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お見舞い。…出よ将軍!
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ゴトゴトゴトゴト
途中 有名らしき観光地を素通りして、2日目に到着したのは、長閑な田舎町だった。
屋敷の近くには幅の広い澄んだ川が流れていた。
「アンジェリーナ様、到着したみたいですね」
「美しい場所ね。空気も美味しいし」
ガチャ
「どうぞ リーナ様」
「ありがとう ラウル」
馬車を降りると中から使用人が出てきた。
「執事のダニエルと申します。ようこそヤンヌ子爵邸へ」
「ダニエルさん、こんにちは。アンジェリーナ・ミュローノと申します。彼女は私の専属メイドでマリーと申します。よろしくお願いします」
「アンジェリーナ様をお迎え出来て光栄でございます。さあ、どうぞ中へ。
マリーさん、荷物を持ちます」
「ありがとうございます」
応接間に通されると、40代くらいの女性が現れた。顔はローランドの面影がある。
「ローランドの叔母のイリス・ヤンヌと申します」
「初めまして、アンジェリーナと申します」
「貴女とは婚姻式でも会っているのよ。それ以前にもお見かけしたことがあるわ。記憶を失くしたと手紙に書いてあったけど、不便よね」
「(違う意味で)不便ですけど、問題ありません」
「お食事はお部屋に運んだ方がいいのかしら」
「一緒に食べないのですか?」
「では、食堂に用意させましょう。朝食もそれでいいかしら」
「はい、お願いします。
あの、子爵のお見舞いをしたいのですが、可能ですか?」
「案内するわ」
部屋に向かう途中で何の病気か聞いてみた。
最初は脚の怪我だったらしい。完治はしたものの、リハビリを嫌がって歩かないまま。
車椅子も嫌がり部屋から出なくなってしまった。
マッサージの人を雇い入れて毎日1時間脚をほぐしているらしい。
多分 専属の理学療法士といったところだろうか。
刺激になってくれたらと様々な人を招いたが、友人知人レベルでは会おうとせず、親戚だけは多少話をするみたい。
それでローランドを呼んで効果が無かったので、次は私に手紙が来た。
きっと夫人は人気の馬が全て外れたので大穴を狙うことにしたのだろう。
ウィルが言うには、この身体の持ち主アンジェリーナは格下の相手はしない人だったらしい。夫人は子爵家に嫁いでもミュローノ侯爵家出身の女性なのにと思うけど、アンジェリーナは仲良くなろうとはしなかったようだ。
「あなた。ローランドのお嫁さんのアンジェリーナ様がお見舞いにいらしてくれたわよ」
「どうせ仕方なくだろう」
不機嫌そうにソファに座っていた。
私が来たから着替えてソファに座らせてもらったようだ。
「あなた」
「叔父様、お久しぶりですと言いたいのですが記憶を失くして自分の名前さえ分からない状態になってしまったので……“初めまして”、アンジェリーナと申します。よろしくお願いします」
「全く無いのか」
「はい。先日、すれ違ったローランドを夫だと分からずに他所向きの笑顔を作ってしまいました。私と彼は仲が悪いと聞いております。さぞ、気持ち悪いと思ったことでしょう」
「…そうか」
「叔父様とはどうでしたか?叔父様も私が嫌いですか?」
「……どうだったか…私も忘れたよ」
思った通り。記憶を失くした若い女相手に“嫌いだ”とは言い出し難いよね。
ここに来る前にマリーにローランドの叔母夫妻との関係を聞いたら、特に子爵とは仲が良くなかったと言われた。
意地悪とか口論とかないけど、挨拶を終えるとお互いが話しかけなかったとか。
「では、私の遊び相手になってくださいね」
「は?」
「記憶をないということは、私には家族も友人も自分自身でさえも失ったということです。目は見えていますが記憶の目は失目しました。そんな小娘を哀れんで 手を差し伸べてくださいますよね?紳士ですものね?」
「も、もちろんだ」
「嬉しい!先ずは叔父様の子供の頃の話を聞かせてください。私には子供の頃の記憶も、父に抱っこされた記憶も母に叱られた記憶も失くなってしまいましたから」
「そ、そうか。よし、では天才と呼ばれるほど早く歩き始めた時の頃から話してあげよう」
「はいっ」
マリーの情報だと、子爵はプライドの高い人と聞いたので、記憶を失くした可哀想な小娘作戦とヨイショ作戦を決行することにした。
「すごい!そんなに早く歩き始めたのですね!」
