15 / 18
お兄ちゃん
しおりを挟む
「アンジェリーナ様、起きてください。もうすぐ昼食のお時間ですよ」
マリーの声を聞いて目覚めると太陽は高い位置にいた。
「おはよう」
「お顔を洗いましょう」
夜遅くマルトー商会のパーティから戻り、寝支度をした。時刻は1時を過ぎていた。
その後、ローランドが部屋に来てキスを始めた。
“泣いたから、気分を変えないとぐっすり眠れないだろう?”
そう言って私の体の準備を整えるとナカに入ってきた。そうなるとローランドの思うがままだ。
途中から記憶がない。
「ローランドは?」
「お仕事をなさっています。リーナ様には昼食まで寝かせておくようにと」
「元気なのね」
「はい、とても機嫌が良さそうでした」
「……」
「セルビー男爵家から花束付きで贈り物が届いております」
手紙を読むと、謝罪と感謝が綴られていた。
「あとはヤンヌ子爵とプラジール侯爵様からお手紙を預かっております」
プラジール侯爵ってアンジェリーナの父親だよね。
「閣下の手紙から読むわ」
“虐められていないか?遠慮せず帰ってきなさい”といった内容と、スキップができるようになったと書かれていた。
滞在中、スキップを教えていた。閣下にとって まだ難易度の高い課題だと思う。
次に、プラジール侯爵の手紙を読んだ。
“王太子殿下の婚約者が来国するから、ローランドと歓迎会に参加しなさい。ドレスを処分したのは知っている。こちらで何着か作ってあるから心配するな。一度戻って来なさい。明日迎えの馬車を送る”
「こわっ」
「アンジェリーナ様?」
「パパに ドレスの処分のことがバレてる。何で?」
「わ、私ではありませんっ」
「監視カメラでもあるわけ?」
「えっと?」
「何でもない。この手紙をローランドに渡して」
「かしこまりました」
直ぐに手紙を持ってローランドが現れた。
「一緒に行く」
「多分だけど、ローランドにとっては敵陣かもよ?」
「それは俺のせいだ。受け入れて貰えるようにするよ」
「無理しなくていいからね」
「叔父上は何て?」
「リハビリ頑張っているみたい。様子見に行かないと」
「俺も行く」
「忙しいんじゃないの?」
「絶対に行く」
翌日、プラジール家の馬車が到着し、降りて来たのはアンジェリーナに似ていないけど色が同じの男性だった。
「ねえ、マリー。誰?」
「ご長男のイアン様です」
「似てない気しかしないけど」
「紛れもなくアンジェリーナ様とご兄妹です。イアン様はエリザベス大奥様似、アンジェリーナ様は侯爵様似です」
「ふうん」
「アンジェリーナ、久しいな」
「お兄ちゃん、こんにちは」
「……」
少し驚いた顔をしているじゃない。
「マリー。違うじゃない。人違いよ。
失礼しました。アンジェリーナ・ミュローノと申します。お会いしたことがあるようですが、記憶を失くしてしまい覚えておりません」
「お前の兄であっている」
「お久しぶりです、イアン殿」
「ローランド…元気そうだな。
アンジェリーナ、中を案内してくれないか」
「屋敷の中? どちらかというと、私も一緒に案内されたいかな。ウィル、お願いできる?」
「リーナ、俺が案内するよ」
ローランドが屋敷内の案内をしてくれた。
「で、ここがお前の部屋か」
「そうです」
イアンは勝手に引き出しやクローゼットを開けて見始めた。
「ちょっと!何するの」
「お前の暮らしの確認だ」
バチッ
私はイアンの手の甲を叩いた。
「ここはミュローノ侯爵家なの。妹とはいえ女の子の部屋を勝手に物色するなんて非常識よ」
「そうさせるお前が悪い」
そう言って違う引き出しを開けた。
「いい加減にして。1年近くもアンジェリーナを放っておいたくせに、他所の家にきて家族面しないで。
マリーから、普通の家族だって聞いていたけど違うよね。無関心なのか何なのか知らないけど、手紙の一つも送って来たことが無いらしいじゃない。
アンジェリーナが独りでこの部屋でずっと引きこもっていたのによ?マリーが居なかったらどうなっていたか。
部屋から出て。
さっさとプラジールに行きましょう」
「……」
馬車の中は気まずかった。
イアンは外を見ているし、会話もない。
ローランドが手を握った。
チラッと見ると“大丈夫だ”と囁いた。
到着した屋敷も全く覚えがない。
中に入り、居間らしき部屋に通されると直ぐにイアンに似た女性とアンジェリーナに似た男性が現れた。
「ローランド。久しぶりだな」
「侯爵、侯爵夫人、お久しぶりです」
「アンジェリーナ、…少し痩せたか?」
「さあ、元が分かりませんので」
「本当に記憶を失ったの?」
「はい」
「私達のことは?」
「覚えておりません」
「アンジェリーナは俺のことさえ分かりません」
「何故その様なことになったんだ」
「それさえ覚えていません」
「ローランド」
