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小話系
クリスマスマジック 3
しおりを挟む吉継がリクエストしたドリアをデリバリーする。
その他子どもが好きそうなメニューを何品か用意はしたが…。
吉継は元の半分くらいのサイズにっているのにも関わらず、それはもうよく食べた。
厚木は少食ぎみなのであまり比較にはならないが、一般の成人男性よりも多く食べていると思う。
この省エネな姿でこれだけ食べるということは、あの馬鹿でかい体にはどれだけの食べ物が必要なのか。見ているだけで腹が膨れそうである。
そして、食べたあとの吉継は目がトロンとしてきている。
昼寝も散々していたというのに、欲望に忠実な姿だ。
「風呂には入らないのか」
「んぅ…はいります…」
眉を寄せて目を開けようと頑張っているようだが失敗している。
頭の匂いを嗅ぐ。ほんのり汗の匂いはするが異臭レベルではない。風呂は明日の朝でもいいかと眠気でグニャグニャしている吉継に歯を磨かせる。パジャマに着替えさせてベッドで寝かせる。
厚木はまだ仕事が残っている。
今度は一人で目が覚めたとしても泣くことはないだろう。
退社ついでに笠井が様子を見に来た。
「吉継くんはどうしてますか」
「さっき寝たところだ」
笠井が吉継の寝顔を見たいと寝室へ消える。しばらくしてニヤニヤしながら戻ってきた。
「ちゃんと恐竜パジャマ着てますね」
「…」
何を想像しているのか。
「それにしても、明日はどうしますか」
「…そうだな」
「一応、明日、明後日くらいまではここで仕事していただいても問題ありませんが、それ以降は出社していただかないと…」
「わかっている」
「これを機に後継者育成も視野に、社長ももう少し身軽になられてはいかがでしょうか」
後継者は場当たりで決めるものではない。早く取り組んで早すぎることはないかもしれないが…。
「…そうだな」
「とりあえず、会議と重役報告だけは出ていただかないと。その間は私がみています」
「ああ、頼む」
「なにか足りないものはありませんか」
「吉継の食べるものを手配してくれ」
厚木は家事をしない。
何をどうすればいいのかだいたいはわかるが、したことはない。厚木の家には、家政を仕事にしている者がいるからだ。
食事も適当だ。会社では笠井が手配する弁当を食べ、家では用意されているものを食べる。なんなら食べなくても平気だが、吉継の食べようを見て三食満足できるだけの用意ができるのかと思ったのだ。
あとは溜まっていく洗濯物をなんとかして欲しい。
「わかりました」
笠井が帰ったあと、少し仕事をしてからシャワーを浴びる。
寝室に戻ると吉継は大きく布団からはみ出したまま寝ていた。サイズに関係なく、何かからはみ出るようだ。
厚木がベッドに入っても起きない。
恐竜のフードから覗く寝顔はあどけない。
昼間に捨てられたと大泣きした吉継が、最初のころ寂しくて部屋で泣いていた吉継と重なる。
感覚のズレた大男。頑固で主張も激しいのに、言うことは具体性に欠けるので、今ひとつ伝わってこない。
何もいいところがない吉継だが、厚木に捨てられたくないと必死にしがみついてくるところは気に入っている。
しがみつくまでもなく、そこにいるだけでいいと気づくまで待ってやってもいいと思うくらいには。
普段は短い睡眠時間でも平気な厚木だが、子どもの世話は疲れるものだとわかった。吉継の隣に横になるとそのまま寝てしまった。
腹の重みで目が覚める。
小さな吉継が厚木の腹を枕にして気持ちよさそうに寝ていた。
ふと、大男の吉継を思い出す。
最後にプレイしてからまだ数日しか経っていないが、脳裏に浮かぶのは大男の長い手足に従順そうに見えて口を開けばわけのわからない持論ばかり言う姿…。
子どもの細くて柔らかい髪を梳きながら、大きな男を跪かせているところを夢想した。
「おはようございます」
目を擦りながら挨拶する吉継に朝食を食べさせていると、笠井から会議のいくつかをリモートでできるようにしたと連絡があった。
ご飯を食べおえた吉継は、大人しく厚木の見える場所で過ごしていた。今日は空中に絵を描く3Dペンで遊んでいる。厚木に説明書を読ませて「なるほどねぇ」としたり顔でうんうん頷き、そこからお絵かきボードになにやら描いては空中で絵を描くことを繰り返している。
ここ数日吉継は外に出たいとも言わず、一人で遊んでいる。厚木の子どもへの認識は、"子どもは風の子元気な子"というざっくりとしたものだ。昔祖母が言ってたのをなんとなく覚えている程度の。
しかし吉継は外に出たいとも何がしたいとも言わず、笠井が買ってきた玩具で大人しく遊んでいる。吉継は、厚木でも世話ができるくらいに手間がかからない子どもだった。
それはそれで都合が良いが、子どもをずっと家に閉じ込めておいていいのかと、数日目にしてやっと思い至ったわけである。
「吉継」
「はい」
「どこか行きたいところはあるか」
吉継は、一瞬動きが止まり、びっくりしたような表情で厚木を見る。
「行くのはぼくひとりですか」
「いや、一緒に行けるところがいい」
厚木の言葉にぱあっと花が開いたような表情で駆け寄ってくる。
「おおきなすべり台があるところに行きたいです」
大きな滑り台がある公園は片道約一時間。
吉継にホームページに載っている公園の写真を見せると、「すべり台大きいですねぇ…」ととろけた表情で喜んでいる。
昼ごはんを食べて用意する。吉継は服が入っていた袋からちょうといいものを選んで、飲み物やおやつを入れていた。
「さとみさん、ハンカチとティッシュはどこですか」
「わからんな。ここを適当に探せ」
洗面所と厚木の洋服箪笥がある部屋へ連れて行く。
吉継はひとつひとつ引き出しを開けて目当てのものがないか探していた。しばらくすると、祖母が使っていたと思われる藍染のちょうどいいサイズの布と、箱ティッシュをひとつ持ってきた。
「これです」
「ああ」
玄関で吉継の靴紐を合わせてやっていると、インターホンが鳴った。
笠井には既に連絡をしているので、この時間に来ることはない。
勧誘かとカメラで確認すると、見知った男の姿。
ややこしいことになりそうな予感にうんざりする。門前払いしたいが、無下に出来ないゲストだ。とりあえず、招き入れる。
「こんちわー暇だから遊びに来ちゃった」
「お前…」
「このひとは誰ですかさとみさん」
吉継の質問に答えている場合ではない。
子どもの吉継に興味深い視線を向ける長身の男。厚木にとって旧知の仲になる棗理生だ。
「聡実ちゃん、この子が言ってたパートナー? でもこの子、まだ未分化だよねぇ…」
「なぜここにいる。ホテルにいるはずだろう」
面倒臭すぎる男の訪問だった。
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