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助けてくれた、とってもカッコよくて優しい人は世界一の紳士でした
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何から何まで至れり尽くせりで、これまで傷ついて、これからの事が不安で怖かった思いがあったかくなる。
やはり彼は思った通りの紳士だった。小さい体だからかもしれないが、浴室のドアを開けた先には裸のわたくしがいたのに、見ないようにしていてくれたなんて……。彼のそんな誠実な言動に対して、なんだか嬉しくなる。
丁寧に折りたたまれた着替えは肌触りがとてもいい。なぜこんなものがあるのか少々違和感を感じるが、急な来客に対して細やかな気遣いを見せてくれる。
ただ、彼はわたくしのサイズがわからなかったのだろう。
それもそうかと着用するが、思った通り胸がきつくって苦しい。腰は随分余っている。ブラはきつかったのでつけれないから、恥ずかしかったけれどノーブラだ。
下はサイドが紐だったからなんとかつける事ができた。
一緒に置いてあったフリルのエプロンがあったので、トップ部分から下のスナップはつけても息を吸うだけで外れてしまったけれども、エプロンでそこが隠れていてほっとした。
ハイストッキングもなぜかあるがずり落ちたため素足に靴下だけを着用したものの、スカートの丈は膝より少し下だから、ふくらはぎなどが無防備にさらされていて心もとなく恥ずかしい。
脱衣所で着替えをしながら、とっても素敵な彼を思い浮かべる。
大きな体はとっても鍛えられているのだろう。彼の名は有名で社交界では知らないものはない。
きりっとした太い眉に情熱的な赤い瞳は理知的。神秘的な黒髪はさらっとしていてとっても素敵だ。大きめではあるけれど、それがよく似合っている鼻や唇はほんのり色気すら感じる。
27歳で地位も力もあるのに特定の女性を作らないと聞いていた。
すごくモテて、毎日のように女性が騎士団の訓練所に詰め寄せているというイケメン魔法使いは彼に違いない。
特筆すべきは彼の容姿ではない。とにかくすごく優しい。小さな体を壊れ物のように大切に守ってくれて、お風呂の時の彼の言動もだが、リビングに行った後、自ら髪を乾かしてくれた。しかも、風量に気を使ってくれているのがわかる。大きな指がわたくしの頭を乱暴にしないように慎重にしてくれているのがわかってうっとり目を閉じた。
そして今、目の前にならべられたフィギュア用の家具や食器たちは、わたくしが居心地がいいようにセットされている。
──ザムエル様は、ああおしゃっていたけれども、本当にわたくしを国に報告なさらなくていいのかしら……?
笑顔で応えてくださって心配しなくていいときっぱり伝えて安心させてくれる。きっと、誰に対しても優しいのだろう。
──はぁ。なんて素敵な方なのかしら……。シモン様も優しかったけれど礼節と一定の距離があったし、なんせ彼は最初からゾフィアに惹かれていた。それでも政略結婚をするからにはと、わたくしを大切にしてくれていた。わたくしの出自が平民だと知られなければきっと一生大切にしてくれていたに違いないほどの人だけどこんな風に思うなんて事はなかった。
自分を助けてもメリット一つなく、初対面だというのに細かなひとつひとつに気にかけてくれる。照れ屋で不器用そうな彼の赤い瞳を見つめてドキンドキンと胸が高鳴り呼吸が苦しく感じた。
──わたくし、ザムエル様に惹かれ始めているのだわ……。シモン様やゾフィアもこんな気持ちだったのかしら? あったかくて、苦しくて、幸せで、切なくて……。母が平民で〈呪い〉と〈隷属〉にかけられたわたくしなんてザムエル様には釣り合わない。彼が優しいからといって勘違いしてはいけないわ……。
やはり彼は思った通りの紳士だった。小さい体だからかもしれないが、浴室のドアを開けた先には裸のわたくしがいたのに、見ないようにしていてくれたなんて……。彼のそんな誠実な言動に対して、なんだか嬉しくなる。
丁寧に折りたたまれた着替えは肌触りがとてもいい。なぜこんなものがあるのか少々違和感を感じるが、急な来客に対して細やかな気遣いを見せてくれる。
ただ、彼はわたくしのサイズがわからなかったのだろう。
それもそうかと着用するが、思った通り胸がきつくって苦しい。腰は随分余っている。ブラはきつかったのでつけれないから、恥ずかしかったけれどノーブラだ。
下はサイドが紐だったからなんとかつける事ができた。
一緒に置いてあったフリルのエプロンがあったので、トップ部分から下のスナップはつけても息を吸うだけで外れてしまったけれども、エプロンでそこが隠れていてほっとした。
ハイストッキングもなぜかあるがずり落ちたため素足に靴下だけを着用したものの、スカートの丈は膝より少し下だから、ふくらはぎなどが無防備にさらされていて心もとなく恥ずかしい。
脱衣所で着替えをしながら、とっても素敵な彼を思い浮かべる。
大きな体はとっても鍛えられているのだろう。彼の名は有名で社交界では知らないものはない。
きりっとした太い眉に情熱的な赤い瞳は理知的。神秘的な黒髪はさらっとしていてとっても素敵だ。大きめではあるけれど、それがよく似合っている鼻や唇はほんのり色気すら感じる。
27歳で地位も力もあるのに特定の女性を作らないと聞いていた。
すごくモテて、毎日のように女性が騎士団の訓練所に詰め寄せているというイケメン魔法使いは彼に違いない。
特筆すべきは彼の容姿ではない。とにかくすごく優しい。小さな体を壊れ物のように大切に守ってくれて、お風呂の時の彼の言動もだが、リビングに行った後、自ら髪を乾かしてくれた。しかも、風量に気を使ってくれているのがわかる。大きな指がわたくしの頭を乱暴にしないように慎重にしてくれているのがわかってうっとり目を閉じた。
そして今、目の前にならべられたフィギュア用の家具や食器たちは、わたくしが居心地がいいようにセットされている。
──ザムエル様は、ああおしゃっていたけれども、本当にわたくしを国に報告なさらなくていいのかしら……?
笑顔で応えてくださって心配しなくていいときっぱり伝えて安心させてくれる。きっと、誰に対しても優しいのだろう。
──はぁ。なんて素敵な方なのかしら……。シモン様も優しかったけれど礼節と一定の距離があったし、なんせ彼は最初からゾフィアに惹かれていた。それでも政略結婚をするからにはと、わたくしを大切にしてくれていた。わたくしの出自が平民だと知られなければきっと一生大切にしてくれていたに違いないほどの人だけどこんな風に思うなんて事はなかった。
自分を助けてもメリット一つなく、初対面だというのに細かなひとつひとつに気にかけてくれる。照れ屋で不器用そうな彼の赤い瞳を見つめてドキンドキンと胸が高鳴り呼吸が苦しく感じた。
──わたくし、ザムエル様に惹かれ始めているのだわ……。シモン様やゾフィアもこんな気持ちだったのかしら? あったかくて、苦しくて、幸せで、切なくて……。母が平民で〈呪い〉と〈隷属〉にかけられたわたくしなんてザムエル様には釣り合わない。彼が優しいからといって勘違いしてはいけないわ……。
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