【完結】【R18】妹に乗り換えた婚約者にとあるスキルをかけられた令嬢は、ワケありエージェントに助けられとっても可愛がられるようです。

にじくす まさしよ

文字の大きさ
17 / 32

月の光が見せる幸せな景色※R15~

しおりを挟む
 ザムエルはぼんやりする頭で彼女の姿を。いつもの彼女なら横になっている今水平であるはずなのに。
 明るい月光に照らされている白い肌。煌めく銀の髪。いつも俺を見つめる潤んだ瞳は深い蒼。小さな鼻に、柔らかそうな唇、俺の良く知る姿のままの女性がいた。
 神が俺にくれた幸せな夢なのだろう。震える手を彼女に伸ばしてぐいっと胸の上に引き寄せた。

「シルヴィア、愛している……」

 尊敬のまなざしで見つめてくる彼女の視線に、ひょとしたら俺を好きでいてくれるんじゃないかなんて愚かな考えが浮かんでは消してきた日々。
 想いを伝えれば消えていくかもしれなくて、口に出せない言葉を何度も夢の中で彼女に贈る。逃げられないように完全に俺の体の上に乗り上げさせ、頭をしっかり逃さないように胸に押し付ける。無防備な肌を晒す背中に左手を這わして撫でてくすぐれば、時折ぴくり、ぴくっと震える彼女が愛らしくてたまらない。



※※※※



 毎日くたくたになるほど仕事をさせられたが、家にシルヴィアがいると思えば苦はなかった。周囲はザムエルのそんな変化に気付いたようだ。

「よう、ザムエル! やっぱお前最近おかしいぞ? やけに明るいし。さては女でもできたか~?」
「なっ! いや、そんなものはいない!」

 シルヴィアは恋人ではないため、自分で即時に否定しておいて、その事実に心が少し傷つく。

「……? いつもなら俺と言い合うお前がそんな態度だと調子狂うな。何かあったのか? その、俺で良かったら力になるぞ? 金以外ならな!」

 腕に噛まらせていた女性たちをスマートにさがらせた目の前のイケメン、ヘンリクに真面目に問われた。こいつとは学生時代からのライバルで、会えば憎まれ口をたたき合ってきた。特にヘンリクのモテモテっぷりを勝手に僻んで妬ましいと思っていただけの矮小な自分の器の小ささに、やつの笑顔が眩しく感じて余計に嫌になる。からかっているような光が目に入り込んでいて少々むっとしたが他に相談できる相手もおらず口を開いた。

「……、どうも心臓がおかしいんだ。医者には行ったんだが、どこも異常がないと言われて……」

 俺は、シルヴィアの名前を伏せて、彼女の事を考えただけで胸の動きがおかしくなり、時に苦しくなるほど痛む症状をヘンリクに伝えた。

「このまま俺は死ぬんじゃないかと……、ん? ヘンリク、どうした?」

 真面目に、自分がいなくなったあとのシルヴィアの事を思い悩みながら言いにくい重病を打ち明けていると、ヘンリクが俯き方を震わせていた。

「………………、っ! ぶはっ! お、お前! 寝言は寝て言えよ! なんだよ、やっぱり女じゃねえか! イイ女なんだろうなあ」
「は? なぜ心疾患が女性に繋がる?」
「お前、マジでわかんねーの? しょうがねーな、百戦錬磨の俺が教えてやる!」
「お前循環器系の医療が得意だったのか? 初耳だな」
「ぶ、はははは! ちげーって! お前、その女にホレたんだろ? 夢精したばかりの少年みたいな事をいいやがって! なんだよ、単なる片想いじゃねーか。心配して損したぜ!」
「は? え?」

──惚れた? 俺がシルヴィアに……?

