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第7章・ただひとつの仕事をしただけの原作者。
14私たちはこれで良い。
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やったね。
見事に驚かすことが出来た。
私がハルちゃんを驚かすってのはなかなかに珍しいことだ。ノンプリOVA化くらい嬉しいまである。
ハルちゃんには驚かされることも多かったけど、私が驚かしたのは数える程しかない。
一番油断してたタイミングで、報告させてもらった。
「ノンプリのおかげでまあまあ貯金も出来たし、高崎も出世したしね。まあパラレルデザインが傾き気味なのが気にはなるけど――」
口が開いたままのハルちゃんに、私はつらつらと続けて。
「――なんとかなるし、なんとかするよ」
灰皿に灰を落としながら、不敵に言ってみせる。
まあハルちゃんが言ってた通りのことだ。
結局、どうなるかなんてわからないし万全を期すのに私たちの生き方は向いてない。
だったらもうその時になってから、どうにかすればいい。
全くもってロマンチックなプロポーズなんてものなく。
一緒にアニメを見ながらエビのピザ食べていてアニメのエンディングテーマが流れて次回予告が始まるまでの二分足らずの間に話して決まった。
照れくさいからね。
変に気取ったり無理に思い出にしなくたって、どうせ一生忘れないんだから。
私たちはこれで良い。
「……式の日取りが決まったら、なんかしらのSNSに載せてくれたら確認できるから。地球の果てからでも銃を突きつけられていても誰に抱かれていようとも、絶対飛んでくる。必ず駆けつける、おめでとう」
ハルちゃんは涙を浮かべながら、ふにゃふにゃな笑みを浮かべてしどろもどろに言う。
「知ってる。ありがとね、ちゃんと頭数に入れとくよ」
私も微笑みながら、そう返した。
そこから相変わらずバタバタとしつつ、翌月のお互いの休みが重なったところで役所に行って。
私の苗字も高崎になった。
新居探しに結婚式、披露宴をそもそもやるやらない問題、参列者リスト、エトセトラ。
マジにめんどくさかった……。
ウェディングドレスなんてその日どころか数時間も着ないものをやんわり買わせようとしてくる奴を殴りそうになったり。
段取りが悪く私に結婚タスクを投げ気味にしていた高崎が、ブチ切れた高崎の母親にビール瓶で脳天カチ割られたり。それを庇おうとした高崎父がローリングソバットでぶっ飛んで窓を突き破って二階から落ちたり。
ドタバタとしていたら、あっという間に結婚式当日。
「ユキ先輩……、あんた隠れ美人だったのか」
控え室でバチバチにメイクアップしてもらってウェディングドレスを着る私を見て渋谷は慄きながら言う。
「ここまでやってもらえば誰でも綺麗になるわよ……。それに私は基本的に顔のパーツや骨格はハルちゃんと大体同じなんだから、付け焼き刃でもここまで本気でやってくれたらそれなりになるに決まってるでしょ」
私は驚愕する渋谷に呆れるように返す。
というか高崎の母……お義母さんがゴリゴリの美容系職の人で、私の体たらくを見て首根っこ掴まれて色々とエステやら美容院やらまつ毛パーマやら骨盤矯正やらを連れ回された。
その結果。
私は今この瞬間、人生で一番綺麗になった日に結婚式を行うことが出来た。
めんどくさかったけど、これはお義母さんに感謝だ。私だけだったら絶対にこうなってなかった。
「そういやハルちゃんはどうしたんだ? 来てるんだろ?」
渋谷が控え室を見渡して私に尋ねる。
「ああ、お父さんとお母さんに合わせる顔がないってことで完全変装で式場に紛れ込んでるみたい。よく見たら多分見つかると思うよ」
私は昨日、ハルちゃんが公衆電話から伝えてきたことをそのまま述べる。
気にすることはないと思うけど……、まあどうにも日本に来るのに無茶をしている感があったので迷惑をかけないようにする為の配慮だろう。
「いや流石に式場でそんなキョロキョロする気ねえよ、いい男も来ねえしな。ゲーム会社と出版社の野郎共しか来やしねえ……さっき名刺と一緒にやんわりスケジュールの空き確認されたぞ」
項垂れるように渋谷は言う。
「そりゃベン図で言ったら私も高崎も渋谷も重なってるとこ多いんだからそうなるでしょ。あんたはいいから朝起こしてくれて決まった時間にご飯を食べる規則正しくて常識的で上手いことあんたを操ってくれる男を探しなさい」
私は呆れるように渋谷に返す。
「むっっっず! やっぱハルちゃん探すわ、ベン図的に私たちの重なる範囲でそんなまともな人間はいねえ! ハルちゃん私を助けてくれぇー!」