「自分にも分かりかねますが、理由さえ分からないのは申し訳なく思っております。
ご存知の通り、記憶を失くす前のアンジェリーナとは不仲でした。だとしても俺が彼女にしたことは不誠実で男らしくありませんでした。
メイドをひとり連れていたとしても、令嬢がひとり他家に嫁いで心細かったはずです。なのに酷い対応をしました。申し訳ありません。
リーナには既に謝罪しました。これから良き夫婦となれるよう、リーナと向き合い大事にします」
「ローランド。
ヴァイオレット・バリヤスとの最初は、女の虚偽だ。酒に睡眠薬を混ぜて、フラつき始めたローランドを支えて個室に連れ込んだ。
あたかも何かあったように細工したようだ。
だがそれ以降は覚えがあるだろう」
「はい」
「浮気相手とパーティに出るのは良くない」
「二度としません」
その後、私が記憶を失くしてからの行動や考えを伝えた。
マリーの声を聞いて目覚めると太陽は高い位置にいた。
「おはよう」
「お顔を洗いましょう」
夜遅くマルトー商会のパーティから戻り、寝支度をした。時刻は1時を過ぎていた。
その後、ローランドが部屋に来てキスを始めた。
“泣いたから、気分を変えないとぐっすり眠れないだろう?”
そう言って私の体の準備を整えるとナカに入ってきた。そうなるとローランドの思うがままだ。
途中から記憶がない。
「ローランドは?」
「お仕事をなさっています。リーナ様には昼食まで寝かせておくようにと」
「元気なのね」
「はい、とても機嫌が良さそうでした」
「……」
「セルビー男爵家から花束付きで贈り物が届いております」
手紙を読むと、謝罪と感謝が綴られていた。
「あとはヤンヌ子爵とプラジール侯爵様からお手紙を預かっております」
プラジール侯爵ってアンジェリーナの父親だよね。
「閣下の手紙から読むわ」
“虐められていないか?遠慮せず帰ってきなさい”といった内容と、スキップができるようになったと書かれていた。
滞在中、スキップを教えていた。閣下にとって まだ難易度の高い課題だと思う。
次に、プラジール侯爵の手紙を読んだ。
“王太子殿下の婚約者が来国するから、ローランドと歓迎会に参加しなさい。ドレスを処分したのは知っている。こちらで何着か作ってあるから心配するな。一度戻って来なさい。明日迎えの馬車を送る”
「こわっ」
「アンジェリーナ様?」
「パパに ドレスの処分のことがバレてる。何で?」
「わ、私ではありませんっ」
「監視カメラでもあるわけ?」
「えっと?」
「何でもない。この手紙をローランドに渡して」
「かしこまりました」
直ぐに手紙を持ってローランドが現れた。
「一緒に行く」
「多分だけど、ローランドにとっては敵陣かもよ?」
「それは俺のせいだ。受け入れて貰えるようにするよ」
「無理しなくていいからね」
「叔父上は何て?」
「リハビリ頑張っているみたい。様子見に行かないと」
「俺も行く」
「忙しいんじゃないの?」
「絶対に行く」
翌日、プラジール家の馬車が到着し、降りて来たのはアンジェリーナに似ていないけど色が同じの男性だった。
「ねえ、マリー。誰?」
「ご長男のイアン様です」
「似てない気しかしないけど」
「紛れもなくアンジェリーナ様とご兄妹です。イアン様はエリザベス大奥様似、アンジェリーナ様は侯爵様似です」
「ふうん」
「アンジェリーナ、久しいな」
「お兄ちゃん、こんにちは」
「……」
少し驚いた顔をしているじゃない。
「マリー。違うじゃない。人違いよ。
失礼しました。アンジェリーナ・ミュローノと申します。お会いしたことがあるようですが、記憶を失くしてしまい覚えておりません」
「お前の兄であっている」
「お久しぶりです、イアン殿」
「ローランド…元気そうだな。
アンジェリーナ、中を案内してくれないか」
「屋敷の中? どちらかというと、私も一緒に案内されたいかな。ウィル、お願いできる?」
「リーナ、俺が案内するよ」
ローランドが屋敷内の案内をしてくれた。
「で、ここがお前の部屋か」
「そうです」
イアンは勝手に引き出しやクローゼットを開けて見始めた。
「ちょっと!何するの」
「お前の暮らしの確認だ」
バチッ
私はイアンの手の甲を叩いた。
「ここはミュローノ侯爵家なの。妹とはいえ女の子の部屋を勝手に物色するなんて非常識よ」
「そうさせるお前が悪い」
そう言って違う引き出しを開けた。
「いい加減にして。1年近くもアンジェリーナを放っておいたくせに、他所の家にきて家族面しないで。
マリーから、普通の家族だって聞いていたけど違うよね。無関心なのか何なのか知らないけど、手紙の一つも送って来たことが無いらしいじゃない。
アンジェリーナが独りでこの部屋でずっと引きこもっていたのによ?マリーが居なかったらどうなっていたか。
部屋から出て。
さっさとプラジールに行きましょう」
「……」