 混乱しているザムエルをよそに、ヘンリクは「その相手が無事に恋人になったら紹介しろよな!」と言い残し去って行った。呆然と突っ立っていると、徐々にやつの言葉と、彼女の笑顔が交差した。

──ああ……、俺は、シルヴィアに、恋をしていたのか……

 あれほど思い悩んでいた胸の症状の正体がすとんと心に落ちてきて納得する。

 顔も、耳も、首筋までも熱い。まっかになっているだろう顔を手で覆うようにして隠す。手のひらに感じる口がニヤニヤと笑っている事がわかった。

 恋を自覚してからというもの、毎日が今まで以上に楽しくて幸せだ。自惚れでなければ、シルヴィアも好意を持ってくれているのを感じてしまうがこれは俺の高望みが見せる願望だろう。

 彼女も、俺に恋をしてくれないかな、なんて時々気弱になりつつも、モテない自分を棚にあげて、いずれは両想いになって恋人になる日を夢見た。



※※※※




 毎日クタクタで帰ると、俺が作った洋服に身を包んだ彼女が微笑んで出迎えてくれる。楽しい時間を過ごし、シャワ―を浴びながら高ぶりを自分で鎮める日々。水と一緒に排水溝に流れる欲望を彼女の中に振りかけたくなる。

 右手ですばやく擦る間は、シルヴィアはれっきとした大きな女性で。あの時視界に入れた彼女の肌を手で触れて、口で吸いつき、キスを落とす。潤んだ瞳に、上気した頬。
 毎日のように服越しに揺れている柔らかそうな胸を想像し、口に含むと乱れ始める彼女の体を思い浮かべては、醜い液を吐き出した。

 いつものようにおやすみと挨拶を交わして眠ったはずだ。ふと、瞼が明るく感じてぼんやりと景色を眺める。

 全裸の彼女が月光に輝き、白くたおやかな体を余すことなく俺に魅せてくれる。

「愛している」

 なんという幸せな夢なのだろう。口に出せない言葉を彼女に伝えると、「お慕いしている」と都合のいい言葉が彼女の唇から放たれた。

──シルヴィア……

 たまらなくなって、俺を優しく、うっとりと見下ろす彼女を俺の体の上に乗せるように抱きしめる。力を抜き俺に全てを預け差し出す彼女が愛しくて。先ほど吐き出したというのに、俺の中心はすでに硬く大きくなっていて、彼女を愛して全てを求める醜い俺の心そのものだ。

 愛しい人のせいでこんな風になっている俺の想いの全てを知らしめるようにぐりぐり押し付けた。

 腕の力を緩めると、彼女が少し体を上げて、俺を上から除き込む。滑らかな白い肌を撫でていた手は、すでに彼女のお尻に達してそこをくすぐったり揉んだりしている。とてもやわらかくて気持ちがいい。

 暫く俺たちは視線を交わしていたが、彼女の頭に置いていた手を俺に引き寄せるようにぐっと力を込めた。彼女の顔がどんどん俺に近づき、大きく口を開けてその小さくて柔らかな唇を奪った。

 お互いに、はあはあと荒げる息づかいが絡み合う。もっと彼女の吐息と温もりを感じたくて、舌を小さな口の中にぐっと差し入れた。

 くちゅくちゅと淫らな音が耳に入ると欲情が激しく強くなる。

──もっと、もっと欲しい……

「ん……、はぁん……、ザムえル、さまぁ……」

 蕩けきったシルヴィアの言葉が、まるで幼子のように拙くなる。開いた唇からつーっと小さな気泡を含む糸が俺の口の中に落ちて来た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

たまこ
恋愛
 公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。  ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。 ※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。 名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。 誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。 ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、 あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。 「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」 「……もう限界だ」 私は知らなかった。 宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて―― ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

結婚式に代理出席したら花嫁になっちゃいました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
美希は平日派遣の事務仕事をしているが、暇な土日に便利屋のバイトをしている。ある日、結婚式の友人の代理出席をする予定で式場にいたのに!? 本編は完結してますが、色々描き足りなかったので、第2章も書いています。

第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している 【完結】

日下奈緒
恋愛
王家に仕える騎士の妹・リリアーナは、冷徹と噂される第3皇子アシュレイに密かに想いを寄せていた。戦の前夜、命を懸けた一戦を前に、彼のもとを訪ね純潔を捧げる。勝利の凱旋後も、皇子は毎夜彼女を呼び続け、やがてリリアーナは身籠る。正妃に拒まれていた皇子は離縁を決意し、すべてを捨ててリリアーナを正式な妃として迎える——これは、禁じられた愛が真実の絆へと変わる、激甘ロマンス。

婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!

柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...