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第7章・ただひとつの仕事をしただけの原作者。
11鉄は熱いうちに打つ。
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「誰相手に言ってんだブス、売るに決まってんだろ」
高崎は一切怯まず、渋谷に睨みを効かせて返す。
こいつもこいつで大概、馬鹿だ。
勝負師というか……。
喧嘩が弱いのに喧嘩好きという、変態だ。
だから対戦ゲームが好きでゲーセンに入り浸っていた。マジ喧嘩に発展して鼻の骨折られても、ボコボコにされて服を剥かれて財布を取られても刺青だらけの人に車に詰め込まれても。
煽るし、乗るし、負けてきた。
まあこの性分で生きて、勝負してきたことがたまたま噛み合って企画を通すことができた。
社会に溶け込んだ変態である。
だがしかし。
「だぁれがぁ……ブスだっゴラァあああああぁあああああぁッ‼」
「ぐがぁ……っ⁉ いってぇぇぇ………………マジか、てめっ……フグトルネードだとぉぉ……」
問答無用でそう言いながら渋谷は高崎の太ももに回転しながら踵で、がちんと音がするくらい勢いよく蹴り抜いて高崎は悶絶してうずくまる。
渋谷はちゃんと馬鹿なので、容赦なく暴力を用いる。
というかフグトルネード……なっつかし、ハルちゃんが子供の頃に真似してよく練習してたわ。渋谷もそのクチだったらしい。
さて、そろそろ止めるか。
「はいはいおしまいね。いい蹴りだった。今回は高崎っていうかパラレルデザインが悪いんだから甘んじて受け入れて。それと……あんたどうせここからしばらく泊まり込みなんでしょ?」
私は興奮する渋谷をなだめながら、高崎に問いかける。
「あ、ああ……まあそうだね、多分ここから年明けしばらくは会社に住み着くことになる」
高崎は右太ももを擦りながら、半泣きで立ち上がったところをネクタイを引っ張ってこちらに寄せて。
「今のうちに、やれることやっとくよ。クリスマスイブだしね」
私は高崎の耳元で囁く。
私も大概だ。
私はこんな馬鹿な後輩と変態の彼氏が大好きな、馬鹿で変態だ。
「……は……はい」
高崎は顔を赤くしつつ、返事をする。
「んだよエロカップルがよぉ、私もハルちゃんにマジで男紹介してもらうおう」
喫煙ゾーンのパイプ椅子に座って煙草に火をつけながら、うんざりした顔で渋谷は呟いた。
そんなこんなで。
クリスマスイブからクリスマスの朝にかけてがっつりやれることをやって。
渋谷はハルちゃんがセッティングした合コンで「絵描いてよ」と言われて、ブチ切れてしまっておじゃんになり。
三人で年を越して。
「あー久しぶりにゆっくりできたぁ…………。まあノンプリの件はちょっと残念だけど、アレで売れるし完全版も出るよ。あと柿山先生には謝っておいて、先生にぴったりくっつく人はちょっとすぐには用意できなかった。じゃあまた、今年は多分もう日本には戻って来れないから良いお年を」
すっきりした顔で新年に年末の挨拶を済ませ、ハルちゃんは隙間なくきっちり物を詰め込んだトランク一つ持って再び世界を股に掛けに行った。
そして一月もあっという間に下旬、つまり。
一月二十七日【ノンプリンス☆ノンプリンセス~何者でもない私たちは恋をする~】発売。
初速は上々、初週販売本数もゲーム雑誌調べで三位。乙女ゲームとしてはかなりの滑り出し。
掲示板の乙女ゲー板でも、批難するのは私と渋谷のアンチとパラレルデザインの硬派なシューティングファンくらい。
思った以上にまあまあの話題性が出た。
渋谷書き下ろし販促ポスターの効果が凄かった。
ファンタジー風味待ちをしている人間が思ったより多かった。
ネットの記事やら掲示板を見て、にやにやしながら煙草をくゆらせていると。
携帯が鳴る。
この着うたは高崎だ。
「セッちゃん鉄は熱いうちに打つ、ここで勝負かけるぞ」
携帯が発熱したかと思うくらいに熱を帯びた声で、高崎は言う。
の、ノっている……。