馬車の中は気まずかった。
イアンは外を見ているし、会話もない。
ローランドが手を握った。
チラッと見ると“大丈夫だ”と囁いた。
到着した屋敷も全く覚えがない。
中に入り、居間らしき部屋に通されると直ぐにイアンに似た女性とアンジェリーナに似た男性が現れた。
「ローランド。久しぶりだな」
「侯爵、侯爵夫人、お久しぶりです」
「アンジェリーナ、…少し痩せたか?」
「さあ、元が分かりませんので」
「本当に記憶を失ったの?」
「はい」
「私達のことは?」
「覚えておりません」
「アンジェリーナは俺のことさえ分かりません」
「何故その様なことになったんだ」
「それさえ覚えていません」
「ローランド」
「自分にも分かりかねますが、理由さえ分からないのは申し訳なく思っております。
ご存知の通り、記憶を失くす前のアンジェリーナとは不仲でした。だとしても俺が彼女にしたことは不誠実で男らしくありませんでした。
メイドをひとり連れていたとしても、令嬢がひとり他家に嫁いで心細かったはずです。なのに酷い対応をしました。申し訳ありません。
リーナには既に謝罪しました。これから良き夫婦となれるよう、リーナと向き合い大事にします」
「ローランド。
ヴァイオレット・バリヤスとの最初は、女の虚偽だ。酒に睡眠薬を混ぜて、フラつき始めたローランドを支えて個室に連れ込んだ。
あたかも何かあったように細工したようだ。
だがそれ以降は覚えがあるだろう」
「はい」
「浮気相手とパーティに出るのは良くない」
「二度としません」
その後、私が記憶を失くしてからの行動や考えを伝えた。
2,237
あなたにおすすめの小説
顔も知らない旦那様に間違えて手紙を送ったら、溺愛が返ってきました
ラム猫
恋愛
セシリアは、政略結婚でアシュレイ・ハンベルク侯爵に嫁いで三年になる。しかし夫であるアシュレイは稀代の軍略家として戦争で前線に立ち続けており、二人は一度も顔を合わせたことがなかった。セシリアは孤独な日々を送り、周囲からは「忘れられた花嫁」として扱われていた。
ある日、セシリアは親友宛てに夫への不満と愚痴を書き連ねた手紙を、誤ってアシュレイ侯爵本人宛てで送ってしまう。とんでもない過ちを犯したと震えるセシリアの元へ、数週間後、夫から返信が届いた。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
※全部で四話になります。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【片思いの5年間】婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。
五月ふう
恋愛
「君を愛するつもりも婚約者として扱うつもりもないーー。」
婚約者であるアレックス王子が婚約初日に私にいった言葉だ。
愛されず、婚約者として扱われない。つまり自由ってことですかーー?
それって最高じゃないですか。
ずっとそう思っていた私が、王子様に溺愛されるまでの物語。
この作品は
「婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。」のスピンオフ作品となっています。
どちらの作品から読んでも楽しめるようになっています。気になる方は是非上記の作品も手にとってみてください。
別れ話をしましょうか。
ふまさ
恋愛
大好きな婚約者であるアールとのデート。けれど、デージーは楽しめない。そんな心の余裕などない。今日、アールから別れを告げられることを、知っていたから。
お芝居を見て、昼食もすませた。でも、アールはまだ別れ話を口にしない。
──あなたは優しい。だからきっと、言えないのですね。わたしを哀しませてしまうから。わたしがあなたを愛していることを、知っているから。
でも。その優しさが、いまは辛い。
だからいっそ、わたしから告げてしまおう。
「お別れしましょう、アール様」
デージーの声は、少しだけ、震えていた。
この作品は、小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。
ふまさ
恋愛
伯爵令嬢のリネットは、婚約者のハワードを、盲目的に愛していた。友人に、他の令嬢と親しげに歩いていたと言われても信じず、暴言を吐かれても、彼は子どものように純粋無垢だから仕方ないと自分を納得させていた。
けれど。
「──なんか、こうして改めて見ると猿みたいだし、不細工だなあ。本当に、ぼくときみの子?」
他でもない。二人の子ども──ルシアンへの暴言をきっかけに、ハワードへの絶対的な愛が、リネットの中で確かに崩れていく音がした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる