上 下
4 / 8

あせりはきんもつ

しおりを挟む
 襲われそうになることも、もちろんあった。
 いきり立つ男を相手取るのだから、よくあることと言っても過言ではない。

 その晩も、迎えるや否やベッドに押さえつけられ、

「何が即尺令嬢だ。ただのあばずれだろう? 手っ取り早くいこうぜ」

 荒々しく胸を揉まれた。
 身体じゅうの筋肉が発達した、見るからに血気盛んな男だ。
 サブリナのような華奢な女など、力を込めるまでもなく、思いのままにできるだろう。

 だが、こういうときほど『基本が大事』とサブリナは考えている。

(お稽古ごとと同じですわ。いざというときに助けてくれるのは、何よりも、基礎)

 彼女にとって、すべての基本で基礎となっているのは、最初のマルクとのことだった。
 口で果てた彼は、しゅんとして、もうそれ以上を求めるようなことはなかった。

 彼女は、男のふくらみを優しく撫でる。

「大丈夫よ。焦らなくても、大丈夫」

 一瞬気が緩んだ男のそれを、ズボンから引きずり出した。
 握ってしまえば、あとはもういつもと変わらない。

 サブリナは、先ばしり湿り気を帯びたそれを艶かしく撫でながら体勢を変え、唇へと導く。

 違いを出すとすれば、ここから。
 男のそれはサブリナの蜜壺を求めている。
 だったら、求めるその感触を与えてあげればいい。

 頭を動かしながら、舌を絡める。
 女の中が絡むのをイメージして、動きに合わせて丁寧に、ときに激しく。

 こうなるともう、男は身を任せてくれる。
 ベッドに仰向けに寝かせ、サブリナは脚のあいだに拝跪して続けた。

 ベッドのギュッと軋む音と、サブリナの口から漏れる空気。そして口の中で舌が動くクチュクチュという音が鳴る。

 やがて、男が小さくうめき、サブリナの口腔へと温かいものが広がった。

「んっ……。はい、お加減はいかがですか?」

 飲み干し、男に問う。
 彼は黙ってサブリナを見つめているので、彼女は掃除を始めた。

 すると、男が彼女の髪を撫でてきた。
 優しく、最初とはまるで違う扱い方だった。

(落ち着いてくださいましたわ)

 安心して丁寧に掃除しているとーー

(え、これは……?)

「悪いが、もう一回頼む。あんた、どんな女の中より具合のいい口してんだもんな」

 ずるいぜ、と言いながらサブリナの頬をたくましい手で撫でた。
 もう、サブリナに対して筋力を使うことはないだろう。

 それが元気になったのは、彼女の口の中を求めてのものだった。

(うふふ、今度はどうもてなそうかしら?)

 サブリナは、2日ぶんを一晩で楽しめるとばかりに喜びをあらわにし、高揚で赤く染まる唇をぺろりと湿らせた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】転生後も愛し愛される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:184pt お気に入り:858

【完結】 嘘と後悔、そして愛

恋愛 / 完結 24h.ポイント:43,253pt お気に入り:267

女學生のお嬢さまはヤクザに溺愛され、困惑しています

恋愛 / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:686

腹黒上司が実は激甘だった件について。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:505pt お気に入り:139

俺を裏切り大切な人を奪った勇者達に復讐するため、俺は魔王の力を取り戻す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,583pt お気に入り:91

処理中です...