声色でわかる、本来空回りして風切り音だけを出すだけのやる気が地面に食いついてとんでもない推進力を生んでいる。
なら私はこう返す。
「私は何を書けばいい?」
高崎は一切怯まず、渋谷に睨みを効かせて返す。
こいつもこいつで大概、馬鹿だ。
勝負師というか……。
喧嘩が弱いのに喧嘩好きという、変態だ。
だから対戦ゲームが好きでゲーセンに入り浸っていた。マジ喧嘩に発展して鼻の骨折られても、ボコボコにされて服を剥かれて財布を取られても刺青だらけの人に車に詰め込まれても。
煽るし、乗るし、負けてきた。
まあこの性分で生きて、勝負してきたことがたまたま噛み合って企画を通すことができた。
社会に溶け込んだ変態である。
だがしかし。
「だぁれがぁ……ブスだっゴラァあああああぁあああああぁッ‼」
「ぐがぁ……っ⁉ いってぇぇぇ………………マジか、てめっ……フグトルネードだとぉぉ……」
問答無用でそう言いながら渋谷は高崎の太ももに回転しながら踵で、がちんと音がするくらい勢いよく蹴り抜いて高崎は悶絶してうずくまる。
渋谷はちゃんと馬鹿なので、容赦なく暴力を用いる。
というかフグトルネード……なっつかし、ハルちゃんが子供の頃に真似してよく練習してたわ。渋谷もそのクチだったらしい。
さて、そろそろ止めるか。
「はいはいおしまいね。いい蹴りだった。今回は高崎っていうかパラレルデザインが悪いんだから甘んじて受け入れて。それと……あんたどうせここからしばらく泊まり込みなんでしょ?」
私は興奮する渋谷をなだめながら、高崎に問いかける。
「あ、ああ……まあそうだね、多分ここから年明けしばらくは会社に住み着くことになる」
高崎は右太ももを擦りながら、半泣きで立ち上がったところをネクタイを引っ張ってこちらに寄せて。
「今のうちに、やれることやっとくよ。クリスマスイブだしね」
私は高崎の耳元で囁く。
私も大概だ。
私はこんな馬鹿な後輩と変態の彼氏が大好きな、馬鹿で変態だ。
「……は……はい」
高崎は顔を赤くしつつ、返事をする。
「んだよエロカップルがよぉ、私もハルちゃんにマジで男紹介してもらうおう」
喫煙ゾーンのパイプ椅子に座って煙草に火をつけながら、うんざりした顔で渋谷は呟いた。
そんなこんなで。
クリスマスイブからクリスマスの朝にかけてがっつりやれることをやって。
渋谷はハルちゃんがセッティングした合コンで「絵描いてよ」と言われて、ブチ切れてしまっておじゃんになり。
三人で年を越して。
「あー久しぶりにゆっくりできたぁ…………。まあノンプリの件はちょっと残念だけど、アレで売れるし完全版も出るよ。あと柿山先生には謝っておいて、先生にぴったりくっつく人はちょっとすぐには用意できなかった。じゃあまた、今年は多分もう日本には戻って来れないから良いお年を」
すっきりした顔で新年に年末の挨拶を済ませ、ハルちゃんは隙間なくきっちり物を詰め込んだトランク一つ持って再び世界を股に掛けに行った。
そして一月もあっという間に下旬、つまり。
一月二十七日【ノンプリンス☆ノンプリンセス~何者でもない私たちは恋をする~】発売。
初速は上々、初週販売本数もゲーム雑誌調べで三位。乙女ゲームとしてはかなりの滑り出し。
掲示板の乙女ゲー板でも、批難するのは私と渋谷のアンチとパラレルデザインの硬派なシューティングファンくらい。
思った以上にまあまあの話題性が出た。
渋谷書き下ろし販促ポスターの効果が凄かった。
ファンタジー風味待ちをしている人間が思ったより多かった。
ネットの記事やら掲示板を見て、にやにやしながら煙草をくゆらせていると。
携帯が鳴る。
この着うたは高崎だ。
「セッちゃん鉄は熱いうちに打つ、ここで勝負かけるぞ」
携帯が発熱したかと思うくらいに熱を帯びた声で、高崎は言う。
の、ノっている……。
声色でわかる、本来空回りして風切り音だけを出すだけのやる気が地面に食いついてとんでもない推進力を生んでいる。
なら私はこう返す。
「私は何を書けばいい?」
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