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第1章 奈落へ

1ー16 脅迫

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 1ー16 脅迫

 蛇は、 アルアロイと名乗った。
 「アルアロイ、だって?」
 俺は、驚愕を隠せなかった。
 なぜならアルアロイは、今から1000年以上前に存在した伝説の魔界の大魔道師の名だった。
 いくら魔物であっても1000年も生きるものか?
 それに。
 「アルアロイは、100年前に勇者の手で討伐された筈だ」
 「そう。私は、死んだ。そして、蘇った」
 ええっ?
 俺は、気づいた。
 「もしかしてあんたも転生者なのか?」
 「そうだよ。私は、君と同じく転生した者だ」
 マジかよ?
 俺は、信じられないものを見るようにアルアロイを凝視した。
 アルアロイは、俺に命じた。
 「ロイド・ライゼンバーグ、君には、どうしても魔法学園へ入学してもらう」
 はいぃっ?
 俺は、絶句していた。
 俺は、もうすぐ19歳だ。
 約一年前ほど前に母国であるアイヒミューゼン王国にあるグリューワルド魔法学園を最下位で卒業した。
 つまり俺は、もういい大人なのだ。
 いまさらどこの国の学園であれ受け入れてくれるところなどない。
 だが、蛇は、俺の抗議を受け入れることはなかった。
  「君に入学してもらうのは、神都ライヒバーンにあるウルマグライン魔法学園だ」
 「神都だって?」
 俺は、思わず笑ってしまった。
 この地の果てにあるという神都ライヒバーンは、選ばれた者だけが入ることができる場所だ。
 いくら俺が伯爵家の嫡男でも入ることすらかなわない。
 「無理だ。他をあたってくれ」
 俺は、アルアロイに素っ気なく答えた。
 だが、アルアロイは、引かなかった。
 「今の君なら神都にも選ばれることだろう。何よりこの私の推薦状があるからね」
 はあ?
 俺は、再び絶句した。
 伝説の大魔道師とはいえ一度死んだ者だし、魔界の魔物じゃないか。
 そんな者の推薦状があったからって何の役にたつってんだ?
 俺の心を読んだかのようにアルアロイが告げた。
 「大丈夫だ。神都ライヒバーンのウルマグライン魔法学園は、この世界で最も開かれた学舎だ。魔界の住人にさえ開かれている」
 マジか?
 俺には、にわかには信じがたい話だった。
 魔物や魔族を受け入れる学園が存在する?
 「君には、どうしてもウルマグライン魔法学園に入学してもらう」
 いやいやいや!
 俺は、慌てて訊ねた。
 「あんたが育てるのはチヒロじゃないのか?なんで、俺?」
 「ウルマグライン魔法学園は、やんごとなき身分の方々が集う場所だ。もちろんその護衛や従者たちも共に学園に通うことを許される」
 アルアロイは、平然と答えた。
 「チヒロには、君の従者になってもらう。もちろん、正体も隠してね」
 なるほど。
 俺は、隠れ蓑でほんとに学園で学ばせたいのはチヒロということか。
 だが。
 もう、学校は、こりごりだしな。
 俺が躊躇しているとアルアロイが駄目押しした。
 「本当に残念なことだがこれを受け入れなければ君をアイヒミューゼン王国に通報しなければならない」
 なんですと?
 
 
 
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