【完結】見染められた令嬢

ユユ

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この世界には数少ないが神にスキルを与えられる者がいる。

そのほとんどが微妙なスキルで効果も弱い。
稀に役立つスキル持ちが産まれるがその場合、学園に無料で通わせてもらう代わりに王宮勤めを約束させる。

一応、性格や思想に難がある場合もあるのでそこは審査はある。

私はスキルを持っていなかった。


伯爵家に生まれたレイナは父から冷遇を受けていた。何故なら彼女の瞳の色はシトリンで髪はダークブロンドだったから。

父は赤髪に茶色の瞳、母は茶色の髪と瞳。
顔立ちも似ていなかった。

そのせいで不義の子という疑念が強かったが祖父が赤子を受け入れたため、父は仕方なく受け入れた。

大恋愛だったはずの結婚も上手くいかなくなり、祖父が引退して爵位を継ぐと母は領地の外れにひとり、使用人と暮らすことになり、父は妾を迎えた。妾には既に娘がいた。

私が産まれてすぐ浮気したのがわかる。異母妹は歳が近く父に色も顔立ちも似ていた。
だから父は異母妹を可愛がった。

そして異母妹のシンシアは第三王子の婚約者候補になり他の候補達と蹴落としあっている。

私は公爵令息の婚約者になった。

実は同時に打診が来ていた。

本来なら王子妃候補はレイナだがシンシア贔屓の父はシンシアを王子妃候補にした。
妾の子とは言え美しい娘だったので第三王子が受け入れた。

フラム公爵家は富も権利もあった。だがレイナの婚約者となったレオナールは不義の子と密かに囁かれていた。
公爵は黒髪に翡翠の瞳、母は茶色の髪に濃い緑の瞳、レオナールは濃紫の髪にアイスブルーの瞳だったから。

だから父は似た者同士をくっつけたのだろう。


この国では16歳のデビュー後でないと婚約できない。
密かに仮婚約を交わす貴族もいるが、法的には許されない。時には揉めることもある。

反故にする貴族もいる。その場合は相手は泣き寝入りしかない。訴え出ても違法な契約なので勝ち目はないし国からお咎めがあるからだ。




私は2週に一度の退屈な時間を過ごしている。婚約者との茶会だ。

不義の子に嫌悪があるのか、好みではないのか私を見ないし会話も弾まない。
何の修行?って感じの時間を過ごさねばならず苦痛だ。心を無にしてお茶を飲む。

フラム家のお茶や菓子は美味しいから、麗奈は一人でお店に食べに来たと思うことにした。




私は麗奈。

親友だったはずの女友達に刺されて死んだ。彼女の大好きな彼氏が別れを告げたらしい。

“麗奈ちゃんのことを好きになってしまった”

結婚を望んでいた彼女は怒りの矛先を私に向けた。

迷惑極まりない。一度二人のデート中に見かけて挨拶しただけだよ?

“清香の親友の麗奈です”

これしか言ってないからね?

そして気が付いたらこの世界にいた。レイナという16歳の伯爵令嬢になっていた。
レイナの記憶があるから困らなかった。それが1ヶ月程前。

レイナは湯浴み中に溺れたらしい。
最後の記憶は強い眠気。
溺死して私の魂が入ったのかな。

その為、前々回のこの時間は中止となっていた。麗奈にとっては会うのは三度目。

私はこの無意味な時間に時々日本語で本音を言う密かな楽しみを持った。


「体調は…」

「問題ございません」

「……」

2週間前も聞いてきた。何故また聞く?
まさか、後遺症のある女とは結婚したくないとか?だったらそういうことにしておけば良かったな。

『美味しい。独りならもっと美味しい』

「……レイナ」

「何でしょう」

「変わったな」

「? いつも通りです」


いつもなら、その後は夕方まで図書室で読書が始まる。少し離れて本を読む。完全に修行だ。

前世?を思い出してからは側にいようとせず、仲良くなろうとせず、話しかけもせず修行を終えたら出来るだけ早く帰っている

今日はケーキを食べお茶を飲み干すと、

「レオナール様。ごちそうさまでした。そろそろ帰りますわ」

「えっ」

「何かございますか?」

「……いや」

「失礼いたします」

立ち上がって帰った。

『破棄してくれないかな~』

「………」





家に着くと話し声が聞こえた。
父とシンシアと男の人の声。

執事に聞くと第三王子が来ていると答えた。

「私はどうした方がいいのかしら。部屋に行ってもいいのか、挨拶をした方がいいのか」

「ご挨拶をなさらないとなりません」

仕方なく執事に案内をしてもらい客間に入って挨拶をした。

「お初にお目にかかります。長女のレイナと申します。王子殿下にご挨拶を申し上げます」

「……あ、エルネストだ」

「私は失礼致しますします。ごゆっくりなさってくださいませ」

低姿勢に挨拶をして部屋に下がった。


夕方になるとシンシアが部屋を訪ねてきた。

「お姉様、エルネスト様が家で夕食を召し上がるのだけど家族なのだからお姉様も呼ぶようにと言われたの」

この顔は行っちゃ駄目だな。

「シンシア。私、調子が悪いの。部屋で食べるわ。謝っておいて」

「お大事に」

当然でしょって態度を隠さないシンシアは第三王子が好きなのだろう。彼自身を好きなのか王子という身分が好きなのか分からないが、私に邪魔をして欲しくないみたいだ。

私は王子妃に興味はない。



1週間後、寝ていると足元に何かいるのが分かった。起きて毛布を剥ぐと鮮やかな色の蛇がいた。

毒蛇だという予感がした。

蛇が飛び掛かろうとした瞬間、

『ストップ!』

一向に痛みがないので見てみると蛇は大きな口を開けて飛び掛かろうとした姿のまま動かない。

何で?

人を呼ぼうと思ったが舌さえ微塵も動かさない。私が動いてもそのまま。

あり得ない。

試しにいつでも逃げられるよう扉の近くに行き、クッションを投げてみた。

かすった程度だが蛇の頭に当たり、固まったまま横倒しになった。

ゆっくり近寄ると口も舌もそのままだった。



物置から手袋と大きな瓶を持ってきた。まだそのまま。
手袋をして頭を掴んでもそのまま。
瓶の中に押し込んで蓋をした。

瓶を机に置き、中の蛇を覗きながら

『何で動かないのかな』

その瞬間蛇は暴れ出した。

『ヒィッ』

なんなの!?


しばらく蛇を見つめ考えた。そしてまた

『ストップ』

蛇は動かなくなる。

『動いていいよ』

蛇は暴れ出す。

もしかしてスキル?

覚えている3カ国語で言っても効果ありだった。

ただ動きを止めることしかできない。

あいつらが知ったら煩いから黙っておくことにした。















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