渋谷は仰け反るように、どこかに紛れ込んでいるであろうハルちゃんに呼びかけた。
見事に驚かすことが出来た。
私がハルちゃんを驚かすってのはなかなかに珍しいことだ。ノンプリOVA化くらい嬉しいまである。
ハルちゃんには驚かされることも多かったけど、私が驚かしたのは数える程しかない。
一番油断してたタイミングで、報告させてもらった。
「ノンプリのおかげでまあまあ貯金も出来たし、高崎も出世したしね。まあパラレルデザインが傾き気味なのが気にはなるけど――」
口が開いたままのハルちゃんに、私はつらつらと続けて。
「――なんとかなるし、なんとかするよ」
灰皿に灰を落としながら、不敵に言ってみせる。
まあハルちゃんが言ってた通りのことだ。
結局、どうなるかなんてわからないし万全を期すのに私たちの生き方は向いてない。
だったらもうその時になってから、どうにかすればいい。
全くもってロマンチックなプロポーズなんてものなく。
一緒にアニメを見ながらエビのピザ食べていてアニメのエンディングテーマが流れて次回予告が始まるまでの二分足らずの間に話して決まった。
照れくさいからね。
変に気取ったり無理に思い出にしなくたって、どうせ一生忘れないんだから。
私たちはこれで良い。
「……式の日取りが決まったら、なんかしらのSNSに載せてくれたら確認できるから。地球の果てからでも銃を突きつけられていても誰に抱かれていようとも、絶対飛んでくる。必ず駆けつける、おめでとう」
ハルちゃんは涙を浮かべながら、ふにゃふにゃな笑みを浮かべてしどろもどろに言う。
「知ってる。ありがとね、ちゃんと頭数に入れとくよ」
私も微笑みながら、そう返した。
そこから相変わらずバタバタとしつつ、翌月のお互いの休みが重なったところで役所に行って。
私の苗字も高崎になった。
新居探しに結婚式、披露宴をそもそもやるやらない問題、参列者リスト、エトセトラ。
マジにめんどくさかった……。
ウェディングドレスなんてその日どころか数時間も着ないものをやんわり買わせようとしてくる奴を殴りそうになったり。
段取りが悪く私に結婚タスクを投げ気味にしていた高崎が、ブチ切れた高崎の母親にビール瓶で脳天カチ割られたり。それを庇おうとした高崎父がローリングソバットでぶっ飛んで窓を突き破って二階から落ちたり。
ドタバタとしていたら、あっという間に結婚式当日。
「ユキ先輩……、あんた隠れ美人だったのか」
控え室でバチバチにメイクアップしてもらってウェディングドレスを着る私を見て渋谷は慄きながら言う。
「ここまでやってもらえば誰でも綺麗になるわよ……。それに私は基本的に顔のパーツや骨格はハルちゃんと大体同じなんだから、付け焼き刃でもここまで本気でやってくれたらそれなりになるに決まってるでしょ」
私は驚愕する渋谷に呆れるように返す。
というか高崎の母……お義母さんがゴリゴリの美容系職の人で、私の体たらくを見て首根っこ掴まれて色々とエステやら美容院やらまつ毛パーマやら骨盤矯正やらを連れ回された。
その結果。
私は今この瞬間、人生で一番綺麗になった日に結婚式を行うことが出来た。
めんどくさかったけど、これはお義母さんに感謝だ。私だけだったら絶対にこうなってなかった。
「そういやハルちゃんはどうしたんだ? 来てるんだろ?」
渋谷が控え室を見渡して私に尋ねる。
「ああ、お父さんとお母さんに合わせる顔がないってことで完全変装で式場に紛れ込んでるみたい。よく見たら多分見つかると思うよ」
私は昨日、ハルちゃんが公衆電話から伝えてきたことをそのまま述べる。
気にすることはないと思うけど……、まあどうにも日本に来るのに無茶をしている感があったので迷惑をかけないようにする為の配慮だろう。
「いや流石に式場でそんなキョロキョロする気ねえよ、いい男も来ねえしな。ゲーム会社と出版社の野郎共しか来やしねえ……さっき名刺と一緒にやんわりスケジュールの空き確認されたぞ」
項垂れるように渋谷は言う。
「そりゃベン図で言ったら私も高崎も渋谷も重なってるとこ多いんだからそうなるでしょ。あんたはいいから朝起こしてくれて決まった時間にご飯を食べる規則正しくて常識的で上手いことあんたを操ってくれる男を探しなさい」
私は呆れるように渋谷に返す。
「むっっっず! やっぱハルちゃん探すわ、ベン図的に私たちの重なる範囲でそんなまともな人間はいねえ! ハルちゃん私を助けてくれぇー!」
渋谷は仰け反るように、どこかに紛れ込んでいるであろうハルちゃんに呼びかけた。
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