10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護

文字の大きさ
74 / 76
5章 猫の恩返し

70話 街の真の救世主は10歳の女の子です

しおりを挟む
なんか、流れがおかしいよ。
辺境伯様は、何を言う気なのかな?

「テンタクルズオクトパス、このヌメリ除去を開発したのは、ミケーネとシロという猫だ。この2匹のおかげで、このフェスタで新規料理がいくつも生まれた。これは、素晴らしいことだ。我々も、2匹の猫に感謝している。大樹マナリオ様、我々がその存在を忘れていたにも関わらず、現在も領の天候を操り、人々に福音をもたらしてくれている。これら大きな貢献で忘れてはいけない人物が、一人いる。その者自身は大きな力を持っていないものの、その者が存在しているからこそ、その者の持つ力で、猫が救われ、精霊様も救われた。そして、この街の人々も救われたのだ。これは私だけでなく、街の人々からの総意と言える!!」

これって、まさか私のことを言っているのかな?

「そこで私は領主として、この街を救った真の救世主たちに功労賞を贈りたい。咲耶、ミケーネ、シロ、舞台上へ来なさい」

やっぱり、私のことだ!!
功労賞って何?

「は…はい!!」
「咲耶、大丈夫だ。みんなも納得しているから」
「そうそう、それにミケーネとシロにも助けられたもん」

ユウキやリットだけでなく、周囲にいるみんなが私を見ているけど、誰も不満そうな表情を浮かべていないわ。みんなが納得しているってこと?

『全く、皆の集まっているこの場で咲耶に労いの言葉をかけるとは』

『フリード、良いんじゃない。街…いや国にこれだけ貢献して何の表彰もなければ、いずれ街の人々が不満を爆発させ、どこかで暴動を起こすかもしれない。新聞記者たちの集まるフェスタを利用し表彰して、何らかの特典を用意すれば、国中の人々も納得するだろう』

少し離れた場所にいるフリードとルウリが、私にも聞こえるように念話で話し合い、互いに納得しているのはいいけど、私はミケーネやシロといった猫たちを人に好かれるよう、少し教育を施しただけだよ? 2匹は直接国に貢献しているからわかるけど、私は表彰されるべきかな?

『そうですね。マナリオの件は領限定ですが、2日前に起きた騒動での業績は世界レベルです。これだけ迅速に動き、咲耶の業績を認め、何らかの特典を与えれば、平民たちも納得しますね』

『アレスにとっては良い方向に進んでいるから、内心喜んでいるだろうね。さあ、ミケーネ、シロ、咲耶も舞台上に行った行った』

ルウリ、あの舞台上に行けと言われても、これだけ大勢の人々が見ているせいか、凄く緊張するわ。

『私たちも表彰されるのね』
『何かくれるのかな?』
『さあね、人間たちの褒美なんて興味ないけど、少しだけ気になるわ。ほら、咲耶も突っ立ってないで行きましょうよ』

「う、うん」

私はミケーネとシロと合流し、緊張で手足がギクシャクしている状態で、なんとか舞台上へ行けた。舞台上から周囲を眺めると、皆の視線が私、ミケーネ、シロに集中している。

『ねえ、この中で私たちの猫語を理解できる人って何人いるのかしら?』

ミケーネが、突然周囲に向けて話しかけているけど、誰も理解していない。ユウキもスキルをオフにしているせいで、首を横に少し傾けるだけだ。

『やっぱり、動物の言葉を完全に理解できるのは、咲耶だけのようね。私たち猫は、咲耶に助けられわ。人間とコミニュケーションできるよう教育を施してくれたし、小さな会話ボードも作ってくれた。私たちの理想郷となる猫カフェも建築中、咲耶は私たちにとって大恩人なのよ。いつか恩返しをしたいと考えていたのだけど、まさか彼女がこんな形で表彰されるなんてね。勿論、街の人々にも感謝しているわ。咲耶と出会って以降、猫の対する対応が良い意味で少しずつ変化してきたもの。咲耶と街のみんなには、凄く感謝しているの。今回の業績は、【猫たちの恩返し】だと思ってちょうだいな』

