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第6章・史上最凶の悪役令嬢が動き出す。

04容易く乗っ取れた。

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 ジュリアにしっかりとした学習の機会を与えて学園の卒業資格を与えたかったモーフィング子爵の深い愛情だったけど、本来短期的な運用を想定されていた自宅学習制度を無理に利用し続けるほどの資産はなかった。

 手当り次第に色々な事業に手を出したのはこの為だ。

 でも結局、事業は上手くいかずに破綻はたん寸前。
 ジュリアの体調も改善せず。

 そんなところを私たちは漬け込んだ……いや、ぴったりとハマってくっついた。

 私は事業計画の見直しや債務整理を行えたし、ジュリアの体調を回復させる方法も知っていたからね。

 ちなみにジュリアは不治の病とかじゃあない。
 ビタミンB1欠乏症けつぼうしょう、つまり脚気かっけだ。

 大昔の日本の食生活だと豚肉とか小麦を食べなかったりして起こったやつ。現代日本でも偏食が続くと起こりうるし、末端神経障害と心不全を引き起こすことがある実は結構厄介な病気。心不全から全身のむくみや痺れがあったり強い倦怠感けんたいかんにも襲われる。

 とはいえ食生活を改善すれば、わりとあっさり治るっちゃあ治る。豚肉食べて穀物食べてしっかり療養りょうようすればいい。

 でも、ジュリアにはそれが出来ない。

 ジュリアは重度のアレルギー体質で、ビタミンB1が摂取せっしゅできる食品に軒並のきなみアレルギー反応が出る。故に偏食を余儀なくされる。

 脚気かっけを改善しようとすればアナフィラキシーで全身に蕁麻疹じんましんが出て呼吸不全も引き起こす。
 アレルギーを気にし続けると脚気かっけの症状が出てしまう。
 心不全や呼吸不全による慢性的まんせいてきな体力不足と偏食で免疫力も下がっていて、風邪も引きやすいし怪我も治りにくいのであまり外出が出来ず運動不足で体力不足が改善しない悪循環が起こっている。

 これがジュリアの虚弱体質の理由。

 私は医者じゃないけど前世で医者と関係を持っていた程度の医療知識はあるし、栄養学や調理などに関してもスポーツトレーナーやシェフと関係を持つ程度の知識があったからね。

 アレルギーテストをパスしたサプリメントを作り出すなんてことは流石に個人じゃ無理だけど、アレルギー反応を起こさせずに効率よくビタミンB1を摂取せっしゅする食事療法やノワールによるストレッチ講座をしたりして少しずつだけど回復に向かっている。

 ジュリアの肌はボロボロでむくみも酷いし、女の子としては外に出歩きたくない姿になっている。ジュリアは可愛いのに、かなりもったいないし人前に出たくない。

 そこを埋めたら容易たやすく乗っ取れた。

 さて。
 だらだらと私の近況をわかるようなわからないような雰囲気で語ったけど。

 
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