「転ばずに部屋の端からトコトコと歩いて廊下まででたと母が言っていた。その後は……」
子爵の自慢話で1日を終えた。
まだ3歳の話を終えたところだ。このペースだと現在まで追いつくのにかなりの日数がかかるだろう。
「それで、成人の儀で妻と出会ったのだが、一目惚れをされてしまってな」
「分かります。叔父様はカッコいいですから」
「そうだろう、そうだろう。
だが私は不埒者ではないからな。あの日は妻以外と踊らなかったよ」
ふうん。一目惚れをしたのは子爵の方ね。
「え~。叔父様にダンスを教えていただきたかったのに…」
「私とか」
「私、ダンスも忘れてしまって、まだダンスの教師も雇えていないのです。こちらに来たのですからダンスがお上手な天才肌の叔父様に教えてもらえたらと期待していましたのに」
「…だが、この脚じゃ」
「完治はしていると言っていたじゃないですか。リハビリは人の手を借りるからと少し恥ずかしかっただけですよね?ですがあれだけ早く歩き始めた過去を持つ叔父様なのですから、リハビリ患者の歴史を塗り替えたと思うのです。リハビリは努力と根気も必要です。せっかくですから叔父様の素晴らしさを使用人達にも見せましょう」
「ん?」
「使用人達や私兵達に、人生の壁を乗り越える姿を見せてこそ、尊敬の念を更に得ることになるのです。高貴な子爵様が頑張っているのだから、我々はもっと頑張らなくてはいけないと奮起しますし、身近に感じるはずです」
「身近にか」
「叔父様は何でも出来てしまうかもしれませんが陰ながら努力もしてこられたはずです。その努力を隠すのは間違いです。私達凡人は努力なくして進歩はありません。更に言えば努力の仕方も教えてもらわないと間違った努力をしがちです。
天才だからと終わらせてしまえば凡人は手が届かないと諦めてしまいます。努力する姿を見せてこそ身近に感じ、我々も頑張ろうと思うのです。
いいですか、叔父様。これは人生の戦いです。先陣を切って剣を振り下ろす将軍がいるからこそ士気が高まり兵士達があとに続くのです。叔父様は子爵家の将軍です。脚は完治しているのに自らの脚で歩こうとしない将軍など士気が下がります。
さあ、叔父様!この屋敷の全て者に分からせるのです!将軍は叔父様だと!自分に続けと剣を抜くのです!」
「よし、アンジェリーナ!私は将軍だ!」
「そうです!将軍閣下!」
「ダニエル!!ダニエル!!」
叔父様は執事ダニエルさんにリハビリ士を呼べと命じた。
途中 有名らしき観光地を素通りして、2日目に到着したのは、長閑な田舎町だった。
屋敷の近くには幅の広い澄んだ川が流れていた。
「アンジェリーナ様、到着したみたいですね」
「美しい場所ね。空気も美味しいし」
ガチャ
「どうぞ リーナ様」
「ありがとう ラウル」
馬車を降りると中から使用人が出てきた。
「執事のダニエルと申します。ようこそヤンヌ子爵邸へ」
「ダニエルさん、こんにちは。アンジェリーナ・ミュローノと申します。彼女は私の専属メイドでマリーと申します。よろしくお願いします」
「アンジェリーナ様をお迎え出来て光栄でございます。さあ、どうぞ中へ。
マリーさん、荷物を持ちます」
「ありがとうございます」
応接間に通されると、40代くらいの女性が現れた。顔はローランドの面影がある。
「ローランドの叔母のイリス・ヤンヌと申します」
「初めまして、アンジェリーナと申します」
「貴女とは婚姻式でも会っているのよ。それ以前にもお見かけしたことがあるわ。記憶を失くしたと手紙に書いてあったけど、不便よね」
「(違う意味で)不便ですけど、問題ありません」
「お食事はお部屋に運んだ方がいいのかしら」
「一緒に食べないのですか?」
「では、食堂に用意させましょう。朝食もそれでいいかしら」
「はい、お願いします。
あの、子爵のお見舞いをしたいのですが、可能ですか?」
「案内するわ」
部屋に向かう途中で何の病気か聞いてみた。
最初は脚の怪我だったらしい。完治はしたものの、リハビリを嫌がって歩かないまま。
車椅子も嫌がり部屋から出なくなってしまった。
マッサージの人を雇い入れて毎日1時間脚をほぐしているらしい。
多分 専属の理学療法士といったところだろうか。
刺激になってくれたらと様々な人を招いたが、友人知人レベルでは会おうとせず、親戚だけは多少話をするみたい。
それでローランドを呼んで効果が無かったので、次は私に手紙が来た。
きっと夫人は人気の馬が全て外れたので大穴を狙うことにしたのだろう。
