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いつのまにか、LIKEになっていたようです
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この国に住む人々は、握手を交わすがごとく、合意があれば相手が誰であろうともえっちしまくっている。……らしい。
軽くヤキモチ程度ならともかく、独占欲丸出しで、強い嫉妬を抱くのは馬鹿馬鹿しいモテない証拠だと鼻で笑われる。……ようだ。
「あなたね、一体いつまでフィーノ様を独占するの? 婚約者だからって、彼がわたくしたちと交流しようとするのを邪魔するだなんて、恥を知ったらいかが?」
交流というのはえっちするという事だ。なんで婚約者がいろんな子と浮気するのを容認しなければいけないのか。この世界の人たちの考えについていけない。しかも、たちって何。たちって。そっちこそ恥を知って欲しい。
「……確かに、彼がわたくしだけだと言ってくれているのが嬉しいですわ。だけど、わたくしから強要した事はございません」
「まあ……いけしゃあしゃあと。生意気な……! でも、でしたら、わたくしたちが彼と一緒にいても文句はないのですわね?」
「……彼にかぎってそのような事にはならないかと」
彼を誘惑しないで欲しいとは思う。けれど、そんな事を言おうものなら、更に馬鹿にされ、ひいては婚約者である彼の顔をつぶす事になりかねない。唇をきゅっとむすんで、しっかりとした口調で応じた。
すると、わたくしの気迫に後ずさりした彼女たちが怯む。
「ふ……ふんっ、覚えてらっしゃい!」
ビシッと指を刺され、捨て台詞とともに彼女たちが帰ったあと、近くの海辺に向かう。服が汚れるのも構わず、砂浜にどかっと腰を下ろして天を見上げた。
午後の授業を知らせる鐘が聞こえるが、なんだか学園に戻りたくなくて、立膝の中に顔を埋めて体を丸く縮こまらせた。長い長いためいきが、どうしても出てしまう。
「……あーあ。この世界の空も、太陽も、前世と変わらないのになあ……どうして前世の記憶を思い出しちゃったんだろ……」
前世の記憶や価値観さえなければ、フィーノを待たせる事もなく、彼女たちと彼がいちゃいちゃしてもそれほど悲しくはなかったかもしれない。
「……わたくし、フィーノの事、弟じゃなくて、ちゃんと男の子として好きになってたんだなあ……」
自分の気持ちに気付いたのはいつだろう。いつの間にか、わたくしの心いっぱいに、彼の存在が大きくなって住み着いていた。これが、恋なのか愛なのかはまだわからない。
こんな風に思ってしまうくらいには、フィーノの事が好きなようだ。政略だからほとんど結婚は決まっているけれど。
彼の要求に応えないわたくしに愛想をつかし、いつか、彼女たちのほうを好きになったらと思うと、ピシっとヒビが入ったかのように胸が軋む。
どうしても受け入れる事のできないこの世界の常識は、わたくしの心を徐々に削っていく一方だった。
フィーノのように、容姿端麗で身分も高い男は、皆で共有するのが当然だと同い年の同級生に囲まれて募られた事は一度や二度ではない。
それは、女の子もそうで、例えば、わたくしがフィーノ以外の男の子とそういう事をしてもいいそうだ。とはいえ、フィーノは、わたくしがほかの男の子と挨拶を交わすだけでも嫌だとむくれるのだが。
でも、もしもわたくしがほかの男の子とえっちしても、わたくしほど嫌がらないと思う。
いかんせん、この国の男は、ムラっとしたら、近くにいるヤれそうな相手がいれば、男だろうが数十年年上の女性だろうが、合意があれば即ベッドインする、とんでもない種族なのだから。生殖活動以外で、快楽のためにえっちする動物がいるなんて、人間以外に聞いた事がなかったから、それを知った時、目が飛び出るかと思った。
しかも、まさかの人気者で癒し系の人懐っこい種族だったから、マジで頭が真っ白になった。
フィーノも、そういう本能のまま行動する男なのかと思いかけ、そんなはずはないと、嫌な考えを振り払うように俯き下を向く。
「そんな事あるはずがないわ。あのフィーノがそんな風になるなんて……ないない」
彼の事は、まだそこまで愛しているわけではない、……と思う。だけど、さっきのかわいい女の子や妖艶な色気のある女の子たちといちゃいちゃしている事を想像しかかるだけでも、胸の真ん中が変に熱くなり、気持ち悪さが体中に這いずり回るような感覚に陥る。
「でも、この国の女の子たちは皆かわいいし、誘惑されてひょっとしたら……ううん、フィーノはいつだってわたくしだけを大好きだって言ってくれてるもの。他の子とはしないって約束してくれているんだから。それに、結婚まであと少しですもの。大丈夫だわ」
ぽそりと独り言ちたあと、勢いよく立ち上がりおしりについた砂を払っていると、背後から声がかかった。