自分が褒められているので、凄く言いづらいのだけど、私は顔を赤くしながら、ミケーネの言葉を訳していく。皆は驚きの目で、ミケーネを見ている。猫が、ここまで人と同じように演説するとは思わなったのかな。

『そうそう、これは猫からの恩返しさ。咲耶設計で猫に過ごしやすい猫カフェを建築してくれているし、街の環境だって住みやすくなったからね。少しは人の役に立てて嬉しいよ。今後とも、僕たちと仲良くしてね。猫カフェの完成も近いので、こっちもお忘れなく~~~』

シロも短いけど、日頃の感謝を皆に伝えたわ。
私が訳し終えると、周囲から拍手と歓声が巻き起こる。
辺境伯様が手をあげると、周囲が途端に静けさを取り戻す。
次は、私の出番だ。

「皆さん、私の力を認めて頂きありがとうございます。私自身はただのFランク冒険者だけど、私の持つスキルで猫やマナリオを救えただけでなく、街にも大きく貢献できて嬉しいです。私は、これからも街の人々や猫、多くの動物のために貢献していきたいと思います」

今は猫との会話がメインだけど、精霊様ともお話しできるのだから、他の動物ともお話しできるはずだ。神様が与えてくれたこの心通眼や他のスキルで、もっと街に貢献していきたい。私が話し終えると、皆が一斉に盛大な拍手を贈ってくれた。この光景を光希たちにも見せてあげたいな。今日の夜にでも、この出来事を教えてあげよう。

「咲耶、ミケーネ、シロ、街を救ってくれたことに感謝する。我々主催者はヌメリ除去を開発した2匹の猫に、それぞれ賞金100万ゴルドを、街の真の救世主である咲耶には賞金200万ゴルドを進呈しよう」

へ?
猫1匹に対して100万ゴルドで、私には200万ゴルド?
全部で400万ゴルド!?
大金なんですけど!?

周囲の人々も驚きながらも、私たちに祝福の拍手を贈ってくれているから納得してくれているの?

「そして、猫たちと咲耶には、副賞として隣国ヘルハイム王国王都6泊7日の旅を進呈する」

副賞!! 私と猫2匹に!?

『ミケーネ、僕たちに賞金と副賞だってさ!?』

『私たちからすれば、咲耶をいつも助けてくれているこの街に恩返ししたいだけの気まぐれな行為なんだけど。でも、私たちの知らない土地に行けるのは嬉しいわね。咲耶にお金を預けて、存分に楽しみましょう』

『でもさ、いつ行けるのかな?』

『さあね、いつでも良いじゃない。猫カフェももうすぐオープンするし、気長に待ちましょうよ』

『そうだね』

軽く話しているけど、現金200万ゴルドだから、預かったらすぐにアイテムボックスに閉まっておこう。猫たちにはお金を貰っときの扱い方もきっちり教育しているから怖い使い方をしないとは思うけど、出かける時は常に一緒に行動しよう。

辺境伯様の言葉と共に、私たちに盛大な拍手が贈られる。
ここまで人に褒められたのは、生まれて初めてだわ。

「それと、これは領主としての忠告だ。猫たちは咲耶の従魔に鍛えられ、並の冒険者では歯が立たんとだけ言っておこう。また、咲耶と猫たちは、精霊マナリオ様に護られている。彼女らに悪さを働く者には、天罰が下される。我が領内の天候を操れるということは、空から雷や氷を悪者目掛けて振り下ろせることを意味する。呉々も、咲耶やその仲間たちに悪さを働くなよ。それは、死を意味するのだから」

うわあ~、領主様は最後の最後で、どでかい忠告を皆にしてくれたわ。猫たちの一部は領主様の言う通りだけど、殆どはDやEランクくらいの強さだと、フリードが教えてくれたから、今後少し不安に思っていたけど、領主様は『マナリオ様から天罰が降る』と宣言することで、猫だけでなく、私やユウキ、リットを悪者から守ってくれるよう配慮してくれたんだ。

領主様、ありがとうございます。
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

処理中です...