《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

文字の大きさ
156 / 210

156.レンカに謎深まる

しおりを挟む
「とりあえずそれで終わり。
助かったよ、ありがとう」

 どうやら資料作りは終わったようだ。
当たり前の事なんだが素直に礼を言うんだな、とレンカの今までの独裁的な言動を思い返して感心したのは秘密にしておこう。

 レンカは獣体の俺の腹に埋もれたままで、机の端に重ねて置いといた小皿を魔法で浮かして引き寄せる。
洗浄すると、次は氷魔法で保存されていたアイスのボールを引き寄せてよそう。

 まずは副団長に手渡し、自分の分をよそうとボールと残りの小皿をまじまじと見て何事かを思案する。

 俺を気にしたのか?

「レンカが食べればいい」
「人体になればいいんじゃない?」
「嫌だ。
レンカは獅子が嫌いか?」

 獅子のつぶらな瞳でじっと見つめてみる。

「いや····それは····まあ、動物は····嫌いじゃない、けど」

 ふふふ、やはりな。
ばつが悪そうに言い淀むレンカに勝利を確信する。
レンと同じくレンカも獣体が好きなようだ。

 しかしまだ何かに葛藤しているらしい。
その体に栄養をつけてもらいたいから、本当に全て食べてくれていいんだぞ?

 そう思っていると、空の小皿を戻してボールの取り分け用の大きめのスプーンを手にしてすくう。

「ん。
1人だけ食べないのはこっちが食べにくくなる」

 そう言ってそれを口元に持ってきた。

 何だと····まさかのレンカが給餌?!

「獅子だと食べられない?」

 思わず固まってしまった。

「いや、食べる!」

 カプリとスプーンを咥える。
さっきのより旨く感じる!

 レンカも自分の小皿から一口食べると目元が和らぐ。
レンと同じようにレンカも甘味が好きなんだろう。

 レンカはその後も交互に食べさせてくれる。
レンとは違う感覚はあるものの、番の体で給餌されるのはやはり嬉しく感じるようだ。
最近の取り残されるような寂しさが幾らか解消された。

 だが量もそんなにあるわけではなかったせいですぐに至福の時間は終わる。
もっと大量に作り置きしとけよ、ジェロム!

「それではレンカの話を聞かせていただけますか?」

 俺達、というより最近の踏んだり蹴ったりな俺に気を遣ってくれたんだと思う。
成り行きを見守っていた副団長が食べ終わった自分とレンカの小皿とボールを一纏めにしながら口を開いた。

「別に私から話す事は特にないよ。
聞きたい事があるなら答えられる範囲で答えるってだけ」

 レンカは小皿を副団長に手渡してからは少し眠くなっているのか俺の腹に完全にもたれきっている。

「ただ手短に聞きなよ?
そろそろ眠い」
「そうですか。
では早速ですが、朔月の人格は居るのでしょうか?」
「居る。
そもそも私達はこの千年の記憶を忘れる事はない。
ただ、まともに個という自我を持っているのは朔月と私だけだ」
「他の転生体は?」
「居るか居ないかで言うなら、居ない。
あくまでも記憶としては残ってる」
「あなたも最終的にはそうなるのですか?」
「そう」

 2人は淡々とはなしていく。
俺は感情的になってレンカの僅かな時間を奪わないように黙って聞き入る。

「朔月はレンを消そうとしたと聞きました。
あなたにもそれは可能なんですか?」
「今のレンなら可能。
途方に暮れすぎ、考えすぎで出口のない思考の迷路にはまりこんでて弱い。
ただ、あれも私もレンを消す事はないし、自分達が消える事に合意してる」
「しかし朔月は····」
「確かにレンを消そうとした。
でもそれはちょっとした行き違いからだ。
私も最初はレンを見過ごしそうになったし、レンが生まれた経緯がこれまでと違ってたから単なる性格の歪みだとあれは判断したんだ。
だがレンは間違いなく1個の人間として生きている。
だから私達はレンを絶対に消したりしない」
「レンが生まれた経緯とは?」
「死んで新たな肉体で産まれる。
これまでの転生は全てそれだ。
まあ普通の転生だよ。
記憶は引き継いでいるし、そのせいで性格が大きく変わる事はあまりなかったけど、それぞれの、その時々の肉体には当然のようにその時々の人格が宿っていた。
朔月の人格も、意識の深い所にいるのは感じていても、生じる人格に何かする事はなかった。
ただ静かに居ただけだ」

 1度何かを考えるように黙り、すぐに話を再開した。

「だけど····そうだな····レンは子供に若返った私の肉体に新たに生じた人格だった。
ここに来た時、この肉体は新たに産まれてはいない。
ただ4才か5才の幼児に巻き戻っただけだ。
けれど確実に私は死んだ。
その時にゼノが私をこちらに転生させると言ってきて、それを了承した。
だけど実際には不完全な転生と転移だった」
「不完全な転生とは?」
「肉体が若返っただけだから転移に近い。
だけど確実に私の肉体は死を迎えた。
私の人格は死んだものとして、いつも通りに新たな人格であるレンが生まれた。
けれど肉体は幼児で、人格は存在感が限りなく薄い0才だ。
しかも私の人格も顕在化してた。
ただ私自身も死んだと思って色々やらかした後で疲弊していて、1年くらいは体に引きずられて退行してた。
2つの幼い人格が存在した事で幼い脳にかなり負担をかけてたんだ。
だから朔月は消しても差し支えなさそうな、私の人格の歪みのように思えたレンを消しにかかった。
私も新たな人格だと最初気づいてなかったし、消える直前にレンが赤ん坊らしく泣いたから自分と違うんだと気づいて消されるのを防いだ」
「色々やらかした、とは?」
「最期の最期にむかついて、自分の魂を粉々に消し飛ばそうとした」
「「は?!」」

 思わず出した声が副団長と被ったが、それどころじゃない。

「あれはあれで爽快だったよ。
唖然として焦りだした神って呼ばれる連中の間抜け面見てスカッとした」

 クスリと冷たく笑うが、衝撃的な内容すぎて何でそんな笑いを浮かべているのかわからない。

「な、んで、そんな····」
「約束という義務を果たした私の権利だ」

 理由を聞いた答えがそれで、とうしてそこで胸を張るのか意味がわからない。

「そろそろ時間だな。
後はレンに聞け。
それとあんまり虐めすぎるな。
あれは私達の誰よりも前向きで弱い」
「待ってくだ····遅かったですね」

 副団長が引き止めようとしたが、先ほどまで喋っていたとは思えない早さで眠ってしまった。

 前向きで弱いって、なんなんだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

処理中です...