ウィルが言うには、この身体の持ち主アンジェリーナは格下の相手はしない人だったらしい。夫人は子爵家に嫁いでもミュローノ侯爵家出身の女性なのにと思うけど、アンジェリーナは仲良くなろうとはしなかったようだ。
「あなた。ローランドのお嫁さんのアンジェリーナ様がお見舞いにいらしてくれたわよ」
「どうせ仕方なくだろう」
不機嫌そうにソファに座っていた。
私が来たから着替えてソファに座らせてもらったようだ。
「あなた」
「叔父様、お久しぶりですと言いたいのですが記憶を失くして自分の名前さえ分からない状態になってしまったので……“初めまして”、アンジェリーナと申します。よろしくお願いします」
「全く無いのか」
「はい。先日、すれ違ったローランドを夫だと分からずに他所向きの笑顔を作ってしまいました。私と彼は仲が悪いと聞いております。さぞ、気持ち悪いと思ったことでしょう」
「…そうか」
「叔父様とはどうでしたか?叔父様も私が嫌いですか?」
「……どうだったか…私も忘れたよ」
思った通り。記憶を失くした若い女相手に“嫌いだ”とは言い出し難いよね。
ここに来る前にマリーにローランドの叔母夫妻との関係を聞いたら、特に子爵とは仲が良くなかったと言われた。
意地悪とか口論とかないけど、挨拶を終えるとお互いが話しかけなかったとか。
「では、私の遊び相手になってくださいね」
「は?」
「記憶をないということは、私には家族も友人も自分自身でさえも失ったということです。目は見えていますが記憶の目は失目しました。そんな小娘を哀れんで 手を差し伸べてくださいますよね?紳士ですものね?」
「も、もちろんだ」
「嬉しい!先ずは叔父様の子供の頃の話を聞かせてください。私には子供の頃の記憶も、父に抱っこされた記憶も母に叱られた記憶も失くなってしまいましたから」
「そ、そうか。よし、では天才と呼ばれるほど早く歩き始めた時の頃から話してあげよう」
「はいっ」
マリーの情報だと、子爵はプライドの高い人と聞いたので、記憶を失くした可哀想な小娘作戦とヨイショ作戦を決行することにした。
「すごい!そんなに早く歩き始めたのですね!」
「転ばずに部屋の端からトコトコと歩いて廊下まででたと母が言っていた。その後は……」
子爵の自慢話で1日を終えた。
まだ3歳の話を終えたところだ。このペースだと現在まで追いつくのにかなりの日数がかかるだろう。
「それで、成人の儀で妻と出会ったのだが、一目惚れをされてしまってな」
「分かります。叔父様はカッコいいですから」
「そうだろう、そうだろう。
だが私は不埒者ではないからな。あの日は妻以外と踊らなかったよ」
ふうん。一目惚れをしたのは子爵の方ね。
「え~。叔父様にダンスを教えていただきたかったのに…」
「私とか」
「私、ダンスも忘れてしまって、まだダンスの教師も雇えていないのです。こちらに来たのですからダンスがお上手な天才肌の叔父様に教えてもらえたらと期待していましたのに」
「…だが、この脚じゃ」
「完治はしていると言っていたじゃないですか。リハビリは人の手を借りるからと少し恥ずかしかっただけですよね?ですがあれだけ早く歩き始めた過去を持つ叔父様なのですから、リハビリ患者の歴史を塗り替えたと思うのです。リハビリは努力と根気も必要です。せっかくですから叔父様の素晴らしさを使用人達にも見せましょう」
「ん?」
「使用人達や私兵達に、人生の壁を乗り越える姿を見せてこそ、尊敬の念を更に得ることになるのです。高貴な子爵様が頑張っているのだから、我々はもっと頑張らなくてはいけないと奮起しますし、身近に感じるはずです」
「身近にか」
「叔父様は何でも出来てしまうかもしれませんが陰ながら努力もしてこられたはずです。その努力を隠すのは間違いです。私達凡人は努力なくして進歩はありません。更に言えば努力の仕方も教えてもらわないと間違った努力をしがちです。
天才だからと終わらせてしまえば凡人は手が届かないと諦めてしまいます。努力する姿を見せてこそ身近に感じ、我々も頑張ろうと思うのです。
いいですか、叔父様。これは人生の戦いです。先陣を切って剣を振り下ろす将軍がいるからこそ士気が高まり兵士達があとに続くのです。叔父様は子爵家の将軍です。脚は完治しているのに自らの脚で歩こうとしない将軍など士気が下がります。
さあ、叔父様!この屋敷の全て者に分からせるのです!将軍は叔父様だと!自分に続けと剣を抜くのです!」
「よし、アンジェリーナ!私は将軍だ!」
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