「珍しいな、真面目な君が授業をサボるなんて。どうした?」
「え……? あ!」
振り返ると、そこには背の高い大柄な男の子が、気難しそうな表情で立っていた。
軽くヤキモチ程度ならともかく、独占欲丸出しで、強い嫉妬を抱くのは馬鹿馬鹿しいモテない証拠だと鼻で笑われる。……ようだ。
「あなたね、一体いつまでフィーノ様を独占するの? 婚約者だからって、彼がわたくしたちと交流しようとするのを邪魔するだなんて、恥を知ったらいかが?」
交流というのはえっちするという事だ。なんで婚約者がいろんな子と浮気するのを容認しなければいけないのか。この世界の人たちの考えについていけない。しかも、たちって何。たちって。そっちこそ恥を知って欲しい。
「……確かに、彼がわたくしだけだと言ってくれているのが嬉しいですわ。だけど、わたくしから強要した事はございません」
「まあ……いけしゃあしゃあと。生意気な……! でも、でしたら、わたくしたちが彼と一緒にいても文句はないのですわね?」
「……彼にかぎってそのような事にはならないかと」
彼を誘惑しないで欲しいとは思う。けれど、そんな事を言おうものなら、更に馬鹿にされ、ひいては婚約者である彼の顔をつぶす事になりかねない。唇をきゅっとむすんで、しっかりとした口調で応じた。
すると、わたくしの気迫に後ずさりした彼女たちが怯む。
「ふ……ふんっ、覚えてらっしゃい!」
ビシッと指を刺され、捨て台詞とともに彼女たちが帰ったあと、近くの海辺に向かう。服が汚れるのも構わず、砂浜にどかっと腰を下ろして天を見上げた。
午後の授業を知らせる鐘が聞こえるが、なんだか学園に戻りたくなくて、立膝の中に顔を埋めて体を丸く縮こまらせた。長い長いためいきが、どうしても出てしまう。
「……あーあ。この世界の空も、太陽も、前世と変わらないのになあ……どうして前世の記憶を思い出しちゃったんだろ……」
前世の記憶や価値観さえなければ、フィーノを待たせる事もなく、彼女たちと彼がいちゃいちゃしてもそれほど悲しくはなかったかもしれない。
「……わたくし、フィーノの事、弟じゃなくて、ちゃんと男の子として好きになってたんだなあ……」
自分の気持ちに気付いたのはいつだろう。いつの間にか、わたくしの心いっぱいに、彼の存在が大きくなって住み着いていた。これが、恋なのか愛なのかはまだわからない。
こんな風に思ってしまうくらいには、フィーノの事が好きなようだ。政略だからほとんど結婚は決まっているけれど。
彼の要求に応えないわたくしに愛想をつかし、いつか、彼女たちのほうを好きになったらと思うと、ピシっとヒビが入ったかのように胸が軋む。
どうしても受け入れる事のできないこの世界の常識は、わたくしの心を徐々に削っていく一方だった。
フィーノのように、容姿端麗で身分も高い男は、皆で共有するのが当然だと同い年の同級生に囲まれて募られた事は一度や二度ではない。
それは、女の子もそうで、例えば、わたくしがフィーノ以外の男の子とそういう事をしてもいいそうだ。とはいえ、フィーノは、わたくしがほかの男の子と挨拶を交わすだけでも嫌だとむくれるのだが。
でも、もしもわたくしがほかの男の子とえっちしても、わたくしほど嫌がらないと思う。
いかんせん、この国の男は、ムラっとしたら、近くにいるヤれそうな相手がいれば、男だろうが数十年年上の女性だろうが、合意があれば即ベッドインする、とんでもない種族なのだから。生殖活動以外で、快楽のためにえっちする動物がいるなんて、人間以外に聞いた事がなかったから、それを知った時、目が飛び出るかと思った。
しかも、まさかの人気者で癒し系の人懐っこい種族だったから、マジで頭が真っ白になった。
フィーノも、そういう本能のまま行動する男なのかと思いかけ、そんなはずはないと、嫌な考えを振り払うように俯き下を向く。
「そんな事あるはずがないわ。あのフィーノがそんな風になるなんて……ないない」
彼の事は、まだそこまで愛しているわけではない、……と思う。だけど、さっきのかわいい女の子や妖艶な色気のある女の子たちといちゃいちゃしている事を想像しかかるだけでも、胸の真ん中が変に熱くなり、気持ち悪さが体中に這いずり回るような感覚に陥る。
「でも、この国の女の子たちは皆かわいいし、誘惑されてひょっとしたら……ううん、フィーノはいつだってわたくしだけを大好きだって言ってくれてるもの。他の子とはしないって約束してくれているんだから。それに、結婚まであと少しですもの。大丈夫だわ」
ぽそりと独り言ちたあと、勢いよく立ち上がりおしりについた砂を払っていると、背後から声がかかった。
「珍しいな、真面目な君が授業をサボるなんて。どうした?」
「え……? あ!」
振り返ると、そこには背の高い大柄な男の子が、気難しそうな表情で立っていた。
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