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受け入れるもの、変わるもの
秘書の提案
しおりを挟む笠井はとても優秀な秘書である。
その彼から見て、厚木は将来性のある有能な社長であり、秘書としての能力すべてを彼のために捧げるつもりでいる。
クールな表情の下はとても熱い男なのだ。
しかし、将来性のある有能な社長であるところの厚木は、すこぶる性格が悪く、粗削りだ。
小さなところでは、取引先と小さなトラブルを起こした重役への嫌味。この重役は、普段から勤怠が宜しくない上に厚木を目の上のたんこぶに思っている相手なので、厚木も全く遠慮はしていなかった。笠井は、また敵が増えるなぁ…と目を閉じてやり取りを聞いていた。
大きなことは…口が裂けても言いたくないくらいだ。
若くて好戦的な厚木は、大人の闘い方をあまり得意としない。それも今後の経験次第だが、きっと今の闘い方だと、遅かれ早かれ壁に打ち当たるだろうとは秘書の予感だ。
社長のピンチこそ秘書の手腕の見せ所だと思っているので、今日も笠井は厚木の敵をくまなくリストアップし、研究者並の熱意で厚木の益になり得る資源の情報をまとめ上げ、せっせとその時に備えている。
厚木は、ダイナミクス属性により、Dom性という珍しい性の持ち主だ。一般的な性欲処理では解消できない。Dom性の性欲はSub性とでないと解消できない。Sub性もそうらしい。
彼は激務をこなしながら、ダイナミクス属性向けの風俗からSub性の人を派遣してもらい、欲求の解消をしてきた。
その彼が、あきらかに今までと違うSub性の持ち主を”パートナー”にした。
蘭吉継。彼は、最初から厚木の興味を惹く存在だった。しかし、最初は新しい玩具を見つけた程度の興味に見えた。吉継は事件の被害者であるデリケートな存在だ。内心ひやひやしながら見守っていたが、結果的にそこは杞憂に終わった。それはいい。
厚木が、無理矢理吉継をパートナーにしたのではないか。
ダイナミクス属性だけではなく、ゲイである厚木が性欲絡みで苦労しているのを見てきた。
吉継は、バレーをしていたということもあり、長身で均整の取れた体躯に、派手ではないが整った顔立ちをしている。そして控えめな受け答えに、落ち着いた雰囲気。
ありていに言うと、厚木の好みなのだ。吉継は。
なので、性格の悪い厚木に脅されていないかと心配していたのだが、ここへきてようやく笠井にも”ちょっと違うな?”ということがわかってきた。
厚木は吉継に、他のSubとプレイしていないかと釘を刺されたことがある。当然していた。ときにはプレイだけで終わらなかったこともある。その時笠井は今までの厚木の行動から、吉継の小さな嫉妬を面倒臭がり、早々に破局するのではないかと予想していた。厚木は多忙だ。今まで仕事を優先し、プレイもセックスもビジネスライクな相手だけを選び、その関係を一貫してきたからだ。トラブルになりそうな相手とは付き合わないというのが厚木である。
しかし、笠井の予想は外れ、厚木はそれ以降、吉継以外の相手とはプレイしていない。
それは厚木に昼食の手配を一つ追加で頼まれたとき。
プレゼントが全く喜ばれていなかったとき。
また、何度も電話をかけているのに繋がらなかったのを見ているとき。
休みを取るためスケジュールの調整を依頼されたとき。
厚木が振り回されている。
面白…いやいや。
毎日、「厚木さんは来ませんか」と聞いていた青年はもういない。好きなときに厚木のいる社長室にやってきて、好きなようにしている。厚木の仕事の邪魔はしないので、笠井も黙認している。
なんなら、吉継の相手をするために仕事を早く終わらせようと厚木のパフォーマンスが上がる。一石二鳥である。
笠井は、吉継へのイメージを変えるしかなかった。
か弱く控えめな青年から、素直で図太い青年へ。
厚木の仕事の一部をリモートワークにしてもいいかもしれない。有能な秘書は、社長第一主義をモットーに考えている。
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