? アンジェリーナのことだよな…俺の妻を愛称で呼んでいるのか!?

ラウルが妻の細い腰を掴み馬に乗せた。
そしてラウルも跨ると馬を歩かせた。

〈手綱を持ってみましょう〉

〈もう!? ちょっとコワイ〉

〈大丈夫です。一緒に持ちましょう。今日は持つだけ。絶対に引っ張らないでくださいね〉

密着しすぎだろう。

しかもラウルは妻の腹に腕を回していた。

窓を閉めて自室のソファに横になった。

あのアンジェリーナがいろいろな表情を見せていた。

俺を見上げる瞳に嫌悪の感情は無かった。

アンジェリーナの好みは金髪碧眼の美青年だと聞いたことがある。王太子はプラチナブロンドに紫色の瞳だ。その彼もアンジェリーナの心は掴めなかった。

“カッコいい”

黒髪の俺が?


出発前に妻のメイド マリーに託した閨事の日についての質問の返答が、メモに書かれて机の上に置いてあった。

“今月は中止”


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