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第7章・ただひとつの仕事をしただけの原作者。
09売れるに決まってんだろ。
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「柿山先生は結婚とか考えてるの?」
適当な居酒屋に入って、煙草をくゆらせながら接着少女……いや最早お節介な親戚のおばちゃんは渋谷に話を振る。
「めっっっちゃ、超考えてる。医者か超人気イケメン声優で筋骨隆々な男とかいない?」
渋谷は一ミリも考えてない返しをする。
「あー超人気イケメン声優はわからないけど、独身の自衛隊衛生科の男なら多分探せるよ」
そんな馬鹿の返しにハルちゃんはちゃん回答する。
「それ医者じゃなくて自衛官じゃん、私はただお金持ちの元でぬくぬく絵だけ描いてたいだけだからさ」
恥ずかしげもなく渋谷は馬鹿なことを言う。
こいつ……いやいいか。渋谷は突然馬鹿になったわけじゃない、今に始まったことじゃないから何も言うこともないか。
「うーん、でも多分それ柿山先生を満たさないよ。柿山先生は甘やかさないで上手く操縦してくれるタイプとぴったり噛み合うよ」
味噌焼きおにぎり箸で切って小さく口に運びながら、渋谷にちゃんと答える。
「えー、甘やかされたいんだけど私ぃ……。まあでもユキ先輩より先に結婚する気はないけどね」
「確かに、セッちゃんはどうなの?」
渋谷の何気ない一言に、ハルちゃんは一気に標的を私に変更する。
ぐ……渋谷てめぇ…………いや、ハルちゃんはいつでもこの流れにする気だった。
仕方ない。まあぶっちゃけ心境の変化がなかったわけでもないし、ちょっとちゃんと答えようかな。
「…………うーんまあ、それこそノンプリ次第じゃない?」
私は煙草に火をつけながら、答え始める。
「私も今は有難いことに物書きで食べれてるし、一応アニメ化候補って言われる程度にはヒット作にも恵まれたけど。作家に安定する瞬間なんてないからさ、あいつがパラレルデザインでちゃんと結果出してゲーム業界でやってけるってならないと。今んとこは私のが稼げてるけど、私は絶対どっかで仕事が減る。だから生涯年収で高崎の方が稼げる感じにならないと、一緒に暮らすのは難しいかもね」
つらつらと煙草をくゆらせて、がっつり私の現実的な結婚観を語る。
別に高崎と結婚したくないことはない、というか結婚するんなら高崎しかいない。
でも流石に付き合ってもうすぐ五年。
勢いで婚姻届を出して世界に二人だけみたいなことが出来てしまうような情熱は、付き合いたての頃ほどはない。
別に好きが薄れたとかはない、好きになっていく高揚感が好きになりきったことでなくなっただけだ。天井を維持している。
そんなにまで好きな人と死ぬまで一緒に生きていくとなれば、万全を期したくもなる。
でも、私と高崎の生き方は万全を期すのに向いていないだけだ。
それとやっぱ引越しとか結婚の挨拶とか保険の手続きとかが単純に面倒臭いのもあるけど。
「セッちゃんらしいけど、別に高崎さんはセッちゃんが書けなくなっても何とかすると思うし。セッちゃんも別に高崎さんが結果出せなくても何とかするでしょ。お互いに理想形を追うって素敵だけど、そんな素敵な関係ならさっさと結婚しちゃえばいいのに……とは思うけど。確かにノンプリはいいタイミングになるかもね」
にやにやしながらハルちゃんは私たちについての思いを述べて、梅酒を煽る。
なんか本当にハルちゃんから見て、本当にぴったりなんだろうな。この機嫌の良さはぴったりハマってるものを眺めてる時のやつだ。
「じゃあもう結婚決定だな、私が描いたんだ。売れるに決まってんだろ。式場抑えとくかぁ?」
カシスオレンジ二杯でえらくご機嫌な渋谷は、味噌焼きおにぎりを頬に詰めながらそんなかっこいいことを言ってみせる。
「そっか……結婚式とかもあるのか……うっわ、ダルくなってきた。やっぱなしで」
「あ、私あれやりたい! 式中に教会の馬鹿でかい扉バーン! 開けて、花嫁チャリのカゴに入れて飛んで逃げて、実は私が幽霊だったってやつ!」
「三つくらい名作映画が混ざってる……、どうやったらその三作が混ざるの……?」
そんな話をして、楽しく飲み明かし過ごして。
適当な居酒屋に入って、煙草をくゆらせながら接着少女……いや最早お節介な親戚のおばちゃんは渋谷に話を振る。
「めっっっちゃ、超考えてる。医者か超人気イケメン声優で筋骨隆々な男とかいない?」
渋谷は一ミリも考えてない返しをする。
「あー超人気イケメン声優はわからないけど、独身の自衛隊衛生科の男なら多分探せるよ」
そんな馬鹿の返しにハルちゃんはちゃん回答する。
「それ医者じゃなくて自衛官じゃん、私はただお金持ちの元でぬくぬく絵だけ描いてたいだけだからさ」
恥ずかしげもなく渋谷は馬鹿なことを言う。
こいつ……いやいいか。渋谷は突然馬鹿になったわけじゃない、今に始まったことじゃないから何も言うこともないか。
「うーん、でも多分それ柿山先生を満たさないよ。柿山先生は甘やかさないで上手く操縦してくれるタイプとぴったり噛み合うよ」
味噌焼きおにぎり箸で切って小さく口に運びながら、渋谷にちゃんと答える。
「えー、甘やかされたいんだけど私ぃ……。まあでもユキ先輩より先に結婚する気はないけどね」
「確かに、セッちゃんはどうなの?」
渋谷の何気ない一言に、ハルちゃんは一気に標的を私に変更する。
ぐ……渋谷てめぇ…………いや、ハルちゃんはいつでもこの流れにする気だった。
仕方ない。まあぶっちゃけ心境の変化がなかったわけでもないし、ちょっとちゃんと答えようかな。
「…………うーんまあ、それこそノンプリ次第じゃない?」
私は煙草に火をつけながら、答え始める。
「私も今は有難いことに物書きで食べれてるし、一応アニメ化候補って言われる程度にはヒット作にも恵まれたけど。作家に安定する瞬間なんてないからさ、あいつがパラレルデザインでちゃんと結果出してゲーム業界でやってけるってならないと。今んとこは私のが稼げてるけど、私は絶対どっかで仕事が減る。だから生涯年収で高崎の方が稼げる感じにならないと、一緒に暮らすのは難しいかもね」
つらつらと煙草をくゆらせて、がっつり私の現実的な結婚観を語る。
別に高崎と結婚したくないことはない、というか結婚するんなら高崎しかいない。
でも流石に付き合ってもうすぐ五年。
勢いで婚姻届を出して世界に二人だけみたいなことが出来てしまうような情熱は、付き合いたての頃ほどはない。
別に好きが薄れたとかはない、好きになっていく高揚感が好きになりきったことでなくなっただけだ。天井を維持している。
そんなにまで好きな人と死ぬまで一緒に生きていくとなれば、万全を期したくもなる。
でも、私と高崎の生き方は万全を期すのに向いていないだけだ。
それとやっぱ引越しとか結婚の挨拶とか保険の手続きとかが単純に面倒臭いのもあるけど。
「セッちゃんらしいけど、別に高崎さんはセッちゃんが書けなくなっても何とかすると思うし。セッちゃんも別に高崎さんが結果出せなくても何とかするでしょ。お互いに理想形を追うって素敵だけど、そんな素敵な関係ならさっさと結婚しちゃえばいいのに……とは思うけど。確かにノンプリはいいタイミングになるかもね」
にやにやしながらハルちゃんは私たちについての思いを述べて、梅酒を煽る。
なんか本当にハルちゃんから見て、本当にぴったりなんだろうな。この機嫌の良さはぴったりハマってるものを眺めてる時のやつだ。
「じゃあもう結婚決定だな、私が描いたんだ。売れるに決まってんだろ。式場抑えとくかぁ?」
カシスオレンジ二杯でえらくご機嫌な渋谷は、味噌焼きおにぎりを頬に詰めながらそんなかっこいいことを言ってみせる。
「そっか……結婚式とかもあるのか……うっわ、ダルくなってきた。やっぱなしで」
「あ、私あれやりたい! 式中に教会の馬鹿でかい扉バーン! 開けて、花嫁チャリのカゴに入れて飛んで逃げて、実は私が幽霊だったってやつ!」
「三つくらい名作映画が混ざってる……、どうやったらその三作が混ざるの……?」
そんな話をして、楽しく飲み明かし過ごして。
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